どんなわずかなことでもいいから、喜びを大切にする心がほしい|図録『111年目の中原淳一』
本作は、2023年11月に横浜のそごう美術館で開催されたのを皮切りに、島根県立石見美術館、そして現在、渋谷区立松濤美術館で開催されている「111年目の中原淳一」の図録。
展覧会の感想はこちら。
図録は、戦前の雑誌『少女の友』に、中原淳一が“新しい少女のため”に描き、その絵が後の少女漫画に大きな影響を与えた挿絵の数々。
着るものだけに関わらず、インテリアや美容など、ライフスタイルそのものに“美しさ”を追求した雑誌『それいゆ』のアイデア。
戦後、戦争で少女時代を奪われた女性たちに夢を与えた雑誌『ひまわり』のアートワーク。
そして、自身のキャリアの原点である人形作家としての作品の数々。
中原淳一の変わらない“美しいもの”が詰め込まれた1冊です。
編著は2回目の開催場所である石見美術館
監修は ひまわりや
編著は 島根県立石見美術館
出版社は 青幻舎
発売は 2024年1月
とにかく見て楽しい1冊。
図録だからね。
でも、この戦前戦後の激動の時代に、女性のライフスタイルに着目して雑誌を作った人だから、意気込みというか、根性がというか、とにかく熱量が違うのよ。
今のファッション誌は、っていうか、もうインターネットの登場でファッション誌そのものが廃れてきているけど、ファッション誌ってカタログみたいになってるじゃない。
それはそれで良い時もあるんだけど。
でも「人生はスカートの長さではないのです。」とか言われちゃうと、ハッとする。
美しいものを見極める目は、自分で養わなければいけない。
その目を養うには、良いものを見て、更に自分で考える力がなくてはいけない。
他人任せじゃいけない。
中原淳一のメッセージや作品は、ずっとそう問われている気がして。
定期的に触れると、背筋がピッとなる方でもあります。
提案しているものも、物があまりない時代だから、高いものを買え、とかじゃなくて「自分で工夫しなさい」みたいなものも多いんですよね。
展示を見ながらも思ったんだけど、意外と私みたいな大量生産万歳みたいな世代よりも、消費するだけに重きを置かない今の若い世代の人の方が案外刺さるんじゃないかなぁ、と思ってみたり。
綺麗なもの、可愛いものが好きな方は是非見て欲しい。
心が震える、1冊です。