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犬のピピの話 307 滑るにぎり寿司

「わたわたわたわた!!」
 ピピの四つの肉球が、ピピの体重とあわてた気持ちをこめて、わたしの背中を踏みならします。
「じたばたじたばた!!」

こんなふうに、すべりだいで二階建てになっていたら、転落する危険があります。
わたしはとっさに片腕を後ろにまわし、ピピを後ろ手に抱くように背負いました。
「わたわたわたわた!!」
「おーー!!」

ピピを背負ったわたしは、靴の裏をちょこまかとずらしてなるべく早く、でもいっしょうけんめい揺れないように、そうはいってもわたしもあわてているのでほんとうはどれくらい揺れてないのかわからないのだけれど、とにかくとにかく滑り台を下りていきました。

こうやって、まるでにぎり寿司のネタとごはんみたいになって降りていって、ネタは、いやピピは、滑り台のとちゅうで
「ぴょおおんん!!」
 わたしを踏み台に、右へ向かって飛んだのです。

「はあはあ」
 砂の上に着地したネタが、ふりかえりました。
「はあはあ・・」
 やや遅れて地面についたごはんが、ネタと顔を見合わせました。
「・・・やれやれ・・・・」

わたしは、自分が着ている白いTシャツ(ごはんだから、ぴったりです)のことを考えました。 
その白い背中には、あわてたピピの肉球のもみじもようが、雨あられのように散っていることでしょう。

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