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どんなわずかなことでもいいから、喜びを大切にする心がほしい|図録『111年目の中原淳一』


本作は、2023年11月に横浜のそごう美術館で開催されたのを皮切りに、島根県立石見美術館、そして現在、渋谷区立松濤美術館で開催されている「111年目の中原淳一」の図録。

展覧会の感想はこちら。

昭和初期、少女雑誌「少女の友」の人気画家として一世を風靡。
戦後1年目の1946年、独自の女性誌「それいゆ」を創刊、続いて「ひまわり」「ジュニアそれいゆ」などを発刊し、夢を忘れがちな時代の中で女性達に暮しもファッションも心も「美しくあれ」と幸せに生きる道筋を示してカリスマ的な憧れの存在となった。
活躍の場は雑誌にとどまらず、日本のファッション、イラストレーション、ヘアメイク、ドールアート、インテリアなど幅広い分野で時代をリードし、先駆的な存在となる。そのセンスとメッセージは現代を生きる人たちの心を捉え、新たな人気を呼んでいる。 妻は、宝塚歌劇の創世記を担った男役トップスターで、戦後映画テレビで活躍した葦原邦子。

中原淳一OfficialSiteより

「いつまでも古くならないもの」――それこそがむしろもっとも「新しい」ものだとはいえないでしょうか。
人生はスカートの長さではないのです。

『女の部屋』第5号 1971年

今出来る事、今着られる服だけをのせていたら、 この「ソレイユ」の存在価値はない。
こんな本はくだらないと言われるかも知れない。 お腹の空いている犬に
薔薇の花が何も食欲をそそらない様に。
然し私達は人間である!!
窓辺に一輪の花を飾る様な心で、
この「ソレイユ」を見ていただきたい。

『ソレイユ』創刊号 編集後記 1946年

ゼイタクな美しさでなく、神経のゆきとどいた美しさ。
理知の眼が自分をよく見ている美しさ。
そんな美しさを生み出していただきたいのです。

『ひまわり』第3巻第4号 1949年


図録は、戦前の雑誌『少女の友』に、中原淳一が“新しい少女のため”に描き、その絵が後の少女漫画に大きな影響を与えた挿絵の数々。

着るものだけに関わらず、インテリアや美容など、ライフスタイルそのものに“美しさ”を追求した雑誌『それいゆ』のアイデア。

戦後、戦争で少女時代を奪われた女性たちに夢を与えた雑誌『ひまわり』のアートワーク。

そして、自身のキャリアの原点である人形作家としての作品の数々。

中原淳一の変わらない“美しいもの”が詰め込まれた1冊です。


編著は2回目の開催場所である石見美術館

監修は ひまわりや

編著は 島根県立石見美術館

出版社は 青幻舎

発売は 2024年1月


とにかく見て楽しい1冊。

図録だからね。

でも、この戦前戦後の激動の時代に、女性のライフスタイルに着目して雑誌を作った人だから、意気込みというか、根性がというか、とにかく熱量が違うのよ。

今のファッション誌は、っていうか、もうインターネットの登場でファッション誌そのものが廃れてきているけど、ファッション誌ってカタログみたいになってるじゃない。

それはそれで良い時もあるんだけど。

でも「人生はスカートの長さではないのです。」とか言われちゃうと、ハッとする。

美しいものを見極める目は、自分で養わなければいけない。

その目を養うには、良いものを見て、更に自分で考える力がなくてはいけない。

他人任せじゃいけない。

中原淳一のメッセージや作品は、ずっとそう問われている気がして。

定期的に触れると、背筋がピッとなる方でもあります。

提案しているものも、物があまりない時代だから、高いものを買え、とかじゃなくて「自分で工夫しなさい」みたいなものも多いんですよね。

展示を見ながらも思ったんだけど、意外と私みたいな大量生産万歳みたいな世代よりも、消費するだけに重きを置かない今の若い世代の人の方が案外刺さるんじゃないかなぁ、と思ってみたり。

綺麗なもの、可愛いものが好きな方は是非見て欲しい。
心が震える、1冊です。


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