日本における読書の歴史に触れることができる魅力的な一冊|『読書と日本人』
私たちが、当たり前のようにする“読書”。
そんな“読書史”を知ることが出来るのが、本書『読書と日本人』です。
著者は読書が日本人に根付き始めたのを平安時代の中期頃ではないか、としています。
大きな影響を与えたのが平仮名の登場でした。
表音文字「平仮名」の登場で“読者”が一気に拡大した。
そして長い時を経て。
印刷技術の変化も大きな影響を与えます。
そこから1880年頃に木版印刷と活版印刷を行き来していたものが、完全に活版印刷へと移行されていきます。
そしてこの活版印刷によって、本は読みやすくなり、持ち運びしやすく小型化されていく。
そして、識字率の向上と本の大量生産が可能になった20世紀。
遂に読書の黄金時代がやってくる――。
多くの著作がある評論家の1冊
著者は津野海太郎。
演出家・編集者・評論家。元晶文社取締役、和光大学名誉教授。
タイトルを見る限り、読書に関する評論を多く執筆しているようです。
出版社は岩波書店。
掲載誌・レーベルは岩波新書。
発売は2016年10月。
読書の“これまで”と“これから”
元々、読むきっかけは、毎週愛聴しているラジオ番組『ジブリ汗まみれ』で鈴木敏夫さんが紹介していたから。
「 本を読まなくなった、っていうけど、ブームが去っただけなんですよ」
というようなことを仰っていて。
どんな本なんだろう、と。
読んでいくと、冒頭の20世紀の読書の黄金時代まではリアル『本好きの下剋上』みたいで楽しかったです。
菅原道真の『書斎記』や、『源氏物語』、『更級日記』等に残る読書風景の描写を拾い集め、“読書”の輪郭を辿る。
でも、やはりガラッと変わるのは本の大量生産が可能になり、識字率が一気に上がった20世紀になってから。
現代の読書環境に一気に近づきます。
読まれる本は、学術的な“かたい本”から、娯楽的な“やわらかい本”へ、そして雑誌へ、漫画へ――そして人は本を読まなくなっていった。
それは20世紀にはじまった“読書ブーム”の終わり。
そしてその後には何が残るのか。
著者はこう語ります。
このまま行けば、誰もが気軽に本に触れられる現在の環境は潰える。
しかし、欲する人がいれば、形を変えて残るかもしれない。
私が想像するちょっと先の未来は「コストの低い電子書籍が先に発売するようになり、人気のある作品だけがコレクションアイテムとして紙として発売される」です。
現に、漫画やライトノベルだけに関して言えば、既にpixivや小説家になろうで人気になった“デジタル先行”で、一度そこで篩いにかけられ残ったものが書籍化されている。
まあ、このビジネススタイルが正解だとは思ってないし、定着すると確信もしていないんだけど。
どう思いますか?
読書のこれまでと、これからを想像する1冊。
楽しめると思います。