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やるだけやってみるわね。諦めて帰るのはそれからにするわ|ライトノベル『小国の侯爵令嬢は敵国にて覚醒する』


「帝国が連合国に負けた」
「まあ……それは意外なことでしたわね。それは我が国にも影響が出るということですね?」

小国の侯爵令嬢は敵国にて覚醒する(上)

結婚式を2週間後に控えた、サンルアン王国のジュアン侯爵家の令嬢ベルティーヌは、宰相をしている父の執務室に呼ばれ、そう告げられた。

サンルアン王国は、小さな島国で数十年前までは貧しい国だったが、観光に特化することで経済的に大きく発展した。

そんなサンルアン王国の主な取引相手である、北のセントール帝国は、南の連合国と国境付近で戦争をしていた。その帝国が戦争に負けた、というのだ。

「そこで賠償金の減額と引き換えに、お前が連合国のセシリオ・ボニファシオ閣下に嫁ぐことになった」
「……え?」

小国の侯爵令嬢は敵国にて覚醒する(上)

軍資金の援助をしていた為、敗戦国の一員とみなされ、サンルアン王国も連合国から賠償金を請求された。

その金額が莫大な為、賠償金の減額と引き換えにベルティーヌが連合国のセシリオ・ボニファシオ閣下に嫁つぐことになったというのだ。

2週間後、結婚式をするはずだった相手と婚約解消をし、ベルティーヌは連合国へと旅立った。

「閣下はお優しい方かもしれないし、案外楽しく暮らせるかもしれないわ。悲観しても何もいいことはないのだし」

小国の侯爵令嬢は敵国にて覚醒する(上)

しかし、微かな期待もすぐに裏切られる。

セルシオの屋敷にたどり着いたベルティーヌは、彼女を出迎えた連合国主席秘書官のイグナシオから驚きの事実を伝えられる。
1つはセルシオは現在不在であること。もう一つは。

「二つ目。ジュアン侯爵令嬢は誤解しているようなので訂正します。我々連合国側は帝国側に閣下の結婚相手を望んでいません。今回の戦争で我々が敗戦国側に要求したのは賠償金であって花嫁ではないのです」

小国の侯爵令嬢は敵国にて覚醒する(上)

とはいえ、ベルティーヌも「わかりました」と帰るわけにはいかない。
国に戻れば、どんな罰が与えられるか。父や兄の立場にも影響する。

セルシオと直接話す為に、彼の帰りを待つつもりだったが、屋敷での冷遇や、セルシオの婚約者だという女性から「妻にしろと居座っている女」と言われ、我慢の限界に達したベルティーヌは、彼の屋敷を出て、市井へと飛び出した。


他にも読みたい作品が沢山ある作家さん!

著者は 守雨
私は小説は初読みでしたが、女性向けのライトノベルを中心に活動されている作家さんで、多数の人気作品がある方です。

コミカライズ版のみですが、守雨さんの『聖女はとっくに召喚されている。日本に。』も読んでます。

聖女として異世界から日本にやってきた“レイ”という切り口が面白いです。

あと、上巻がKindleUnlimitedで読める(2024-10-06現在)『シャーロット ~とある侍女の城仕え物語~ 』も気になってる。

まだまだ読んでみたい作品がある作家さんです。

出版社は 主婦と生活社

掲載誌・レーべルは PASH! ブックス

発売は  2022年10月
既刊2巻。完結済。

西野まほろ作画でコミカライズ版も連載中。 
1巻は2024年11月1日発売予定。

私は単話版で読んでいますが、原作小説の面白さを損なうことなく、こちらも面白いです!


何もかも失ったベルティーヌのサクセスストーリー!

「情けは人の為ならず」
というのは、「人に親切にすれば、やがてはよい報いとなって自分に戻って来る」という意味だけど。

ベルティーヌのサクセスストーリーは、正に彼女の知性と寛容さで成功を手にする、というもので。
読んでいて、とてもスカッとするものでした。

元々は、賠償金の代わりに敵国へと嫁ぐことになり、しかも嫁いでみれば「賠償金が欲しいので」と国に返されそうになり。

とはいえ、国へ帰れば「役立たず」と非難されるどころか、一族の立場を悪くすることもわかっているから帰ることも出来ず。

どちらの国にも居られなくなってしまったベルティーヌが、次第に連合国の貧しいけど寛容な人々に触れて。自ら「ここに居たい」と思うようになり。

ベルティーヌが来なければ連合国が得るはずだった賠償金の大金貨千枚を自ら稼ぎ、この国に住み続けられるようにしようとする。

資源もなく、商才で国を発展させた文化で育ったベルティーヌが、資源豊かであるが故に貧しくても飢えることがなく商売に無頓着な連合国の人々に。

「お金がなくてもここでは飢えないが、お金があれば薬が買える。学ぶことができる。」

と説得し、帝国に不平等な金額で行われていた取引を見直し、お金を稼ぎ出していく。

とはいえ、自らの商才でベルティーヌが力強く成り上がっていくストーリーかと思えば、そうでもなく。

時に、「先行投資」と言いながら無償で人々を助けるベルティーヌの姿が、彼女が商売だけの人ではなく思い遣りのある人だということを物語っていて。

お金ではなく、彼女自身に惹かれた人たちが味方になってくれて、物事が好転していくストーリーは読んでいて、とても楽しかったです。

どこからも「いらない」と言われてしまったベルティーヌが、自らの居場所を勝ち取るストーリー。
是非、読んでみてください!


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かおり
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