夫婦喧嘩はリカードの『比較優位の原則』で簡単に解決できる!
「結婚するまでは喧嘩したこともなかったのに、最近夫婦喧嘩が増えてきてて、うまくいかない」
という悩みを聞き、どうしたらよいのかという相談を受けた。
結婚して3年目くらいの友人夫婦だ。
もともとは赤の他人であり、その他人がチームを組んで「幸せ」というあいまいなゴールに向かって爆走しているのが『家族』だ。
結婚当時は価値観も考え方も同期していたため起きなかった対立も、子供ができたり、転職したり、引っ越ししたり、収入が減ったり・増えたり。
結婚当初と状況が変わったことで夫婦の関係も少しずつ変わってくるのだから、喧嘩もあるだろうとは思う。
僕も実体験として、そういった失敗に直面した事がある。
実はこういった状況は会社経営においてもよく起きている。
昨日までは知りもしなかった人と、いきなり一緒に仕事をすることになる。
そして会社が決めたゴール達成に向けてその人たちと邁進する日々だ。
家族も会社も組織という意味で同じであり、構成している人々の様々な価値観が入り混じった中でシナジーを生むために共同作業をしている。
そして組織という形があれば必ずと言っていいほど対立(コンフリクト)は発生するのだ。
経営学ではこのコンフリクトを解決する方法を科学的に証明し、実際の現場に活用している。
つまり組織の問題に日々向き合い改善の為の助言を行っている経営コンサルタントとして、夫婦喧嘩という問題を経営学の視点から解決策を示せるということだ。
■本記事のテーマ
対立が発生しないようにするための考え方
■ 夫婦喧嘩はリカードの『比較優位の原則』で簡単に解決できる!
役割が不明確だとほぼ100%の確率で対立が発生する
チーム作業でうまくいかないことの原因の一つに役割分担が明確になっていなということがある。
何故役割分担がうまくいかないとチーム作業がうまくいかなくなるのかというと、
①意思決定のスピードが遅くなる。
②目的に向かって進むための方法がブレる。
③ミスが増える。
等が発生するからだ。
これらの問題を引き起こす原因は実はたった一つの理由からだ。
「お見合い状態」だ。
お見合い状態とはお互いが気をつかったり、頼ったりを同タイミングでしてしまうことにより、作業や意思決定が停滞してしまう事だ。
①であれば、お互いに譲り合った結果発生
②であれば、相手を信用しきれず個別に独自で行動してしまうい発生
③であれば、相手がやるだろうと思い込んだ結果、誰も着手しない事で発生
といった感じだ。
役割分担がはっきりしないと作業に多くのグレースペースが生まれてしまう。
それが問題発生の原因であり、このグレースペースをお見合い状態という。
野球で外野フライが発生する。
それが簡単にキャッチできるボールであっても、もう一人の外野が現れると、急に簡単ではなくなる。
1人より2人の方がいいように思うが、格段に難しくなるのだ。
理由はコミュニケーションという処理が一つ増えるからだ。
「俺より近いし、きっと取ってくれるだろう」
「あいつの方がキャッチ上手いし、足早いから、俺がキャッチするよりいいだろう」
といったようにボールキャッチの譲り合いが発生するのだ。
その結果、両方共がお見合い状態となりキャッチできないという事が発生する。
もしくは、我が我がと自己中が対面すると、二人が物理的に衝突してしまい、最終的にボールがキャッチできないことになる。
・譲君 :自己中君 〇
・譲君 : 譲君 ×
・自己中君: 譲君 〇
・自己中君:自己中君 ×
という組み合わせになり、初対面同士で外野をすると50%の確率でミスをするという事象が発生する。
これを防ぐのが役割分担(ルール化)だ。
野球の場合であれば、外野フライは必ずセンターの人が取ると役割(ルール)を決めておけば、お見合い状態になることはないだろう。
そして、明らかにキャッチが難しそうであれば「キャッチ任せるっ!!」とセンターから一声かければもう一人も迷いなくキャッチに向かえる。
夫婦の場合であれば、
・ゴミ捨ては夫の役割。
・洗い物は妻の役割。
と決めておけば、それぞれが責任を持ち、相手に期待することもしなくなる。
例えゴミが残っていても、
妻は忘れているのではなく、まだやっていないだけと考えるようになり、悩む必要がなくなる。
夫は自分の役割だから言われる前にやらないと。
と考えるようになるだろう。
もし本当に忘れているのであれば翌日にでも注意すればよいだろう。
・阿吽の呼吸
・行間を読む
・気持ちを察する
これらは一歩間違えれば「思い込み」「勘違い」になるリスクがあることが分かってもらえたと思う。
役割分担を設定することで、これら曖昧な情報に振り回されない夫婦のシステムを作り上げてほしい。
グレーなどない。
白か黒を決めようという事だ。
正しい役割分担を見つける方法
最適な役割を考えるうえで経済学の『比較優位』という考え方が使える。
経済学者のデヴィッド・リカードが提唱したもので、2国間の自由貿易下で効率的な労働分配を実現するための方法だ。
具体的に説明する。
先進国Aと途上国Bは友好関係にあり、貿易を通して両国は幸せになるために協力するという前提がある。
先進国Aと途上国Bは共にワインとチョコレートを名産としているため、これらを効率的に製造したい。
先進国Aはワインを1本作るのに2人、チョコレートを作るのに4人が必要だ。
途上国Bはワインを1本作るのに6人、チョコレートを作るのに3人が必要だ。
ワインとチョコレートを作るならどっちの国が、何をどう作るのが最も生産性が高くなるか考えてほしい。
選択肢は下記4つだ(途上国Bの人が先進国Aに移住すればよいという選択はなし)。
①「先進国Aも途上国Bも今まで通り作ればいいじゃないか」
②「先進国Aがワインもチョコレートも生産し、途上国Bは輸入だけすればよい」
③「先進国Aにワインを、途上国Bにチョコレートを作らせる」
④「先進国Aにチョコレートを、途上国Bにワインを作らせる」
これは数字でしっかり立証できるのだが、答えがお分かりだろうか?
解答は下部の解答に記載するが、一旦はこの疑問を持ちながらこの先を読み進めてほしい。
リカードの比較優位を夫婦関係に流用する。
夫婦が円満になるだけでなく、家族全体として余裕時間を最大限生むための方法だ。
子育て一つ見ても
夫はスポーツが得意だが、勉強についても意見を言いた。
対して、妻は高学歴で勉強が得意だが、スポーツ苦手。
それでも子供の健康のために適度な運動方法については意見を言いた。
というようなことは日々たくさんあるだろう。
夫婦二人とも全部やりたい、ではなく役割分担を考え子育てをすればよいのだ。
そして、決めた役割の不可侵条約を守りつつ、二人で子育ての教育論などを役割に責任を持つ相手の意見を尊重しあいながら、話し合えばよいのだ。
役割分担のフレームワーク
では具体的にどうするのかという事だが、まずは夫婦が協力しながら取り組まなければいけないことをすべてリストに書き出して欲しい。
そして妻・夫がそれぞれの作業にかかる時間を書く(下図の例示は5分単位)。
次は妻・夫のそれぞれで一番短い単位の作業時間を基準に、他の作業がそれと比べ何倍の効率なのかを把握する(妻はすべての作業を風呂準備の10で、夫も風呂準備だが5で割る)。
それぞれの作業を上下で比べ、数字が小さいほうの作業が、それぞれの作業となる。
同じ数字の場合は妻・夫が家事・育児に使える時間を鑑みて、どちらかに割り振る(夫の方が仕事で帰宅が遅いのであればそれを考慮する)。
妻の作業は①朝食②お弁当③夕食④買い物⑤宿題の面倒⑥登園の同行⑦園のお迎えとなり、夫の作業は①選択②掃除③風呂準備④習い事の面倒となる。
これを時間に直すと、
妻は180分、夫は105分となり、妻に負担が偏っている。
夫の仕事時間・帰宅時間も鑑みる必要はあるが、このままはバランスが悪いということであれば、両者のスコアの近いものを優先して、夫の仕事に変更していけばよい(買い物を夫が請け負えば、妻150分:夫135分と均衡する)
定量的に適性を把握し、作業を分担する。
こうすることで確実に夫婦喧嘩は減る。
「わかるんだけど、家事分担の話をしているのだから、仕事は入れちゃダメでしょ」
という人もいそうなので、追加で客観的意見を述べる。
仕事を入れてはいけないという意見の人に聞きたい。
家事も育児も仕事も何のためにしているのか?
応えは簡単だ。
「家族が生活する為」である。
家事や育児は二人で情報共有できるが、仕事は共有できない。
その為、家事や育児はお互いで大変な状況共有できるが、仕事は状況共有できない為相手の辛さを知ることができないのだ。
しかし、仕事は間違いなく拘束時間があり、家事・育児と同じように家族が幸せになるためにストレスを抱えながら努めているものだ。
つまり、仕事も含め分担表を考える必要がある。
家族というチームの生産性向上を図ってほしい。
先進国Aと途上国Bの比較優位の解答
上記で示した問題の解答について。
問題を表にまとめると下記の通りだ。
ワイン1本作るのにAは2人、Bは6人必要で
チョコレート1個作るのにAは4人、Bは3人必要という事だ。
ワインとチョコレートを各国で作ると
両国のトータルの労働者15人でワインが2本、チョコレートが2個になるという事だ。
ここで、比較優位の考えを活用し、生産を高める。
役割分配を適正に行うと15人の同じ人数の労働者でワインが3本、チョコレートが3個作れるようになる。
生産効率が1.5倍になるのだ!!
どういうこと?と思うかもしれないが事実だ。
計算の方法はこうだ。
まず先進国Aと途上国Bの労働生産が良い生産物を把握する。
ワインを1本作る人数を基準に、チョコレートを1個作る労働力の比較を行う。
先進国Aはワインを1とした場合、チョコレートは2となり
途上国Bはワインを1とした場合、チョコレートは0.5となる
基準にしなかった方の生産物(今回はチョコレート)の生産効率を先進国Aと途上国Bで比較すると途上国Bの方がスコアが低い。
つまり、途上国Bは先進国Aと比較するとチョコレートづくりのほうがワイン作りより得意なのだ。
その為、途上国Bは労働者全員をチョコレートづくりに集中するのだ。
先進国Aはチョコレートを途上国Bに任せ、残りのワインの製造に労働者全員を集中させるのだ。
そうすると先進国Aはワインを1本作るのに2人必要なところにA国の労働者全員の6人を集中できるため、ワインを3本作ることができる。
そして、途上国Bはチョコレートを1個作るのに3人必要なところにB国の労者全員の9人を集中できるため、チョコレートを3個作れるようになるのだ。
つまり、両国が協力して労働のどちらが得意なのかを見極めた上で、作業分担することで、ワインとチョコレートが2個ずつだったのが、3個ずつの1.5倍の生産性を生むことができるようになるのだ。
まとめ
夫婦がうまくいかないにはやはり理由がある。
なんとなくとか、性格の不一致という言葉で片づけることは避けたほうが良い。
なぜなら、結婚を決める時は性格の不一致という事はなかったはずだ。
結婚後にその言葉を使うのは都合が良すぎる。
現状から逃げるためのもっともらしい理由を作っているだけに過ぎない。
企業経営で言えば、社員同士がなんかうまくいっていないという理由で任意整理(リストラ、倒産)をするようなものだ。
そのような選択肢は間違いだと中小企業診断士として断言できる。
起きている問題の原因を把握し、その問題を改善するために課題を設定し、改善をするのだ。
人間は成長するものであり、結婚当初のままの価値観でいられるはずがないのだから、価値観がお互い変化したに過ぎない。
喧嘩(コンフリクト)が発生するのには絶対に原因があるのだ。
それであれば、変わった価値観にどう夫婦の形、家族の形を変化させ合わせていくのか。
これに挑戦しなければいけない。
本記事はその原因の一つを改善するための方法を提示したに過ぎない。
グレーを白と黒に明確に切り分け、白担当、黒担当をきめることでコンフリクトを防ぐ。
これをするだけで、夫婦・家族の問題の多くは改善できるだろう。