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展覧会レポ:【関西文化の日】無料で楽しむ京都国立近代美術館のファッションと内面の秘密

【約2,000文字、写真13枚】

関西文化の日「無料開放日」

 関西文化の日に参加中の京都国立近代美術館では、いつもなら有料の常設展を無料で楽しめます。この機会にぜひ訪れてみてください。

 11月16〜17日を中心に、美術館・博物館など400もの施設が入場無料です。(詳細は上記リンクをご覧ください)

京都国立近代美術館のコレクション展(常設展)

 この記事は、京都国立近代美術館で開催中のコレクション展のレポートです。
 服や自画像を通じて内面の世界を探る体験をしてきました。驚きと発見に満ちたアートの旅をご紹介します!


※京都国立近代美術館「無料の日」の詳細は、目次の ■information をクリックしてご覧ください。

京都国立近代美術館のエントランス

ファッションから考える服の意味

 そういえば、どうして服を着るのでしょうか。

 近代美術館のコレクション展をブラブラと冷やかしていたとき、ふと足を止めました。目の前には、おしゃれなパーティー用のドレスが展示されています。防寒性や肉体を隠す用途は求めていない、純粋に美しさを追求した服です。でも、これはどうなんですか?

ヨシオクボ/久保嘉男《オーバードレス、シャツ、パンツ、レギンス》2023年春夏、ナイロン・チュール、ワイヤー、ポリエステル・ツイル、ストレッチ素材 株式会社groundfloor

 「うーむ、青い熊のオーラが漂う服……」と、しみじみとその服を眺めてしまいます。「服装自由」とあったとして、これは大丈夫でしょうか。熊のオーラを身にまとうことはできそうです。

ジュンヤ・ワタナベ/渡辺淳弥《ドレス》2000年秋冬、ポリエステル・オーガンジー KCI(Inv. AC10363 2000-31-10A)

 服を着るという行為は、社会にあるけど見えにくい「自由の範囲」を教えてくれます。
「『きちんとした服装』ということばがある。人前に出るときには恥ずかしくない格好を、などともよくいわれる。これなどは衣服の選択がいかに社会化されているかの証拠であろう。」¹

アートを通じて内面を探る、自画像

 飛躍しすぎて恐縮ですが、服を着るという行為は、コミュニケーションの一種といえるでしょうか。

原田裕規《シャドーイング(リエ)》2024年、ヴィデオ(WXGA、カラー、サウンド)5分2秒 作家蔵 脚本・編集・監督:原田裕規 朗読:カレン・プレステージ、原田裕規 ピジン英語:カレン・プレステージ 英文編集:ジェームス・ケティング 熊本弁:坂本顕子 コーディネーター:鄭真美 底本:バーバラ・F・川上『ハワイ日系移民の服飾史』

 こちらの作品にはデジタルヒューマンが登場します。音声もわざと二重になっており、私とは何者か、みつめてしまいます。
「どこへ行っても、何をやっても、私は私から逃れることはできない~」²

須田国太郎《自画像》昭和4 油彩画布

 自画像を見ていると、二人っきりでお話をしている気分になってくるから不思議です。

森村泰昌《自画像の美術史(ゴッホ/青)》平成28 カラー写真

 「美術」という西洋の文化に取り込まれてませんか? と問いかけるような森村泰昌作品。
 パネルには「美術という制度と格闘してきた近代日本美術史の自画像でもある」と書かれています。この真面目な空間にこの顔、吹き出してしまいます。
 気を取り直して、もっと内面、というか内部へ行った作品があります。

小名木陽一《人工心臓》昭和50 木綿、立体織

 内蔵という美しいメカニズムを、誰も否定できません。
 一体、感情はどこからくるのでしょうか。次から次へと疑問が浮かんで、対話が止まりません。これぞボットー体験です。

シュールな中身→思考とコミュニケーションの関係

 服、コミュニケーション、顔、そして内部へと進んできました。こちらは感情を絵にした作品です。

マックス・エルンスト《 怒れる人々》1927 油彩画布

 自分の思考、変化するきっかけは何でしょうか。

アンドレ・ブルトン(著)カレル・タイゲ(装丁)ヴィーチェスラフ・ネズヴァル(跋文)『シュルレアリスムとは何か?』 1937 発行:ヨジャ・イーハ、ブルノ=フソヴィツェ

「~物が存在するのにかかわらず、光線が当たらないと物が描けないのだ。
 そして、その物には質量が必要なのだ。生命のためには人物が必要だったのだ。
 だから彼等には太陽が描けなかった。~」³(加山又造) 

加山又造《黄山霖雨・黄山湧雲》昭和57 紙本墨画

よくわからなくなってきたところへ、森の濃い空気が包んでくれました。


■information

京都国立近代美術館 2024年度 第3回コレクション展
会期:2024年9月13日〜12月1日(日)
会場:京都国立近代美術館 4階コレクション・ギャラリー
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
電話番号:075-761-4111
開館時間:10:00〜18:00 
※入館は閉館の30分前まで ※金曜日は午後8時まで開館
休館日:月(ただし祝日の場合は開館)
事前予約:不要
所要時間:約40分
混み具合:常に誰かいる
写真撮影:全て可能
webサイト:https://www.momak.go.jp/

料金:一般 430円 / 大学 130円 / 高校生以下、18歳未満、65歳以上 無料

無料の日:
11月16日(土)
11月17日(日)
11月30日(土)
12月7日(土)
12月14日(土) 
※上記Webサイトでご確認ください。


岸田劉生から連想してしまうもの

 魅力的なアイテムがところ狭しと並ぶミュージアムショップは、会場よりも混雑しています。
 おまけで出す画像ではないのですが、特に目を引いたのは岸田劉生の自画像クリアファイルでした。最近のクリアファイルは、500円近くするんですね。

岸田劉生 1891-1929 外套着たる自画像 明治45 油彩画布

 そっか、麗子ちゃんのお父さんかあ。
 岸田劉生とグッズには申し訳ないのですが、この歌が頭から離れないんです。再生される方は、ご注意ください。

ソース;
¹:北山晴一『衣服は肉体になにを与えたか』朝日選書、1999
²:解説パネル「2024年度 第3回コレクション展」京都国立近代美術館
³:カンヴァス世界の名画22『エルンストとダリ―シュルレアリスムの絵画―』加山又造「ある偏執狂の独言」中央公論社、昭和50


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入江玄 アートライター
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