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随筆(2023/10/8):話し手にとっては素晴らしいが、聞き手にとって理解不能な話、その場のコミュニケーションとしては「無」

『胎界主』の、カルト思想家の御大層で理解不能な長広舌が終わった後で、オルグを受けた側がここぞというタイミングでそれを全否定する図

1.伝わらない素晴らしさについての話、「話」としては「無」

どんなに素晴らしい話も、理解不能だったら評価不能ですし、到達できないどんな偉大な境地も、理解不能ですし評価不能です。

2.その「素晴らしさ」とやらが客観的に存在するのか、単に主観的なバイアスなのか、区別がつかないの、困る

例えば、私は小説を書くので、会話に限らず物語について言うのですが。
私が、私の信じる素晴らしさを全力で打ち出した小説を書いたとします。
んで、読者
「…何が何だか分からない…」
となったとしたら。
少なくともその読者は、この小説を別段「素晴らしい」と褒めはしないでしょう。
「評価不能」とか、いっそ「つまんない」くらいのことは言うでしょう。

相手に素晴らしさが伝わってないというか、私がそれを伝えるのに失敗しているからです。
その伝わってない小説の素晴らしさは、誰が保証してくれるのか。
まさか自分だけしか保証できてないんじゃないだろうな。
それでは自分だけが素晴らしいと思っている、客観的には素晴らしくも何ともないなんかと、区別がつけられないではないか。

3.素晴らしい作品を分かりやすくしないの、自分でその作品の素晴らしさを毀損しているのと同じ

別に、よく読まれた名作や、褒められた傑作の全てが、「掴みはOK」であったり「明晰な文体」であったりしたとは思いません。
(少なくとも画像として使っている『胎界主』は、初見では「どうなってるんだ」と思うことばかりです。裏で行われていることを考えると「ああ、そりゃそうなるな」となることばかりですが、それは何度も読んでようやく気付くレベルの話です。困った作品だなあ)

ですが、掴みのNGな作品は、その素晴らしさを証明する前に、打ち切りによって早目に消えているか、続いても最早誰も読んでいないか、どちらかになってしまいがちです。
それは作品の寿命を止めたり、作品の人生を台無しにしたりするのと同じことです。
それで、その自分が干し殺した自分の作品を、干し殺しておいて、素晴らしいと言い張るの、なんかの虐待行為か?

ですから、例えば隆慶一郎とかは
「最初の1行、最初の前書きだけで人を引き付ける」
切れ味を大事な武器として使っていたのでした。
ちゃんと、素晴らしさを伝えるための言い方書き方は、心を尽くしてやらねばならない。
そうでないなら、自分はその素晴らしさを伝える気があまりない。と言われても、言い返すことは極めて難しいでしょう。

4.可読性を上げたから評価されるとは限らないが、少なくとも評価されるための前提は達成できている

別に、読めるような文章を書いたからと言って、評価されるとは限りません。
ですが、評価されるかどうかということにおいて、そもそも読めるかどうかは、欠かせない前提です。
だから、そこは、ちゃんとやらねばなりません。
せっかくだから、「読める」上に「素晴らしいと認められる」小説を書かねばならないのです。
「素晴らしいと認められるためには、読めないかどうかという要件はすっ飛ばしたい」?
無理でしょ。それはお話なんだから、耳に入って来ない話なんか、話として何の意味もない。

5.全ては、辿り着いてからだ

美しい難解な文章や、崇高で人を拒む風景は、価値あるもの認められる。
が、話が分かったこと到達できたことによる評価は、より大きい。
だから、そこで親切に丁寧にやるに越したことはない。ということです。

6.「もう関わりのない世界だ。わしゃ知らん」と見捨てられたら、そこで縁は無くなってしまう

俺はSTG好きだったのですが、あのジャンルはゲームとして高難易度であればあるほど推奨される地方ルールだったため、
「己の全力でどんなにうまくやろうが、このゲームを最後まで味わってやれる気がしない。俺はこれに縁がなかった」
と思うことがあまりにも多すぎたのです。
結局その後、いろいろあり、俺はシューターではなくなってしまったのでした。

あの日は、俺にはもう、遠いんだ。
もう、関わりのない世界で、未だに残っている人たちが、ごたごたとやってる事なんだ。
わしゃ知らん。

んで、俺が小説を書く時に、読者からそう思われたら終わりなのです。
そういう「難しさ」まで、うっかり真似をしちゃいけないんだよな。
気を付けたいと思ってはいます。

(以上です)


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