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あんたなんか、ただの代役よ|官能小説『アトリエの姉妹』

※この小説は官能小説です。

体育大学を中退してフリーターをしている25歳の羽田野雄司は、スポーツセンターのプールで2000メートルほど泳いで帰るところを女性に呼び止められた。

女性は30歳前半で化粧っ気はないが端整な顔立ちをしている。

彼女は『彫塑家 森元菜摘子』という名刺を差し出し

「それでですね、あなたに作品の美術モデルになっていただけないかと思いまして。いきなりこんなことお願いして、ビックリするかもしれないけど」
「オレが……モデル?」
「失礼を承知でお話しすると、さっきギャラリーからずっとあなたのこと、拝見してたんです。それで、筋肉質の立派な体つきに、ものすごく創作意欲をかき立てられて、これは是非ともモデルをお願いしなくちゃって、居ても立ってもいられずに声をかけてしまった、というわけなの」
「そういうことですか」

『アトリエの姉妹』

夜間の土木工事のアルバイトをしていた雄司は、昼間で良ければ、とモデルをすることを了承する。

──生身の体を、マネキンみたいに扱われるのかな。それはそれで、ちょっと面白いかも。

『アトリエの姉妹』

モデルをする時間や、給与等の具体的な話を終えて、雄司は菜摘子のアトリエ兼住居を訪ねることが決まった。

「ヌードもお願いするけど、大丈夫よね」
ほんの付け足しのように彼女は言った。しかも、尋ねる口調ではなく、すでに決定していることを再確認するような言い方だった。

『アトリエの姉妹』

KindleUnlimitedで読める官能小説

著者は 深草潤一
官能小説を中心に活動されている作家さん。本書にあるプロフィールは下記の通り。

出版社勤務時代に数々の官能小説を担当・編集した後、自らも官能作家としてデビュー。趣味はサッカー、テニス、能・文楽鑑賞、美術館めぐり、料理、和裁など多彩。近著『叔母 もっと奥まで』のほか『兄嫁との夜』『むれむれ痴漢電車』(いずれも二見文庫)などの著作がある。また、アンソロジーにも寄稿。

『アトリエの姉妹』著者プロフィールより

尚、河出書房新社のプロフィールには1958年生まれ、と記載がある。

出版社は イースト・プレス

掲載誌・レーベルは 悦文庫

発売は 2016年06月
既刊1巻。完結済。この作品はKindleUnlimitedで配信中。


プロの技が光る作品

ほぼ官能小説は読まないのですが。
たまたまINSTAGRAMでこの本を紹介してる方がいて。
あらすじを読んで面白そうだな、と思ったらKindleUnlimitedにあった、という経緯から読みました。

すごいなKindleUnlimited。官能小説まであるのか。

日頃私が官能小説をほぼ読まない理由は単純で。
それは一部のTLやBL作品にも言えることなんだけど。

濡れ場が多いと、ストーリーが薄くなって飽きちゃうからなんですよね。

どうしても濡れ場でストーリーが中断して、最初こそ良いけど、後半はもう消化試合の体な作品も多い。

そういう理由から、TLやBL作品もそういうシーンは少ない方が良かったりするし、まして濡れ場中心な官能小説は好みから外れてしまうことも多いんですけど。

この作品は、ちゃんとストーリーが転がるんですよね。

「濡れ場は少なめの方がストーリーがしっかりして良い」

と思っていたのを、見事に打ち砕かれました。

この作品も官能小説なので、初っ端から濡れ場の応酬にはなるのですが、ストーリーがちゃんと進む。

ミステリアスなお姉さんである菜摘子と、問題を抱えている菜摘子の異母妹・彩香の事情を濡れ場の中の些細な言動や行動を雄司のモノローグでしっかり追っているからだと思います。

特に菜摘子は業が深い。
そして、本当の事を言わない。

だからこそ、雄司の視点でこの姉妹に何があるのか気になって読み進めてしまう、という作品でした。

唯一難点を上げるとすれば、雄司の履いていた「ブリーフ」!
今日びなかなかお目にかからないアイテムだったので(愛用されてる方すいません)「何かの伏線か?!」と思いながら読んでいたのですが。

後半、ちゃんと「ボクサーブリーフ」と書かれていたので「紛らわしな!」と思いました(笑)。何だよ普通じゃん!

途中までブリーフがずっと引っかかっていたので、会社で隣のUさん(※定年間近の男性)に「今日どんなパンツ履いてます?」と聞いて警戒されました。

訴えられなくて良かった。


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かおり
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