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王女殿下は苦労されるでしょうが、いずれ解決していくはずです。そう期待しましょう|ライトノベル『マリエル・クララックの迷宮』
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これまでの感想はこちら。
春から夏にさしかかる季節。
ラグランジュ王国の王女アンリエットがラビア公国に嫁ぐ日がやってきた。
しかし、ラビア公国はかねてからの治安問題を抱えていた。
アンリエット王女のお相手であるリベルト公子が手をつくされているが、まだ根本的な解決には至っていない。
そんな中での結婚式の為、ラグランジュ王国側から随行する近衛たちは、いつもより緊張を強いられ、またいざという時はリベルト公子の戦力にならなければならなかった。
そして、マリエルは
「普通の女性より場慣れしているそなたの方が適任だと言われて、否定できなかったわれわれの気持ちがわかるか? たしかに状況を考えると、そういう人物が必要なのはわかる。そしてそなた以上の適任はいないだろう。認めるしかないのだがな……そもそも、なんでそうも場慣れしとるのかと」
「言われましても」
花嫁の付添人としてラビア公国に行くことに。
何の訓練も受けていない一般人の、一応は貴族の若夫人に頼っていいものか、しかし、他に適任がいない、と苦悩するゼヴラン王太子殿下に「よろしく頼む」と頭を下げられ
「お顔をお上げくださいませ。そんなに心配なさる必要はございません。わたしの役目はあくまでもアンリエット様の付き添いであって、つまり常にアンリエット様と一緒に守られているわけでしょう? 護衛はたくさんついていきますし、なによりシメオン様も一緒です。公子様だってアンリエット様の安全はいちばんにお考えでしょうし、大丈夫ですよ」
「大丈夫なはずが大丈夫でなくなるのが、そなたの常であろう」
ゼヴラン殿下の予感は的中。
ラビア公国に到着し、大公のその家族が住むカステーナ宮殿に行くはずだったアンリエット王女一行がラビア公国の役人に案内されたのは。
街なかにある、パーチェ“宮殿”とは名ばかりの普通の御屋敷サイズの、元貴族の邸宅であった――。
シメオン様の余裕が、重ねてきたシリーズの重みを感じる
まあ、トラブルに巻き込まれることはいつものことで(笑)。
舞台がいままで名前だけしか出てこなかったラビア公国!
ということは、リュタンことチャルディーニ伯爵やダリオも出てくるわけで。
いつものマリエル・クララックシリーズではあるのですが。
そんな中で、アンリエット王女に対するリベルト公子の意見を聞いているようで、突き放しているような、何を考えてるのかわからない態度に不満をもらすマリエルに、シメオン様が、私たちもあまり人のことは言えない、と言った上で
「婚約したばかりの頃は互いに内心を隠して、嘘や隠しごとだらけだったでしょう」
と、婚約したばかりのことを語り、更に
「まだ知らないことがあるかもしれない。すれ違うことがあるかもしれない。そうしたら、またぶつかればよい。と、余裕を持って考えられるようになりましたね」
という言葉が出てきたのは、シリーズを重ねた重みを感じました。
そうなんだよね。
今までは、かなりの確率で事件に巻き込まれて、引くに引けず飛び込んでいくマリエルと、それを心配するが故に腹立たしく感じているシメオン様が必ず衝突する時があって。
どちらかが、いつも「もうダメかもしれない」ってなってた。
それが、こういう言葉が出てくるのは感慨深いなぁ。
そして、大公妃の嫌がらせにあっても、向き合おうと努力するアンリエット王女も良かった。
今まではゼヴラン殿下の妹、ってくらいの登場しかなかったから、器用ではなくても、努力する人柄がフューチャーされていて。
ラビア公国との繋がりも出来て、シリーズはどんな風に変わっていくのか。
本作も楽しかったけど、この後にあるであろうゼヴラン殿下の結婚や、ラビア公国との今後も楽しみな作品でした!
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