#674 素敵な入り口
世の中には様々な名作と呼ばれる本が存在し、それらは時を越えて、私たちに様々な「学び」を与えてくれます。
読書は今の私の生活の一部になっていて、様々なジャンルの本を読むことで、日々新たな発見があります。
そんな中でも、小説は、私が好きなジャンルの1つで、それは、長い人類の歴史で多くの偉大な小説家によって描かれた、「人が人たるゆえん」を、現代に生きる私たちに教えてくれるからなのかもしれません。
その小説を傑作たらしめる要素の1つとして、「冒頭部分」が挙げられるのではないでしょうか。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭部分、「吾輩は猫である」は、それ自体で、これから始まるであろう物語が面白いものであることを、予感させてくれる、実に絶妙なものであると言えるでしょう。
今、私が読んでいるのは、フランツ・カフカの『変身』。大学生の時に読んで以来、約20年ぶりの再会です。
「ある朝、グレーゴル・ザムザは、落ち着かない夢から目を覚ますと、自分がベッドの中で巨大な虫に変わっているのに気がついた」
怖い。とにかく怖い。大学生の時にはおそらく感じなかった巨大な恐怖があります。この一文が私に与える恐怖は、この本を読み終えるまで、必ず持ち続けなければならない。そんな強烈なインパクトが。1ページの第一文で、すでに勝負はついたと言っても過言ではない。
勿論、その冒頭で全てが決まるほど、小説というのは浅いものではありません。それでも、その冒頭の力によって、私は、変身の世界に否応なく引っ張り込まれる。
そんな冒頭の偉大さに感服しています。
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