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北極へスキー板をもってゆく 穏やかなホワイトアウト編 (北緯68度25分〜北緯69度40分)

1. ローカル・ナルヴィク・ぶらぶら (北緯68度25分)ベッドの上に散らばった日用品入れには埃の積もった酔い止めが入っている。ほとんど誰も買わない、つまり誰もこの地では船酔いなどならないことの証明のようなパッケージをジッと見つめる。 今回、ハシュタ (Harstad) からトロムソ (Tromsø) まで乗る予定の高速船はあまりの悪天候に中止となった。荒れた海に慣れた北極圏の人々も船旅を取りやめる春の吹雪に阻まれ、私たちはバスでの迂回を余儀なくされたのだった。そうして土曜

    • 北極へスキー板をもってゆく どたばた諸島編 (北緯68度14分〜北緯68度25分)

      1. オーロラを見たか? (北緯68度14分)ボードー (Bodø) から3時間半、150キロメートルのあいだ高い波と遊びつづけた船は、私たち以外の乗客には一切ダメージを与えていなかったように思う。ロフォーテン諸島はとても強い暖流である北大西洋海流に洗われて温暖、付近には世界で2番目に強い渦潮があり (1番目はボードーの南)、タラ漁のほかにめぼしい産業がなく (Wikipedia には「陸上は起伏の激しい裸岩の山地で、生産性に欠けている」とある)、地元のひとはいろいろな船旅に

      • 北極へスキー板をもってゆく げろげろ北極圏編 (北緯63度25分〜北緯68度14分)

        1. 春の嵐・トロンハイム (北緯63度25分)静かな寝台列車が一転、嵐のまっただなかのトロンハイムに差し掛かり、窓を雨粒が覆い尽くした。徐々に寝台列車内に活気が出てきて、遠くの個室からも話し声や物音が聞こえるようになってくると、列車の外はもう市街だ。 駅につき、車両ドアのステップを降りると、列車や駅のどこかから発される小さな機械の音に混じって雨の音が聞こえる。湿った涼しい空気が重い荷物を持ち上げている体に気持ちよく馴染んだ。少し出口に迷いそうになったが、目の前のエレベータ

        • 北極へスキー板をもってゆく すやすや寝台列車編 (北緯55度37分〜北緯63度25分)

          1. 概要童話かなにかで見たのだろうか、罰やら呪いやらで延々と西へ向かう風になってしまった魔女は終わりのない旅を続けているけれど、北を目指すのは終わりのある旅だ。地球が平行する線で分けられて、西風が循環し続ける限り、北は逃げない (数学的には、そうですよね?)。とはいえ最北に行き着くのは簡単ではない。スキー板を抱えていれば、とくにそうだ。 今年の春、北緯78度にあるスピッツベルゲン島の町まで、オスロから鉄道、バス、船、飛行機で4晩ほどかけて移動した。そうしてたどり着いたこの

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