参考図書「ミニコミ魂」著者たちの熱量が伝わる20世紀末の名著
■情熱が感じられる、20世紀末のミニコミアーカイブ
不思議なことに「今ミニコミが流行ってる」という記述は、いつの時代もこの手の本には必ずと言っていいほど書かれています。「ミニコミ魂」は1999年に発行された本ですが、その前の昭和の本でもそう書かれていたし、2000年代はリトルプレス、ZINEという名前にかわって盛り上がったと別の本で書いてありました。実際そうなのかもしれませんが、後になって俯瞰してみると(同じ轍を踏む者として察するに)、著者たちがリトルプレスにハマってその勢いで本にまとめるから、世間ではそうでなくとも、本人たちの肌感ではかなり流行っていると感じるのでは? とも思いました。
それはさておき。この本は当時出ていたミニコミをジャンル別に200種類も紹介している本で、晶文社から発行されたものです。それぞれの分野で得意な執筆者を10数名集めただけあり、思考が深いし、紹介するミニコミの著者とも距離が近く、制作秘話も飛び出します。人の血が通っていることが感じられるミニコミを、個性豊かな語り口でより身近に感じられるように紹介しているのも、さすが本の本に定評のある晶文社(私見)ですね。
1999年ごろはまだネット通販も一般的でなく、その分野に興味をもっていなければ、今よりミニコミに遭遇する機会はずっと少なかったはず。そんな中で200冊も取り上げてアーカイブにまとめたのは貴重ですし、時代を覗き見できるタイムマシーンとして優秀です。
■レジェンド達へのインタビュー、箸休めページがアツい!
商業誌異常に継続のハードルが高いミニコミだかあり、流石に掲載誌の中で現在も残っているのは稀。流石にカタログとしては用を成しませんが、ミニコミ紹介の中で挟まれるインタビューはとても貴重です。
本の雑誌の目黒二郎氏のインタビュー。地方・小出版流通センターを設立した川上賢一氏の設立秘話。コミケの代表だった米沢嘉博氏の半生。ミニコミ書店のイラストルポ。今ではZINEの生き字引として知られる野中モモ氏のインディー・マガジン評。90年代ミニコミ大賞といった愛のある企画なども。
個人的に面白かったのが扉野良人氏の寄稿文。喫茶店が「(居心地がわるいけど)コーヒー一杯で何時間もねばる」場所から「コーヒー一杯で何時間もいたくなる」場所に変わったことを指摘すると共に、ミニコミ・時代の変遷を辿っています。
「ミニコミ魂」はIPAの企画アイディアとして参考になったし、そもそも時代の熱をパッケージして形に残しておく事の大切さを教えていただきました。
絶版本ですがネットを探せば中古で安く買えるので、現在のリトルプレスファンも是非手に取ってタイムスリップしてみましょう!
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