“小さな恋の物語”を目の当たりにし、前のめりになった話
今、小2の娘が小学1年生だった頃の話。
よく一緒に下校している男の子がいた。
誰と帰ってきたん?と聞くと、「さとしくん(仮名)やで」と登場する頻度が非常に高かった。
今のご時勢なので参観などもなく、クラスの子の顔も全くわからない。その子と家もそこまで近くないようなのだが、仲良くしているんだな、くらいに思っていた。
「今日は帰りに一緒に漫才しててん」と言っていた日もあった。
「何それ、めっちゃ可愛いやん。どんな内容なん?」と聞くと、「どうも~〇〇〇(娘の名前)でーす!」「さとしで~す!」みたいにやっているらしい。ネタはスッカスカなようだが、とにかく可愛い。
そして、ある日娘がこう言った。
「さとしくん、〇〇〇(娘の名前)のこと好きやねんて」
「何それ何それ~!そんなん言ってたん?」
「なんかZ(ゼット)ランクになったって言ってた」
ゼットランクてなんや。とにかく1番、ということらしい。
それを聞いて私は俄然さとしくんに興味がわいてきた。どんな子なんやろ。娘に色々質問をする。え~気になる気になる。(わくわく)
さとしくんに会ってみたい思いが募る。
そして、ある土曜日。
娘の習い事の後に、サッカー教室をしているグラウンドの横の公園へ遊びに寄った日があった。
グラウンドを見るとサッカー教室の真っ最中。
「あ」と私は思う。
「そういえば、さとしくん、サッカー習ってるって言ってなかった?」
「うん、そうやで」と娘。
サッカー教室が休憩か何かで、少年たちがお茶を飲みに端の方へ走ってきた。
「え~~さとしくんいるんちゃうん??」と、色めきだつ母親(私)。
「あ、さとしくんや」と娘が言い、グラウンドごしのネットに近づく。
わ~~~ついにリアルさとしくんにお目にかかれる!?とワクワクしながら私も後ろについていく。(なんで)
すると娘を見た2人くらいの少年が「〇〇〇!」と、娘の姿を見てフェンスへと近づいてきた。
「あ、あの子かな?」と私のボルテージもアップ。(こわい)
「あの子がさとしくんやで」とあっさり話しに行く娘。
すると、さとしくんは嬉しそうな笑顔で娘に近づいてきた。
そして、「偶然会えたね!」「大好きよ~」と言って、フェンスをつかむ娘の手にそっと触れたのだ。
え、何、今の。
ズッキューーーーーーーーーーーーン!!!!!
娘の後ろに立つBBA(私)のハートが射抜かれた。
え~~~!!何何何。
今のは何!??
可愛すぎるんですけど!!!
サッカーをしている少年とフェンスごしにあの会話。なんというシチュエーション。リアル少女漫画の世界やん。キャーーーーやばい、興奮する。
娘は普通の顔をして何か会話をして、バイバイをしていた。
私は後ろで内心フガフガ大興奮。
少ししてから娘に、「さ、さとしくん何か言ってなかった?」と聞く。
「あ~、何か言ってたやろ。いつもあんな感じで言ってるで」とさらりと娘。まじあっさりしてんな。
ませてる、とかではなく、純粋さゆえの行動というのが見て取れて、それが余計に可愛くて。私の興奮はおさまらない。私の大切な娘を大切そうにしてくれていた、あの光景が脳裏に焼き付いて離れない。
興奮は冷めやらず、その夜は目が冴えて寝つきが悪かった。止まらない胸キュン。トキメキをありがとう。
その日から私の「さとしくんエピソードちょうだいよ」の毎日が始まった。
今日は誰と帰ってきたん?から始まり、昼休みとかもさとしくんと遊んでるん?やら、あれこれヒアリング。(めんどくさい母親)
「今日は一緒に帰ってきてないわ。帰ろうて言われたけど、一人で帰りたい気分やったから」
そう言った日は、さとしくんの気持ちを想い、「なんでそんなことするんよ~!」と残念がる私。
娘はどうやらさとしくんも好きだが、クラスのお調子者の男子が気になっている様子。
あ~そうか……。お母さんは俄然さとしくん推しやけどな……。
サッカー教室をしている時に公園行った時は、「今日もいるんちゃう?」なんて娘を誘導したりもした。我が子は通ってないのにグラウンドを見つめる母親。(こわいこわい)
娘に「さとしくんおったで。お母さんファンなんやろ?」と言われる始末。
違う違う、そうじゃない。(鈴木雅之)
あまりの可愛さにハートを鷲掴みにされた私だったが、しばらくすると「よく考えると私関係ないやん。前のめりになりすぎてたな」と落ち着いてきた。
そして、2年生になってさとしくんとクラスが離れてしまい、名前を聞くこともめっきりなくなってしまった。
たまに、「さとしくんとは会わへんの?」と聞くと、「授業終わる時間もずれてるし、あんまり会わない」とあっさり答える娘。
そうか。
小学校の頃の“好きな人”なんて、コロコロ変わったり、そもそも“好き”という気持ちもあやふやだったような気がするな。
心臓を撃ち抜かれた、可愛すぎたあのシーンは奇跡のような瞬間だったように思う。無意識と意識の間にあるような、そんな瞬間。
きっと学年が上がるにつれて、意識するようになると、素直に行動できなくなったり純粋に仲良くすることも少なくなるのかもしれない。
娘はこれから出会うたくさんの人の中から、どんな人を好きになっていくんだろう。好きになった人が、娘のことを大切に思ってくれたら嬉しいなぁ。気が早いが、そんなことを考えたりしている。
そんな時が来たら、今度は前のめりにならないように、くれぐれも気をつけなくてはいけない。(ほんとにな)
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