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犬のピピの話 312 出かけ続けていたい犬

 こんなふうにして、山の砂浜や古墳のような台地を歩きおえると、わたしとピピは、帰り道の坂をおりていきます。

その、あたらしいアスファルトがしっとりと黒い坂道は、花を終えた桜とツツジが右にも左にもずうっと並んで、したたる緑のながいながい両腕を、坂のふもとまでしなやかに伸ばしています。

その緑の腕が曲がるところに、斜面のふちに突き出したような休憩所がありました。
木の幹にまぎれこむようなこげ茶色のあずま屋の下に、同じ色のテーブルとベンチが置いてあります。 

むかし、わたしはこの休憩所を目印に、ピピの首輪に引き綱をつけていました。
でも、このごろは、坂道をほとんど降りきってしまう場所で、ピピをつなぎます。
はじめのうち、ピピはわたしが呼んでも、すぐにはやって来ませんでした。
ピピは、
「まだまだ自由に走っていたい!」
「まだまだ、出かけつづけていたい!!」
 のです。

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