〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉Thomas Prevostインタヴュー【2020.2 144】
■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、フルーティスト、トーマ・プレヴォさんのインタビューです。
intoxicate 144
フルートのフランス流派を受け継ぐプレヴォの初CD
interview&text:伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
フランス出身のフルーティスト、トーマ・プレヴォは、1976 年から2019年までフランス国立放送フィルの首席奏者を務めた名手として知られる。10 歳からエルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団の首席奏者を務めたフルーティスト、アンドレ・ぺパンに師事し、フランス&スイスの流派を学ぶ。
「ペパン先生は技術的なことよりも音楽性や作品の構成、フレージング、音質などについて教えてくれました。その後ジャン=ビエール・ランパル、アラン・マリオンに師事してさらに研鑽を積みました」
プレヴォはフランス国立放送フィルに入団する前、ピエール・ブーレーズが結成したアンサンブル・アンテルコンタンポランに師のアラン・マリオンとともに首席奏者として参加する予定だったが、同時期にオーケストラのオーディションに受かり、そちらを選んだ。
「ブーレーズ自らが電話をくれ、ぜひ自分のアンサンブルにきてほしいといわれたのですが、まだ22 歳だった私は現代作品のみを演奏するよりも幅広いレパートリーを学びたいと思い、オーケストラの方を選んだのです。もちろん現代作品も好きですから、ずっとそうした作品の演奏も続けています」
プレヴォが初CDに選んだのはシューベルトの《「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲》、シューマンの《3つのロマンス》、R. シュトラウスの《フルート・ソナタ(原曲・ヴァイオリン・ソナタ)》。いずれも長年演奏し続けている愛奏曲である。
「私は室内楽も大好なんです。この3曲はドイツ・リートのように楽器を豊かにうたわせる思いで吹いています。フランス流派はフルートをかろやかにエレガントにうたわせることがモットー。ここでは各々の旋律を無言歌のように表現したつもりです」
その歌心に大きな役割を果たしているのが共演のピアニスト、チェコ出身のミロスラフ・セケラ。プレヴォは音楽性と人間性の両面に惚れ込み、録音では信頼の絆が密度濃い音の対話を生んでいる。プレヴォはエコール・ノルマル音楽院で教鞭を執っているが、夫人のヴァイオリニスト、破魔澄子(元フランス国立管弦楽団)とともに島根県で『石見銀山国際アカデミー』を開催し、ここでも後進の指導を行っている。
「長年オーケストラや室内楽で多くの偉大な音楽家と共演しました。その経験を生かしたい。ランパル先生は常に『いま演奏している曲をもっとも好きな曲だと思って吹きなさい』といっていましたが、その意志を受け継ぎたい。録音ではこれまで培ってきたすべてを表現したつもり。この3 曲ももっとも大切で、大好きな曲だと思いながら録音に臨んでいます」
『シューベルト: 「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲』
トーマ・プレヴォ(fl)
ミロスラフ・セケラ(p)
[King International KKC061] 〈輸入盤〉
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