〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉TSUKEMENインタヴュー
■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間ヴューイング〉に掲載されたTSUKEMEN(ツケメン)インタビュー記事です。
intoxicate 146
原点に向き合い、未来へ。リスペクトと愛に満ちた“時短”クラシック
interview&text:高野麻衣
結成12年目を迎えるTSUKEMEN のニューアルバムは、原点であるクラシック音楽を5分以内に“ 時短”し、より深く濃厚に楽しんでしまおうという野心作。ありそうでなかった大胆な「クラシック」の提案だ。
「長くて聴きにくいと感じる人も多いクラシックを、より広く届けたい。出発点はそこでしたが、思い切った時短で楽曲の魅力を凝縮できるんじゃないかと気づいたんです。本来は1ミリも削るところなんてないのですが、真剣にアレンジに取り組めばきっと伝わる。おかげで今回、トリオ編成の僕らにはハードルが高かった交響曲にもチャレンジできました」(TAIRIK)
「2020年はベートーヴェン・イヤーですしね。いかにカッコよくスリリングになるか意見を出しあい、アレンジの方向性を決めていきました」(KENTA)
象徴的な1曲目《運命》では、おなじみの冒頭のモチーフを軸に、全4楽章30分を超える交響曲を緊張感あふれるスピーディーな展開で再構築。時短といってもただカットするのではない。原曲へのリスペクトと愛なしには生まれない“ リブート” だということが、駆け抜ける音から伝わってくる。
「ベートーヴェンの本質は愛だと思っています。肖像画の怒った顔のイメージが強いベートーヴェンですが、ピアノ・ソナタの2楽章はどれも愛に満ちている。苦しいけどいとおしい作曲家です」(SUGURU)
「決まり事もすごく多い作曲家。でも、たとえば休符の場所にもすべて意味があって、それによって演奏の息が揃ったりする。完璧を求めるからこそ神経質だったわけで、ほんとうはピュアでストレートな人だったんじゃないかな」(KENTA)
「ベートーヴェンだけじゃなく、《新世界》や《ツィゴイネルワイゼン》もそうですが、今回は身も心もバキバキになって、湯気が出ていると感じるくらい、クラシックの楽曲に体当たりする感覚がありました」(TAIRIK)「音大生時代に戻ったようでした。オーケストラの80人分の熱量を、3人で発信するようなものですしね」(SUGURU)
アヴィーチー《The Nights》や映画『ラ・ラ・ランド』など、ジャンルを越境したTSUKEMENらしいコラボレーションやオリジナル曲も抜かりなく、新たな展開を感じさせる1枚に仕上がっている。
「これまでの活動の中で、なんとなくやっていたことを『コンセプト』として意識する試みだったと思います。(自粛要請によって)コンサートが延期になってさまざまなことを考えましたが、そこで得た気づきをまた、今後につなげたいです」(KENTA)
「歌詞のない音楽のエネルギーで、みなさんの心がいい方向に向かうことを祈っています」(TAIRIK)
【CD】
『JITAN CLASSIC』
TSUKEMEN
[キングレコード KICC-1515]
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