映画(2023/10/16):『君たちはどう生きるか』ネタバレ感想_1.『上の世界』側の話
0.注意。これはネタバレ記事です
読んで字のごとくです。
「まだ観ていない」「近々観る予定がある」という方は、「これはネタバレ記事である」ことをご理解の上で、ご覧になられるかどうかを判断して下さい。
「それはポリシーに反する」と思った場合、鑑賞後に改めてご覧ください。
なお、時間軸を多少シャッフルしていますが、それはキャラ等のまとまった説明のためです。ご了承下さい。
1.『上の世界』の者たち
1.1.母・久子の焼死
元々の小説とは異なり、映画の舞台は、第二次世界大戦中の日本、東京から始まります。
主人公・眞人と父・勝一が、母・久子の入院している病院の火事を知り、そこに向かうが、結局母の死に目には会えなかった、という衝撃的なシーンから始まります。
1.2.礼儀正しさの鎧で心を固める戦闘民族マインドボーイ・眞人
その後、勝一と眞人は、久子の実家である田舎に疎開します。
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話が進行していくうちに、いくつかのことが分かってきます。
眞人は礼儀正しい子です。
が、それは久子の死で心を閉ざし、周囲と必要以上の関わり合いを持ちたくないからであるように見えます。
礼儀正しさの鎧で心を固めている、と言っても良いでしょう。
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また、かなり目を引く異様な行動として、学校で田舎の子たちと喧嘩になってボコボコにされた後の帰り道、大きめの石で自分の頭を殴ってだいぶ深い傷をつけるシーンがあります。
理由はいくつか考えられます。
一つには、例えば『ドラえもん』とかである、自分の不甲斐なさに腹を立てて自分の頭をポカポカ殴るシーンを、過激に石でやった、という解釈です。
知らない人には理解しがたいでしょうが、自分に腹を立てると自分を殴りたくなるのは、これはかなり広くある話です。
だって、誰かのせいにしたいが、自分の顔しか思い浮かばないのだから。
もう一つは、こうすることによって揉め事にして、いけ好かない田舎の子たちと会わずに済むよう、不登校を正当化するためです。
事実、後述の通り、勝一は直ちにそのように手配したのでした。
喧嘩に勝てなくても、己の意を通せていればよい。
そうすれば勝負には勝ったことになる。
それがたとえ、どんなにみっともなくとも。
そういうことなのでしょう。
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まあ、割とこの辺で
「あっ、こいつのメンタル、現代日本に比べて、だいぶ治安悪いな。戦闘民族マインド!」
というのが察せられると思います。
1.3.戦争の世を上手く渡る裕福な軍需工場社長の戦闘民族マインド父・勝一
勝一の話もしておきます。
勝一は軍需工場の社長であるらしく、航空機のコクピットとかを作っています。
そのためか羽振りもよく、久子の実家に、物資の乏しい当時では貴重であったはずの缶詰や煙草を手土産に持って帰って来たのでした。
それに加えて、眞人が学校で大喧嘩して寝込んだとなると、直ちに学校に息子を行かせないよう手配する、だいぶ行動力の高い父であることが分かります。
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はるか後で、眞人と、後述の夏子を救出するために、武装をした時の装備品に、なんとチョコレートがあったのです。
当然貴重品でしょう。
缶詰や煙草同様、かなり広範に効くとっておきの交渉材料として用意していたのでしょうか。
もちろん餓死しかけたら食うのにも向く。便利。
なんかこの辺の行動には異様な説得力がありました。
「これが必要とされる類いの危機的場面を、ありうることとして想定できる、だいぶ常在戦場モードの思考回路の人なんだな。このとっつぁんは」
とでもいうか。
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ということで、勝一もだいぶ戦闘民族マインドであることが分かって来るかと思います。
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父の積極的極まる行動は、今からすぐ後で述べる夏子絡みの話でも出てきます。
極めつけのものが。
読めば分かるでしょうが、個人的には、この野郎、と思いますね。
1.4.父の後妻となる妊娠した叔母・夏子へのわだかまり
さて、眞人親子を迎えに来た人がいました。
久子によく似た女性、夏子です。
なんと、久子の妹、叔母でした。
しかも勝一の後妻となる人だというのです。
極めつけとして、お腹に勝一の子がいる。
やったのか! 勝一!
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大人である勝一と夏子の間に何があったかは深く問いはしませんが、眞人がさらに深く心を閉ざしてしまったのは、まあ分かると思います。
亡き母が頭の中にある中、イチャイチャする父と叔母を見てたら、それは気も滅入るというものです。
死んだ母に似た、母じゃない人に、父との間の「性」を感じるの、ふつうかなり嫌なものですし、気持ち悪いし、見たくもないでしょうね。
勝一は夏子に、眞人の母代わりの役割を期待してもいたはずです。ここはかなり容易に推測出来ることでしょう。
実際、夏子は眞人にたいへん親切に振舞っていました。
が、当の眞人は、夏子に対し、一貫して言動の礼儀正しさを盾に、心を閉じたままでいました。
これが後で大きな問題になるのですが、それは次回の記事で書くことになります。
2.『上の世界』の舞台
2.1.田舎のお屋敷と、挑発的な魔のアオサギ
久子の実家、そして夏子の家は、田舎のお屋敷でした。
物資はそれほどありませんが(だから缶詰や煙草には通貨としての価値がある)、屋敷がある時点で相当恵まれている訳です。
また、何人かのばあやや下人を雇える程度には豊かなようです。
庭には沼があり、そこにヘッダ画像にもいるアオサギがいます。
あと、離れに小綺麗な洋風の小屋もあり、眞人はそこで暮らしています。
あと夜は夏子と勝一がイチャイチャしており、眞人がますますこじらせる原因になったりもします。
2.2.久子と夏子の大叔父が建て、廃墟と化した、曰く付きの謎の塔の別荘
もう一つ、久子と夏子の大叔父が建て、廃墟と化した、曰く付きの謎の塔の別荘というものがあります。
アオサギはここに住み着いており、眞人は後にここに注意を向けるようになります。
後半ではここの奥にある、『下の世界』と呼ばれる世界が舞台になるのですが、その説明も次回ですね。
3.『上の世界』での出来事
3.1.妊娠中の夏子の胎教には悪い眞人の塩対応とヤンチャ行動
さて、心を閉ざして、不登校にもなり、夏子ともあまり関わり合いになりたくない眞人でしたが、そんな折に魔のアオサギの挑発に悩まされます。
魔のアオサギはなんと人語を喋り、母の死の真相とやらをちらつかせながら、何かの企みのために塔に導こうとします。
業を煮やした、そして血の気の多い眞人は、心底うざったいアオサギと決闘しようとします。
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さて、この間、夏子の身になって考えてみると、眞人はまあ何かあると行方不明になりそうになるわ、その度にばあやたちと一緒に探しに行かねばならないわで、だいぶ胎教に悪い行動ばっかりしていたということが分かります。
挙句、夏子はつわりが酷くなり、休養を取らざるを得なくなってしまいました。
ばあやは眞人から夏子へ優しい声をかけるよう言いましたが、眞人にはそれは出来ない相談でした。
まあ、アカン成り行きでしょう。
3.2.煙草は吸ってよし取引してよしの便利アイテム
眞人はアオサギの羽根を拾い、これを矢羽根にして、弓矢を作ります。これでアオサギを討とうという訳です。
その際、下人に矢じりを作ってもらうために、夏子の部屋からくすねた(おそらくは父の)煙草を、交渉材料として渡すので、ちょっと笑ってしまいましたね。
眞人は子供なので煙草は吸わないのですが、その価値は分かっていました。即ち、喫煙者相手には、吸ってよし取引してよしの便利アイテムである。という。
煙草を欲しがったばあや、キリコとの縁もここで出来ますが、やはりこれも次回説明となります。
3.3.腕白な眞人に、久子から託された書物
眞人はアオサギ退治のために弓矢の精度を上げていきます。腕白坊主ですね。
しかし、その途中で、部屋の本の山を崩してしまいます。
そして、書き置きを発見します。
久子から、眞人への。
しかるべき歳になったら、この本を読んでね、という。
それが、吉野源三郎の小説、『君たちはどう生きるか』なのでした。
そこでつながること、あるか!? すごい剛腕だなスタジオジブリ…
武芸に偏りかけていた眞人は、母に託された文学に耽り、涙するのでした。
それは、原作の素晴らしさゆえか、それに加えて母の想いに感涙したからか。
3.4.塔に呼ばれて神隠しに遭う大叔父の血の者たち
さて。
その頃、まずいことが起きていました。
夏子が行方不明になったというのです。
確かに眞人も夏子が森に向かっていたのを見てはいたのですが、まさかこんなことになっているとは。
キリコと共に森の中に入る眞人。
キリコは、眞人からの夏子へのわだかまりを、外野なので理解しており、
「それでも本当に助けに行くのか」
と問います。
(キリコ本人は足腰に悪いから森に入りたくないのと、捜索なら少人数での捜索を直ちに打ち切って村人を呼んで多人数で捜索した方が安全かつ確実だからでしょうか)
眞人は
「父の大事な人だから」
と返すのです。
本心ではあるのでしょうが、「父の大事な人」というところにやはり距離感がありますね。
後で、眞人や夏子のみならず、故・久子も神隠しに遭った。という話が語られます。
そもそも大叔父からして、塔の中である日姿を消してしまって、それっきりなのでした。
大叔父の血の者は、何か塔に感応して呼ばれてしまうらしいのです。
森を潜り抜け、塔にたどり着き、眞人は中で、何か知っているらしき魔のアオサギと決闘します。
アオサギはアオサギで、挑発してこちらのペースで翻弄できるかと思いきや、歯向かってきた小生意気な眞人にムカついて来つつあり、余計に煽ってきます。(とはいえ、挑発した自分自身が腹を立てているようではしょうがないんだよな)
アオサギの羽根を矢羽根に使ったのが意外な速度と誘導効果をもたらし、アオサギはクチバシを貫通されて、魔力を大幅に損ないます。
アオサギだか鼻のでかいおっさんだかよく分からない、ビジュアル的に迫力のあるやつが、そこにいました。
アオサギのおっさんは大叔父の案内人でした。
塔の高みに姿を現す、隠者めいた影。
大叔父は生きていたのです。
大叔父にとってみれば、アオサギのおっさんと眞人がここまでの大喧嘩になるとは思ってもみなかったのでしょうし、案内人の任務はアオサギのおっさんの私憤のせいでメチャクチャになっていたのです。何をやっているのだ何を。
だが、いずれにせよ、眞人が来たのは都合が良い。
塔の奥、『下の世界』へ、眞人、キリコ、そしてアオサギのおっさんは呑まれていきます。
大叔父の統べる『下の世界』。そこはいったいどのような場所なのか…?
(続く)