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短編物語(フィクション)& 詩

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作った短編と詩を集めています
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記事一覧

[短編フィクション] 夜中のこと

きのう、仕事のかえり、うちの近くの狭い通りで、踊っている人をみました。顔色が悪く、ほとんど緑色で、ぼろぼろに裂けた、長い灰色のワンピースをきた、老女でした。腰まで届く白髪を、やんわりとゴムでしばり、くずれた型の、盆踊りともつかないおどりを、一心不乱に、踊っていました。 酔っぱらっていたのでしょうか。気が変な女性だったのでしょうか。 まわりに人はいず、ちょうど、街灯の下にいるので、まるで、スポットライトをあびているかのようでした。無言で、両手をあげて、とても集中した様子で、

[詩]せかいは、シャンプー: シャボン玉でできている

せかいは、シャボン玉でできている? うんな、 せかいは、 比喩でできている 例え話を集めて わたしたちは、自分のお話を それぞれ、作っていく そうやって、人が作った透明の玉が シャボン玉のように、ひかりを受けて 大きいのや小さいのが、 浮かんでいる

LaborDay スケッチ&水彩画&詩

アメリカは、今週の月曜日、Labor Dayでした。Labor Dayは、日本で言えば、勤労感謝の日という感じでしょうか。毎年、9月の第一月曜日になります。夏の終わりで、学校も、新学年が本格的に始まります。 わたしは、17年前のLabor Day直前に、アメリカに来たので、これで18年目に突入することに。最初は、半年くらいの感じできたのですが、結局、長く滞在することになりました。 いやー、17年のアメリカ暮らし、大変でした。けど、考えてみれば、ずっとアメリカに住んでみたい

[詩] この世界が、仮想現実だったとする説について、ちょっとした問答

ここが、仮想げんじつなら、3Dコンピューターゲームに興じてるようなもの。 パイロット見習いが、箱に入って、飛ぶための訓練を、してるようなもの。 ここは、「練習」、「リハーサル」のようなもの。 ならば、「本番」は、どこだろうか。 または、全部、「遊び」で、いわゆる本番は、どこにもないとして。 すべて、眉の間にシワ作るほどのことでは、ない。 今日も、力入っているようすだけど。ともこちゃん。

[詩] 一瞬のもの

こなゆき ちらりちらり 車のライトに てらされて とんでいく 道路のうえで 一秒光り きえていく あるいは、 地上へは たどりつかずに 闇のなかへと すいこまれる 私は 財布のなかの 二十ドルで カリビアンチキンと グリーンプランテーンの フライをかって 教会のかどを 曲がり、家へと いそぐ  教会のなかでは 仕事帰りの人たちが スペイン語で 金曜日の 祈りを ささげているだろう このさきの 地下鉄の駅では 前歯の一本欠けた 巻き毛の若者が 小銭を めぐんでくれと う

[短編フィクション]  Tくんのこと

Tくんは、ニューヨーク市内の小学校の2年生です。今日も、たぶん、どこかの教室の、一番後ろ、入り口の近くの席に、座っていることでしょう。 隣に、お友達が座ると、話しかけてしまうので、先生が決めた、離れた席に、一人で座っています。 ひとつ、Tくんについて、言えることは、いつも、ニコニコ、嬉しそうだと言うことです。 だいたい、学校には、楽しそうにしている大人も子供も、あまりいません。泣いたり、叫んだり、暴れたりする子供もいますし、先生も、大声を出したり、文句を言ったり、顔をし

[詩] 見慣れた光景

朝の地下鉄、通勤の人々、学校に向かうリュックの子供、 電車の中で、 夜を明かした浮浪者たち。 何も、持たず、ただ、横たわる者。 もろもろの 所持品、 黒のゴミ袋につめて、 大きなカートで運ぶ者。 色々持ってる人には、 ゴミにしか、見えずとも、 所持品の価値は、 持ち主が決定する。 他人がはかるものでもない。 かくいう 私も、穴があいたヨレヨレのTシャツや、 コインランドリーで一方をなくしたソックスを、 後生大事に、かかえて生きている。 そういえば 描いてる絵や

[短編物語] 緑の豚

私の住む小さな島は、人間住人の3倍の豚がいるので、近隣から、ピッグアイランドと呼ばれている。人口は、三百人だから、だいたい千匹位の豚がいることになる。豚は、生まれたり、食用にされたり、輸出されたり、たまには、病気で死んだりするのが常なので、正確な数は、いつも上下している。今、正確に何匹いるのか、一般の住民が把握しているわけではないけれど、市役所で、豚の数と所在を、しっかり管理している。 豚たちは、島に5つある、大きな農場で、飼育されている。うちの島は、自然農推奨で、豚舎でず

[詩] スズメ

しっているとおもってたこと ただしいとしんじてたこと ちがってた ちがってるんだろう ちがってるカノウセイがあるぞ となって なんだなんにもしらない わからないじゃないかと ソクラテスが ただしかったんだろう しらないことをしらないのが ぷろぶれむといったらしい そのソクラテスでさえも プラトンが ソクラテスがいったと かいたのだけで ほんとのところ いったかどうかもわからない ほんじゃ ”じじつ”とは じぶんがみたことと あったことがあって しんらいできるひとが み

[詩] モグラが10匹

土の中 前かきで トンネルつくって 進んでいる 一心不乱で、 スピード狂の奴やら ときどき 休んで昼寝の 若い女の子 一直線の奴やら ぐにゃぐにゃまわりの子やら 不思議なことに お互いの様子が、見えないらしい。 前だけ見ている。 仲間を探して、 進んでいるのか、 他のモグラの存在を 知らないのか。 なお、 観察している われは、 モグラではない、 と思われる。

[詩] NO

NOと言う時 宇宙と世界全部にいうつもりで 大きく はっきり 言うようになった そっと言っても 遠回しに言っても 他の言葉を使っても 結局 「やだ」に変わりはない 存在しない 別の言葉 (それでも 嫌われたくない私は いまだにいて 恐怖を感じたりする) * NOの放つ エコー 私は そこに参加しない の宣言 他の人間が 変わってすることはできない 深く 広がっていく

[詩] るるる

この時代がすぎて、 波のしぶきの先っぽの 水滴が 全部どこかにきえて 数々の ブロークンハートや 残った轍のあとや 重かった荷物や 足の痛み 打ちひしがれて 泣いた時間が どこか なつかしく あれは、あれで るるる となる 必然

[詩] とおくまでいきすぎないこと

どこにもいっちゃだめ と いわれて どこにもいけない 子供がいる   けど 遠くまで、いってしまったら かえってこれないことも あんまり 遠くにいっちゃだめよ と すこし いってくれる人が いないと とおくまで およいでいってしまう おきは しおがはやくて かえりかたが わからないのに

[詩] ボクは スーパーマン

ボクは おそらをとべる どうすれば しんじてもらえる だろうか ボクは スーパーマン いつも わるものとたたかっている ママ ボクは スーパーマン いつもたたかっている しってるよね