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#292 何をしたいのかを深く深く掘り下げることの重要性

 りべるりべるが提供している教員スキルアップ講座(学校の先生を目指す学生や社会人向けのプログラム)の中に「授業展開の方法」という単元があります。プログラム受講生の方々の傾向として「技術を学びたい」という意欲が強い。

「Actibe Learningはどうやってすればいいのですか?」
「ペアワークの方法を教えてください」

という質問がよくでてきます。

 もちろん技術を学ぶことはとても大切。しかし私自身は技術的なことは(当然必要であるならば伝えるのですが)、実はそこまで重要視していない。なぜなら必要とされる技術の情報自体(訓練は当然やりますが)はGoogle先生に聞けばすぐ出てくるからです。

 教員時代、大手予備校や教育系企業が開催する、いわゆる「授業力向上セミナー」に参加していました。そこでは「授業の技術」を教えてもらえるわけですが、そのまま自分の授業で実践しても上手くいかないのです。それはその技術を「どう使うか」という自分の中での意図が存在しないから。またその技術を活かす前提もまた整っていない場合もあるからです。

 プログラムで大切にしているのは、受講生自身の「理想の授業」を徹底的に考えてもらうこと。自分がどのような授業がしたいのか。自ら問いをたて、その問いを深く深く掘り下げる。湯気が出るほどまでに考えれば、自ずとその授業に必要な要素が明確になってくる。

 何かを行うために必要なのは、自分の中での明確なゴール。それは授業作り、マーケティング、マネジメント、強いては人生にも共通する大切な概念。「明確なゴール=自分の理念」が鮮明にすることが全ての出発点になる。

 人権や多様性、主体的な学び、ICT、個別最適化など様々なキーワードが矢数俳諧のように出てきている教育現場。それは学校や家庭、あるいは社会が持つ既存の「教育に対する価値観」が変化を迎えている証拠だと言えるでしょう。

 しかしここで大切なのは、「何をどう変化させれば良いのか」という問題にしっかり向き合うこと。つまりそれは理念を明確化すること。教育という大きな概念を、いかに明確に噛み砕いて、細かいレベルで定義していくかが、「変化の方向性」を決めていきます。

 東洋経済ONLINEで『「根本的議論」なき教育、研究者・山口裕也と哲学者・苫野一徳が共に抱く懸念〜「学びの構造転換」を支援する質問紙を開発〜』という記事を見つけました。

https://toyokeizai.net/articles/-/703583

山口氏と苫野氏は15年来の知り合い。彼らは初等中等教育の「学びの構造転換」を木てkとし、2023年4月に一般社団法人School Transformation Networkingを設立したそうです。

記事の中で両氏は

私たちは、「そもそも公教育は何のためにあるのか(=公教育の本質)」「公教育はどうあれば『よい』といえるのか(=正当性の原理)」といった共通の土台を根底に敷いたうえで議論や実践を積み重ねることが、学びの構造転換には必須だと考えています。(山口氏)

公教育が始まって以来、日本の教育構想や教育改革は、公教育の本質と正当性の原理という“底”が抜け落ちた状態で議論がなされてきました。これまでも何度か、子ども主体の学びを目指す動きはありましたが、そもそもなぜそうした学びが必要なのか、教育は何のためにあるのかといった根本的な議論が欠けていた。つねに「何のため」という問いがおざなりにされてきたから、揺り戻しが繰り返されてきたんです。(苫野氏)

と語り、「理念なき教育」の実態が今日の様々な問題の根源だとしています。

 そんな中彼らは「ScTN質問紙」を作成。どのような資質・能力の育成を目指し、どのような学習活動や教育環境が整っていれば、公教育の本質や正当性にかなう教育の状態だといえるのか、を「問う」ことによって、それらの「要素の定義=ゴール」が見えてくることに期待しています。

 それは理想の授業について「問いに対して深く深く問い続ける」ことと同義。理念をこれ以上できないほど細かく分解することで、物事の「核」が見えてくる。今、教育に対する「核」を見つける自体に入ってきているのです。

If you want to get on the right track on your business, you have to define what you should do smaller than the smallest.

 Robin Chase (Founder of ZipCar)



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