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世の中をより良くしていく人々の、裏には。それ以外の、数多くの人々の努力がある。|ライトノベル『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻


これまでの感想はこちら。

新婚旅行と言う名の視察旅行を続けるイースティリアとアリレラ。

アリレラの祖父であるタイア子爵との久しぶりの再会。
そして、明かされる、タイア子爵の秘密。
更に、これから起こると言われている【厄災】の存在。

「うん。アレリラにはアザーリエ夫人に会うように伝えたけれど、君にはロンダリィズ伯爵家の家令に会うことを、お勧めしておくよ。イースティリア・ウェグムンド宰相閣下」

『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻

何かを予感させる、タイア子爵の言葉を胸に2人は次の目的地であるロンダリィズ家へと向かった。

そこで、アリレラはタイア子爵の言葉通り、ロンダリィズ家の長女で、現在は隣国の公爵家に嫁いでいる“労働環境改善の慈母”アザーリエと出会う。

アザーリエと2人で話す機会を得たアリレラは、“妖艶な美女”と言われる彼女の手が、長年労働をしてきた働き者の手だということに気がついた。

「……アザーリエ様は、そのようにお育ちになられたことで、素晴らしい功績を立てられたのですね」

嫁ぎ先の隣国で、平民の労働に関する法律を打ち立てたアザーリエ。
アリレラは、彼女がそれを自ら体を動かし、使用人たちの働きを見て、新たなことを成し遂げたのだと理解した。

そして。

自分にはその、新たな発想をするということが苦手であることも再認識していた。

 道具を上手く使えることと、道具の新たな使い道を見つけることは、全く別の能力なのだ。

『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻

素直に、自分には出来ないことを出来るアザーリエを尊敬する、と言ったアリレラ。

しかし、アザーリエは自分は新しい発想をしたのではなく、母がやっていたことを夫に伝えただけだ、と言った後で

「アレリラ夫人は、宰相閣下の秘書官をなさっておられるでしょう~? ダインス様は、そうした方々とも難しい顔でたくさんお話をなさっていました……地道に、問題について一つ一つ解決して行かれるのは『形にする』方々なのですぅ〜」

『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻

アリレラは自分とは違うものの見方をするアザーリエとの会話で、イースティリアもたくさんの人の手を借りていることに気がつく。

人を惹き付け、世の中をより良くしていく人々の、裏には。 それ以外の、数多くの人々の努力がある。

『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻

アザーリエとの出会いをきっかけに。
アリレラの人生にまた1つ、彩りが加えられた瞬間だった。


タイトルに偽りなし!素敵なエンディング

つい、ストーリーの最初のエピソードを引きずって、アリレラとイースティリアのラブストーリーと思ってしまうんですけれど。

違うんですよね。
その要素もないわけじゃないんですけど、多分このストーリーの軸は、優秀だけど、狭い世界にいたアリレラがイースティリアとの結婚をきっかけに周りの人と繋がっていくことで、彼女の人生が豊かになっていく、正に人生の朱夏の季節のストーリーなんです。

しかも、そのほとんどは新たな出会いとかではなく、元々アリレラの周りにいた人たちで。

関わっていくことで、見えていなかったその人自身のことや、自分自身のことが大きく変わって成長していく。

見方を変えれば、幸せはすぐそこにある。

ものすごく瑞々しいストーリーでした。

しかし、【厄災】のところはビックリしたな。
今回が完結巻なんですが、あんな手法で来るとは思いませんでした。

ここで言いたい「手法」ってのは、ストーリーの中でアリレラたちがナントカ、って話ではなくて、小説を書く手法として、この手段は大胆だなぁ!と。

大胆なんだけど、作品のテーマを脱線しないまま、余計なエピソードがなく、“穏やかなその後”に繋げるメアリー=ドゥさんの発想力が素晴らしい。

作品はこの3巻が完結巻ですが、「読みたいところがたっぷりあった!」な満足な1冊でした。

今回もボンボリーノとアーハ夫婦はとても素敵だし、婚約破棄をしたけれど、最終的なボンボリーノのアリレラの関係も面白い。
っていうか、色々な人の幸せのきっかけがボンボリーノなんだよなぁ。
読み始めた時は、こんなことになるとは思わなかった。

個人的には、ミッフィーユとアリレラの弟・フォッシモのお話が楽しかったです。 ミッフィーユ可愛い。
この2人のストーリーはもっと読みたかったたなぁ。ミッフィーユの熱の入れようを見たら、そりゃイースティリアが好きなワケないや……みたいな。

主人公たちだけではなく、周りの人たちのストーリーも楽しくて、みんなの人生の朱夏を一緒に疑似体験できる、素敵な作品でした。


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かおり
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