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「学びを通じて人は他者に寛容になれる。」私はそう思っています。

 人は多くの学びを通じて、この地球上には自分が知らない多くの「世界」があることを知ります。それぞれの世界を背景に持つ多種多様な人々の苦しみ、怒り、葛藤、不満などを理解しようと想像力を働かせ、共感しようと努めること。多様性という言葉が21世紀のキーワードになりつつある今、私たちは「学ぶ」ことを求められています。

 インクルーシブ教育という言葉があります。障害のある者とない者が共に学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方で、2006年12月の国連総会で採択された障害者の権利に関する条約で示されたものです。

 東京都の国立市教育委員会は「フルインクルーシブ教育」の実現を目指し、23年5月に東京大学大学院教育学研究科と連携協力協定を締結したことを発表したとの記事を見つけました。

東京国立市は40年以上、「人間を大切にする」を基本理念に掲げ、人権を尊重し、多様性を認め合う平和なまちづくりの実現を目指してきたとのこと。

2022年6月に同市が策定した教育大綱に「フルインクルーシブ教育」という言葉を記載し、初等教育から「誰もが地域の中で生活していく」という環境につなげるべく、児童生徒同士が支え合うようなクラスづくりをしながら、学び合って成長していくことを目指す強い決意を表しています。

記事の中で東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターセンター長の小国喜弘氏は

ユネスコの「Global Education Monitoring Report 2020」では、「インクルーシブ教育の恩恵について議論することは、奴隷制度やアパルトヘイトの廃止の利益について議論することと同等である」と述べられています。奴隷制度やアパルトヘイトに関する議論は「廃止すべきかどうか」という話ではなく、人間の権利の話ですよね。それはインクルーシブ教育も同じ。「障害のあるなしで学びの場を分ける隔離教育は、隔離された社会の入り口になる」というのが国連の考え方です。

と語っています。

私たちは「学び」を通じて他者を理解し、様々な「分断」と「隔離」を乗り越えてきました。それは、「新たな価値の創造」と言い換えることができる。国立市は障害がある・ないという区別が当たり前であった時代を越えて、より寛容な社会を生み出そうとしています。

国立市教育委員会教育部長の橋本祐幸氏は

現在も支援員の数は多いですが、改めて必要な人員体制の整備を検討します。教員の意識改革も必要だと考えており、今年は市民と意見交換をする「国立市のフルインクルーシブ教育を語る会」の教員バージョンを開催したほか、全教員を対象に「子どもの多様性に即した支援のための研修」を実施しました。今後はモデル校の設定なども予定しています。

ただ、教員からは「時間的・心理的余裕がない現状で不安だ」という声もあり、時間や心の余裕の創出も課題です。また、保護者や地域の理解も必要なので、引き続き対話を重ねていきます。

と述べ

国立市教育委員会教育指導支援課長の荒西岳広氏は

「個別支援はなくさないで」「特別支援学級がなくなるのが不安」という声もあり、一足飛びに推進することは適切ではないと考えています。個別支援が必要であることやその選択は尊重しつつ、通常学級の指導を充実させることで、特別支援学級を選ばなくてもいい状況をつくっていきたいです

と語っています。

 記事の最後で小国喜弘氏はインクルーシブ教育を『人間同士の厄介な関係の中でお互いを深く知り合う「人間らしい営み」である』と定義しています。知ることは学ぶこと。そして学びは私たち人間の身近にあるものなのです。

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