1. ローカル・ナルヴィク・ぶらぶら (北緯68度25分)ベッドの上に散らばった日用品入れには埃の積もった酔い止めが入っている。ほとんど誰も買わない、つまり誰もこの地では…
1. オーロラを見たか? (北緯68度14分)ボードー (Bodø) から3時間半、150キロメートルのあいだ高い波と遊びつづけた船は、私たち以外の乗客には一切ダメージを与えていな…
1. 春の嵐・トロンハイム (北緯63度25分)静かな寝台列車が一転、嵐のまっただなかのトロンハイムに差し掛かり、窓を雨粒が覆い尽くした。徐々に寝台列車内に活気が出てきて…
1. 概要童話かなにかで見たのだろうか、罰やら呪いやらで延々と西へ向かう風になってしまった魔女は終わりのない旅を続けているけれど、北を目指すのは終わりのある旅だ。…
ioriveur
2019年10月6日 22:07
1. ローカル・ナルヴィク・ぶらぶら (北緯68度25分)ベッドの上に散らばった日用品入れには埃の積もった酔い止めが入っている。ほとんど誰も買わない、つまり誰もこの地では船酔いなどならないことの証明のようなパッケージをジッと見つめる。今回、ハシュタ (Harstad) からトロムソ (Tromsø) まで乗る予定の高速船はあまりの悪天候に中止となった。荒れた海に慣れた北極圏の人々も船旅を取りや
2019年9月8日 23:06
1. オーロラを見たか? (北緯68度14分)ボードー (Bodø) から3時間半、150キロメートルのあいだ高い波と遊びつづけた船は、私たち以外の乗客には一切ダメージを与えていなかったように思う。ロフォーテン諸島はとても強い暖流である北大西洋海流に洗われて温暖、付近には世界で2番目に強い渦潮があり (1番目はボードーの南)、タラ漁のほかにめぼしい産業がなく (Wikipedia には「陸上は起伏
2019年9月1日 21:23
1. 春の嵐・トロンハイム (北緯63度25分)静かな寝台列車が一転、嵐のまっただなかのトロンハイムに差し掛かり、窓を雨粒が覆い尽くした。徐々に寝台列車内に活気が出てきて、遠くの個室からも話し声や物音が聞こえるようになってくると、列車の外はもう市街だ。駅につき、車両ドアのステップを降りると、列車や駅のどこかから発される小さな機械の音に混じって雨の音が聞こえる。湿った涼しい空気が重い荷物を持ち上
2019年8月29日 17:27
1. 概要童話かなにかで見たのだろうか、罰やら呪いやらで延々と西へ向かう風になってしまった魔女は終わりのない旅を続けているけれど、北を目指すのは終わりのある旅だ。地球が平行する線で分けられて、西風が循環し続ける限り、北は逃げない (数学的には、そうですよね?)。とはいえ最北に行き着くのは簡単ではない。スキー板を抱えていれば、とくにそうだ。今年の春、北緯78度にあるスピッツベルゲン島の町まで、オ