展覧会レポ:NASA公認アーティスト、チャールズ・リンゼイの独創的な世界
【約800文字、写真12枚】
乗り物のアナウンス「お忘れ物なきようご注意ください」を聞いたアーティスト、チャールズ・リンゼイ氏は、逆転の発想から「すべて、忘れてください」という展覧会を構想されました。
2会場で同時開催中の没入型展覧会。この記事では、ギャラリー編をご紹介します。
両足院の展示レポはこちらです
透明のプラスチックケース
京都市の北区にあるKURA MONZEN Galleryに足を運びました。受付で「チャールズ・リンゼイさんの展示を拝見したいのですが」と尋ねると、「どうぞどうぞ」とギャラリーの奥へ案内されました。
入口に立つと、いやでも金ピカのカーテンが目に飛び込んできます。「ここですか」と思わずつぶやき、恐る恐るカーテンをのぞき見ますと、
プラスチックの頑丈そうな箱がくるくると回転しています。中にはアーティストの名前が刻まれたディスクが入っているそうです。
チャールズ・リンゼイさんはNASAが公認したアーティストで、この金ピカのカーテンや展示物の素材もNASAで使われているものだそうです。
さらに進むと、金ピカの空き缶が展示されています。道端に捨てられ見向きもしないものが、金色になるとこんなにも輝くものですか。「本物の金で加工してあります」と説明を受けました。え? 本物??
タイトルは「(スベテ)、ワスレテクダサイ」ですが、金の加工をすれば、忘れがたいものになりそうです。
東京2020
あたたかそうなポケットがついています。「どうぞ、手を入れてみてください」。作品に触れないでくださいという注意はよく聞きますが、手を入れてみてくださいとは、お珍しい。せっかくなので失礼して、…暖かいというより雲のような感じ?
この作品は、富士山の頭が雲から出ているイメージでしょうか。中央からアサヒが出そうです。この空き缶は東京2020オリンピックのラベル。日本人が忘れてしまった数年前の出来事。
さらに進むと、電子部品が吹き出しのよう。何か危ういものが溢れ出ようとしているのでしょうか。実際の高速道路で使われる素材で制作されたそうです。
この輪郭は、法皇さまでしょうか。中央に表示された数字は、呼吸の回数を数えるかのように、ゆっくりと減っていきます。リンゼイ氏はご自身の残りの命の時間だと仰ったそうです。
小さな展示スペースですが、金と銀に淡く輝く世界観に没頭してしまいます。これぞ、ボットー体験!
テントの階段は見ていた
ずっと気になっていた部屋の左手には、こんな光景が広がっています。
テントの中に身体を入れてみると、妙な音が聞こえてきました。シャンパンの入れ物を再利用したスピーカーがあり、心が分裂してしまいそうな危険な香りが漂っています。
この先には何があるのでしょうか。なんとか抜け出て、外から先端を確かめてみると…
これが御神体ということですか。ビデオアートの目がこちらを見つめています。うわっ! 見られた!!
展覧会というより、まるで異空間に迷い込んだような感覚に陥ります。不安でしたが、なぜか心は次第にスッキリしていきました。
■information
いつかきっと
ギャラリーの1階は、陶芸作品などの販売をされているようで、めちゃくちゃカッコいい。買うお金もないのに、ついつい眺めてしまいます。すると、「2階もぜひ」と案内されました。
2階は全く違うテイストの空間が広がっていました。まるで映画のセットのような2階。オーナー様の個性が全開の濃密な空間です。
帰ろうと思ったのですが、この形。ぐおおぉ、カッコよすぎです。手前は、志野茶碗かな。奥は杉谷恵造さんの「裂骨」や「玄黙」かあ。くうう、たまんねぇなあ
すべてわすれて、早く帰ろう。秋風が身にしみる季節、アートの美しさに触れて揺れ動くわたしの心。くうぅ、困りました、あの渋さが忘れられません。
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