春休みの特別体験! 京都嵐山オルゴール博物館の魅力とは?
【約2,500文字、写真18枚】
小5の娘が「オルゴール大好き! オルゴールオルゴール」という。宿題もなにも無い春休み、オルゴール博物館へ連れて行くことになった。
入場料、大人は1,000円もするではないかっ。嵐山にあるから場所代かと訝しんだ。だが、博物館員さんによる実演や仕組みの解説、歴史の話など存分に楽しませてくれた。
京都 嵐山にきて、オルゴール?
店内1階には販売用のオルゴールが陳列されている。アニメ「スパイ×ファミリー」もあったりする。ちょうど片手で持てるほどの大きさ。
お試しくださいと案内されたので、喜んでゼンマイを回してみた。正直、クリアな音ではないが、そこがまたいい。 「指先に反響が伝わってカワユイ♪」とオルゴールの音色を楽しむ。最近の曲なのに、なぜか懐かしい音がする。
オルゴールの歴史は、1900年代の前半に姿を消す。産業革命による急速な発展に起因するという¹。
上品なコレクションが並ぶ。なぜか気持ちのいい安堵感もある。「~大自然のメロディーと同質のものを感じずにはいられません。」¹
ちなみに、「オルゴール」という名称は和製英語らしい。オランダ語の「オルガン」とローマ字読みの「オルゲル」が変化したものらしい。
博物館員さんが個別に案内してくださる(たまたま空いていた?)。
へえー、なるほどー。
あれ?
娘はどこだ?
なんじゃこりは?
三日月に張った弦を弾こうとする道化に、三日月が舌を出すらしい。道化師の眉が音符で描かれていたり、歯がリアルだったり、印象的な造形から目が離せない。
こちら、西洋の自動からくり人形で、「オートマタ」というらしい。時計のメカニズムを基に作り出された。ゼンマイを動力源として、オルゴールの音にあわせて複雑で繊細な動きをしてくれる。
こんな話がある。ミリタリー・ミニチュアのポーズを開発していた模型会社のタミヤ。アニメ作家の大塚康生さん(代表作「ルパン三世 カリオストロの城」「未来少年コナン」など)からアドバイスを受けたときのこと、
「〜デフォルメしたほうが迫力が出る。走るにしても、まっすぐ走らせるんじゃなく、障害物を避けるような感じ。ちょっと体をねじるような。この、ちょっとが重要なんだ。そうすると、グッとリアリティが増すんだよ」²
ここもリアリティのレベルが高い。大塚さんがいう「ちょっと」の動きがあるんだろうなあ、よくできておるなあと声がでてしまう。
娘は、「夢にでそう」と、引きつった笑顔をしている。
私、博物館員さんと目があう。
コレクションはこれだけではありません。すんごいのがあります、と仰る。
行こう行こう、早く行こう。
世界最古!!!
博物館員さんは重々しく「こちら、世界最古のオルゴールでございます」。
「へえ〜」と娘。
「へ? えぇぇぇー!?」と私。
初期の作品が、超・小型というのは驚きだ。最古のオルゴールは、大きな古時計より一回り大型のイメージがあった(勝手なイメージです)。だが、本物は、直径が3センチしかない¹。
オルゴールは音をよくして、長時間演奏するために、大型化していったらしい。
時計職人アントア・ファーブルによって発明・制作された。もともと金製の「印章」だった(日本でいうハンコみたいなもの)。偶然の産物ともいえる発明だったらしい。
世界初のオルゴールが生まれて約200年。今もその美しい調べを奏でてくれる¹。
※最古のオルゴールを嵐山でご覧になりたい場合は最新情報をご確認ください。↓こちら
他館へ貸し出されることも少なくないとか。本場スイスへの出展もあるらしい。どうして嵐山にあるのかなどの経緯も詳しい。
やっぱり気になるオートマタ
「こちらの上品な彼はどう?」
音楽を奏でながら、右手が動き、帆船の絵を描くらしい。紫の服は龍の柄で、東洋を意識して制作されたんだとか。
不気味さはなく、上品なお顔だこと。
将来、こんな彼が、娘と一緒に挨拶に来てくれたりしたら、私はどうしたらいいのでしょうなあ。
「なんで裸足なん?」と娘。
…しらんがな。
お人形と目があう
オートマタ専門の職人と、フランス人形のメーカーの共作。着用している服も一流の職人が手間をかけており、服飾文化の資料としても一級らしい。
夜中にこの部屋を覗き見る勇気などない。なぜ怖いのか。人間とオートマタの境界が曖昧だからだろうか。
アンドロイドに「人間らしい見かけ」を追求する石黒浩さんが、制作に苦悩する一コマを思い出した。
石黒浩さんを悩ませたのは「実在の人間そっくりに作るのがいいのか、あるいは何か少し加工した顔で作るのがいいのか」³という問題だったという。
手始めに実在の人間そっくりに作ってみる。人間一般を代表するような平均的な造形とした。すると、アンドロイドは作り物のような不気味な顔にしかならなかった³。
こちらの人形たち、子どもらしい顔なのに、不気味さがある。大塚康生さんが言った「ちょっと」の動きが少ないのかもしれない。
オルゴールの音色とオートマタは、普段使っていない感覚に触れてくる。少し不思議でファンタジックな体験であった。
〈おまけ〉
父親らしく「おみやげ、500円までなら出してあげる」といってみたが、ショップにそんな安価なオルゴールはない。500円で買えるものは、せいぜい博物館限定マスキングテープくらいだ。
そこで彼女は、運命を賭けることにした。(お小遣いを出すのは嫌らしい)
オリジナルグッズの運試しガチャだ。
1回500円。
ラインナップは、
S賞 オルゴール
A賞 エコバッグ
B賞 レターセット
C賞 マスキングテープ
まあ、
C賞のマスキングテープか、当たってA賞のエコバッグかな。
ガチャガチャッ
ガチャガチャガチャ
ゴトッ
何? なに?
…紙切れ?
奥から店員さんが来てくれた!!
S賞のオルゴールを当ててしまった強運娘。
しかも「鬼滅の刃」のテーマソングだった。
娘、オルゴールを聴きつつ、「また行く、絶対行く。明日行く」とおっしゃっている。
ソース;
¹:リーフレット「京都嵐山オルゴール博物館」ギド・リュージュ ミュージアム
²:田宮俊作『田宮模型の仕事』文春文庫、2000
³:石黒浩『どうすれば「人」を創れるか』新潮社、2011
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