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アートライターが推す!美術系映画ベスト5

 部屋の灯りを少し暗くして、観る。2時間ほどたつと外の景色が違って見える・・・。そんな、アートや漫画、デザインに関する映画をご紹介します。


オススメ 1位 ルックバック

★★★★4.1
このマンガがすごい!2022:1位
あらすじ
 主人公の藤野さんは、漫画を描くのが上手で小学校の学年新聞に連載をもっている。彼女は不遜な印象を与えてしまうほど堂々としていられるくせにセンシティブで、天才。
 ある日、不登校の同級生・京本さんの漫画も載せたいと先生から頼まれる。圧倒的な京本さんの画力。藤野さんの苦悩。
 二人は漫画雑誌に連載をもつのだが…。漫画に青春と人生捧げました系の物語。

 グッときて、咀嚼するのに時間のかかる作品。
 これまでの青春捧げました系によくあったのは、主人公が共感できるタイプだった。だが、この作品のキャラは違う。藤野さんの造形は、むき出しだ。
 原作の漫画をよむと、余計に「ルックバック」がグッとくる。小学生のころから藤野さんが漫画を描く背中を丁寧にみせてくれる。
 漫画を描いている背中なんて、小学生もプロも同じような背中だからつい背景をみてしまう。背景は京本さんの担当だ。
 二人で描くときは、どんどん変わっていく。それが、プロになってからは仕事場の背景が、殺風景になってしまう、んだけど、最後の一コマは違う。
 藤野さんの首の角度、パソコンの角度、脚の位置、部屋にかかる影の範囲。そしてカバーを取ってみれば…。映画とともに漫画のラストページもチェックしていただきたい。

オススメ 2位 AIR/エア

★★★★3.9
あらすじ
 1984年、ナイキ本社。ソニーは、社長からバスケットボール部門を立て直すよう言い渡される。業界の負け犬だったナイキは、当時まだ新人だったマイケル・ジョーダンとその家族を口説き、一発逆転の賭けに出る?!

 「人類史上最も美しい靴」エアジョーダンを作った人たちの、お仕事映画。
靴のデザインを考える際、「見た目? 機能?」どちらを優先するかスタッフに聞かれ、見た目を選び、あのデザインが生まれる。
 劇中、ソニーがオフィスを俯瞰するシーンが2度ある。1度目は居場所がなく、不安でつい眺めてしまうシーン。2度目は祝福され、ここが居場所であると安堵するシーン。同じ眺めのはずなのに、まるでちがう。
 アート系の映画かどうか微妙なところだけど、美しいモノづくりということで。


オススメ 3位 アートのお値段

★★★3.6
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あらすじ
 白熱するオークション、バブルを憂う評論家、アートに魅せられたコレクター。
現代アーティストたちもインタビューに答えている。ラリー・プーンズ、ジェフ・クーンズ、ジョージ・コンド、ゲルハルト・リヒター、村上隆の顔もチラッとみえる。
 創作と評価の間でアーティストたちの葛藤の日々…。お金でアートの価値は決まるのか??

 ドキュメントタッチの映画で、誰もが面白い作品ではないかもしれない。「多くの人が値段を知っていても、価値は知らない」とのたまうコレクター。
 売れるアーティストとは、妬まれる人だという指摘は面白い。
 ラスト、誰かの家の壁に飾られることもなく、倉庫で眠る作品たち。大量の作品の群、シャッターが閉じられる。まるでインディ・ジョーンズのレイダースみたいだ。


オススメ 4位 岸辺露伴 ルーヴルへ行く

★★★3.6
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あらすじ
 特殊能力を持つ、漫画家・岸辺露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。それは最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった・・・

 森の木とか古い日本の住宅とか、もちろんルーブル美術館も、とにかくロケ地がどれも素晴らしい。
 キャラクターの造形もすごい。白石加代子さんの存在はすでに荒木飛呂彦ワールドっぽいし、露伴先生のサングラスもそうだ。荒木先生の世界を現実に敷衍したもので満たされているから、たまらない。
 学生時代からのジョジョのファンなのだが、映画としては、どうなんだろう…。

告白;私はドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』シーズン1「くしゃがら」や、シーズン2「背中の正面」、シーズン3「ジャンケン小僧」の方が好きだ。特に「くしゃがら」が大好き。よろしければ、こちらもどうぞ。


オススメ 5位 ゴヤの名画と優しい泥棒

★★★3.7
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あらすじ
 1961年。世界屈指の美術館・ロンドン・ナショナル・ギャラリーから、ゴヤの名画「ウェリントン 公爵」が盗まれた。
 ロンドン警視庁は、国際的なギャング集団による犯行だと断定。しかし、この前代未聞の事件の犯人は、妻と優しい息子がいる年金暮らしのおじいちゃんだった?!

 社会的弱者の為に孤軍奮闘するおじいちゃんが、大事件を巻き起こす。実話を元にしたコメディ。
 法廷のシーンは英国仕込みのジョークが楽しく、ゴヤの絵をそれほど大事にはしてくれないけれど、温かい気持ちになれる。

 山田五郎さんのYouTubeとセットで鑑賞すると一層深みがます。さすが五郎さん! あと、紅茶とクッキーがあると完璧っす。


番外 モリのいる場所

Amazonプライムビデオにあったのに、今は有料!? 
★★★3.7
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あらすじ
 自宅の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫など、守一の描く絵のモデルとなる生き物たちが住み着いている。守一は30年以上、じっとその庭の生命たちを眺めるのを日課にしていた。普段、守一は妻の秀子と二人の生活をしているが、毎日のように来客が訪れる。守一を撮ることに情熱を燃やす若い写真家の藤田くん、看板を書いてもらいたい温泉旅館の主人、隣人の佐伯さん夫婦、郵便屋さんや画商や近所の人々、そして、得体の知れない男・・・。今日もまた、モリとモリを愛する人々の、可笑しくて温かな1日が始まる。(Amazonより)

 個人的にこの映画を一番推したかった。映像、音、美術、セリフなど全てが愛おしい作品。いつの間にかAmazonでは有料になってしまった。
 画家、熊谷守一の暮らし。自然のチカラが溢れる庭、あんなところに住んでみたい(虫嫌いですけど)。仙人が暮らす理想郷のよう。
 物語は平坦で、日常のドタバタが少しある程度。一体どこにドラマがあるのかわからない(ごめんなさい)。そんな映画なのに、幸せがにじみ出て、長く心に留まってくれる。


おわりに

 アートな映画のベスト5を選考するにあたり、一つの縛りを設けた。Amazonプライム会員なら無料で鑑賞できる(2025/02/28現在)こと。点数は映画SNS“フィルマークス”から転用させていただいた(同点の場合はAmazonも参考にした)。

 皆さんがご覧になったアート系の映画や、ご感想など、コメントいただけると嬉しいです。

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入江玄 アートライター
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