世の中をより良くしていく人々の、裏には。それ以外の、数多くの人々の努力がある。|ライトノベル『お局令嬢と朱夏の季節 ~冷徹宰相様との事務的な婚姻契約に、不満はございません~ 』第3巻
これまでの感想はこちら。
新婚旅行と言う名の視察旅行を続けるイースティリアとアリレラ。
アリレラの祖父であるタイア子爵との久しぶりの再会。
そして、明かされる、タイア子爵の秘密。
更に、これから起こると言われている【厄災】の存在。
何かを予感させる、タイア子爵の言葉を胸に2人は次の目的地であるロンダリィズ家へと向かった。
そこで、アリレラはタイア子爵の言葉通り、ロンダリィズ家の長女で、現在は隣国の公爵家に嫁いでいる“労働環境改善の慈母”アザーリエと出会う。
アザーリエと2人で話す機会を得たアリレラは、“妖艶な美女”と言われる彼女の手が、長年労働をしてきた働き者の手だということに気がついた。
嫁ぎ先の隣国で、平民の労働に関する法律を打ち立てたアザーリエ。
アリレラは、彼女がそれを自ら体を動かし、使用人たちの働きを見て、新たなことを成し遂げたのだと理解した。
そして。
自分にはその、新たな発想をするということが苦手であることも再認識していた。
素直に、自分には出来ないことを出来るアザーリエを尊敬する、と言ったアリレラ。
しかし、アザーリエは自分は新しい発想をしたのではなく、母がやっていたことを夫に伝えただけだ、と言った後で
アリレラは自分とは違うものの見方をするアザーリエとの会話で、イースティリアもたくさんの人の手を借りていることに気がつく。
アザーリエとの出会いをきっかけに。
アリレラの人生にまた1つ、彩りが加えられた瞬間だった。
タイトルに偽りなし!素敵なエンディング
つい、ストーリーの最初のエピソードを引きずって、アリレラとイースティリアのラブストーリーと思ってしまうんですけれど。
違うんですよね。
その要素もないわけじゃないんですけど、多分このストーリーの軸は、優秀だけど、狭い世界にいたアリレラがイースティリアとの結婚をきっかけに周りの人と繋がっていくことで、彼女の人生が豊かになっていく、正に人生の朱夏の季節のストーリーなんです。
しかも、そのほとんどは新たな出会いとかではなく、元々アリレラの周りにいた人たちで。
関わっていくことで、見えていなかったその人自身のことや、自分自身のことが大きく変わって成長していく。
見方を変えれば、幸せはすぐそこにある。
ものすごく瑞々しいストーリーでした。
しかし、【厄災】のところはビックリしたな。
今回が完結巻なんですが、あんな手法で来るとは思いませんでした。
ここで言いたい「手法」ってのは、ストーリーの中でアリレラたちがナントカ、って話ではなくて、小説を書く手法として、この手段は大胆だなぁ!と。
大胆なんだけど、作品のテーマを脱線しないまま、余計なエピソードがなく、“穏やかなその後”に繋げるメアリー=ドゥさんの発想力が素晴らしい。
作品はこの3巻が完結巻ですが、「読みたいところがたっぷりあった!」な満足な1冊でした。
今回もボンボリーノとアーハ夫婦はとても素敵だし、婚約破棄をしたけれど、最終的なボンボリーノのアリレラの関係も面白い。
っていうか、色々な人の幸せのきっかけがボンボリーノなんだよなぁ。
読み始めた時は、こんなことになるとは思わなかった。
個人的には、ミッフィーユとアリレラの弟・フォッシモのお話が楽しかったです。 ミッフィーユ可愛い。
この2人のストーリーはもっと読みたかったたなぁ。ミッフィーユの熱の入れようを見たら、そりゃイースティリアが好きなワケないや……みたいな。
主人公たちだけではなく、周りの人たちのストーリーも楽しくて、みんなの人生の朱夏を一緒に疑似体験できる、素敵な作品でした。