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 先日、たまたまテレビをつけた時

 『かんさい熱視線』が放送されていて、ゲストがエッセイストの岸田奈美氏でした。

 岸田奈美さんは兵庫県出身の小説家・エッセイスト。デビュー作である『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』で一躍有名になりました。彼女の最新エッセー集である『国道沿いで、だいじょうぶ100回』の感想を、このコラムでも書きました。

 彼女の強みは、社会に対する怒りを持ちながらも、その怒りをしっかり解釈し、その社会をよりよくするための文章を書けることだと個人的には考えています。

 そんな彼女が当番組の中で

 「ネガティヴな感情は本能的であるけれども、ポジティヴな感情は意思である」

 と述べていました。

 ネガティヴな感情は(本質的な意味において)誰にとってもプラスには働きません。自分を卑下し、周りに気を遣わせ、その中にいる誰もが嫌な気持ちになる。一方、人は誰だって落ち込む時もある。凹む時もある。卑屈になり、怒りを抱えることだってある。誰かに優しくなれる余裕なんてなく、自傷行為としてのネガティヴを生み出すのです。だからこそ、誰かに笑顔をかける、肯定的な声がけをする、という意思を持つこと。

 彼女の「ポジティヴ」から毒素が感じられないのは、彼女自身がその「ネガティヴ」を心いっぱい抱きしめようとしているからなのかもしれません。

 *Toxic Positivity → 有害なポジティブ:どんなに悲惨で困難な状況でも、人々はポジティブな考えを維持すべきだという信念を表す。 ネガティブな感情を切り捨て、“good vibes only”、すなわち、前向きな願いや思考、姿勢だけを受け入れる姿勢を示す。

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