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随筆(2020/6/4):虚無で渇いてしまった願望に、瑞々しさを取り戻す(2)愛されるための努力の末、愛されて嬉しく思える感受性が、カサカサに渇く日

7.スーパーダーリンになるのは大変だし、何より時間がかかる。その前に気力はガス欠になり、感受性はカサカサになってしまう

え?
「愛されたい、性交がしたいのなら、エレガントな完璧超人のスーパーダーリンになれ」?
もちろんそれは大正解ですよ。それこそが王道というやつだ。

ただし、時間ということをガン無視すれば、だ。
もちろんこれはふつうはかなり時間がかかる。ホイホイとは出来ない。

***

そういうのがホイホイと出来る天賦の才の持ち主こそが魅力的なのだし、それがホイホイと出来ない凡人には興味がない。という話は、まああるだろう。
だが、天才じゃないから、凡人だから、性の不可能性で悩んでいる人がいたとして、
「ホイホイとは出来ない、じゃあないんだよ。メカニズムなどどうでもいいから、たった今ホイホイと出来てろよ」
と言い抜けるの、かなりサイコパス度が高いこと言ってないでしょうか。人の心が分からない。

というか、人に何を強いている?
「今」「出来ない」人に、「たった今」「出来ていろ」というの、ステップを踏まないと別のところにたどり着けないようなあらゆる存在にとって、そもそも「出来ること」ではない。
人も、そういう存在だ。だから、これは、無理な話なんだ。何で呼吸のように出来るとふつうに思われているのか?

***

という訳で、スーパーダーリン路線、この時点で、明らかに死ぬほど遠回りなんですよね。

直ちに成果が出て来ないなら、当面はただキツイだけの努力しか待っていない。
義務めいた勉強のためならともかく、己の願望のために、直ちに報酬の与えられない、報われない、ただキツイだけの努力を、果たしてどこまで続けられると思うか?
我慢していても踏み倒されない。という確信がなければ、これはまず、無理だ。
これは、余程の余裕がなければ、出来ない。
そんな安穏とした楽な環境で、別に皆さん生きちゃいないでしょう。もっとヒリヒリと生きているでしょう。
余裕がある人生、いいですね。それを万人に「ふつうに出来ていて欲しい」とか言い出さなければもっといいと思いますよ。

そしてもちろん、この努力成果はともかく、報酬の方は、世間的にもしばしばふつうに踏み倒されている。
だからこれは、実際にやることを考えると、おそろしく酷な要求をしている。ということになっちゃうんですね。

こういうことをやればやるほど、心はカサカサに渇いていく。
渇く機能の中には、「愛されて嬉しく思える感受性」も含まれている。というか、正にそこが超高速で渇く。
「水気は与えられなかった」という怨みだけが残る。

気力? 出る訳がない。
ガス欠を起こして、補給がないまま走る羽目になる。
エンジンが焦げ付こうが走らせられていると、今更ガソリンをもらえる頃には、もう効率の良い構造はメチャクチャになって、どんだけ入れてもすぐに枯渇するし、何なら爆発する。

そうなると、

「そいつを爆発するまで走らせて、無駄になるガソリンは一切与えなければ、周囲としてはそれが最適解じゃない?
え? 本人はさておいて、ですよ? さておくに決まってるじゃない。何でそんなことに周囲が思考リソースを割かねばならないのか?
相手が損をするのは知らないが、こちらが損をするのは一ミリも許さない。この感性が分からんほど浮世離れしちゃいまいな。甘っちょろい寝言いってんじゃねえぞ」

という話が当然、無からポップアップしてくる訳だ。
が、そういう話に、確かに「安上り」だろうが、「盗人猛々しい」以外に何が言えるだろうか。
この流れには乗りたくないなあ。

8.魅力を評価として短期マネタイズするために、自分を捨てる

だから、直ちに報われたいなら、「直ちに魅力として評価されるようなところ」でポイントを稼ぐ。ということになる。

が、これは評価軸を他人に預けてなければ、出来ない。
自分はあくまでパフォーマーであり、自分の芸ではなく、観客のおひねりこそが本質だ、と割りきらなければならない。

(画像は直接の観客がいないサーカスの三怪人、ポピー・ケダモノ・パピィが大暴れする邪悪CGアニメ『ポピーザぱフォーマー』から)

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9.自我という集積回路を外した結果、愛を入力したら脳に虚無が出力されるマザーボードだけが残る

自我ではなく、他人の評価軸を主体とすることは、以前も書いたように、第二次反抗期前後の自我の発達との間で、そのままだととてつもない不協和音を起こすだろう。
タイミングがズレていれば、比較的これも楽なんだけどね。たまたま噛み合ってしまうと、ここでふつうに詰むんだよな。

自分を放り投げて。
投げ捨てられた自分に対する、投げ捨てさせた相手からの、自分の人格から切り離された、外形的な言動の魅力だけに基づくが与えられて。
感官だけが満たされて。

これが嬉しい人はもちろんそれでいいだろう。
よかったね。と素直に言いたい。

だが、そうではなく、虚無が生えて来る人、かなりいる訳だ。
こうなると、実は、かなり、困ったことになる。

(続く)

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