〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉メルコレディ(Mercoledi)インタヴュー
■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間ヴューイング〉に掲載されたメルコレディ(Mercoledi)インタビュー記事です。
intoxicate 146
©Akira Muto
ハープとピアノのフレッシュなデュオ〈メルコレディ〉登場!
interview&text:片桐卓也
ハープとピアノという意外な組み合わせによるデュオが誕生した。中村愛(ハープ)、山田磨依(ピアノ)による〈メルコレディ〉である。このデュオの初めてのアルバム『プリモ』がリリースされたが、収録曲はルニエ《シャルランヌの松》を除いてすべて世界初録音という貴重なアルバムとなった。
知られざる日本のハープ曲を集めたアルバム『風と愛』などをリリースしていた中村、そしてダマーズのピアノ曲の清心な録音で注目を集めた山田。ふたりの出会いのきっかけは山田が中村のコンサートを聴きに行ったことだった。「中村さんのハープの音色が想像以上に豊かで、これならピアノとのデュオがあり得るのではと直感的に思いました。実は以前からハープの音色に魅せられていて、共演を望んでいたこともあり、コンサート後すぐに中村さんに声をかけました」と山田。「ピアノとハープという組み合わせは珍しく、共演のチャンスもなかなか無いのですが、山田さんにダマーズの2台ピアノのための『記念祭の祝辞』の楽譜を見せられ、『これを一緒に演奏したいのです』と誘われました。そして一緒にコンサートで演奏してみたところ、とても可能性を感じたのです」と中村。
その後、中村と山田はインターネットラジオOTTAVA の番組を一緒に担当することになり、その番組内の公募でデュオ名〈メルコレディ(イタリア語で水曜日)〉が決定した。そしてデュオ・アルバムの録音へと展開していった。
そのアルバムだが、19世紀のハープ奏者ジョン・トーマス編曲によるシューベルト《アヴェ・マリア》と《ます》から始まる。ハープとピアノは楽器の使う音域が重なるために、それぞれの演奏家がよほど繊細に響きに気をつけなければ、旋律のラインも見えにくくなってしまうだろうと想像されるが、中村と山田のデュオは巧みなバランス感覚でそれぞれの楽器をコントロールしている。そして、それを感じさせないほど自然な流れで演奏が進む。ハープとピアノのためのオリジナル曲としてはR・アーンの《前奏曲、ヴァルスとリゴドン》も収録されている。聴きものはドイツのハープ奏者オーベルトゥールが編曲したベートーヴェンのピアノ・ソナタ《悲愴》だろう。「原曲に忠実な編曲ですが、ピアノ・ソナタを弾くのとはまた違った構築力を必要としていて、挑戦しがいのある作品でした」と山田。「ハープが楽器として発展していた時代を思い起こさせる意欲的な作品ですね。作品の世界をふたりで再現するのに、様々な試行錯誤を重ねた思い出深い演奏となりました」と中村。コロナ禍の重苦しい季節に、ふたりの録音は爽やかな風を送り込む。
【CD】
『プリモ メルコレディ』
メルコレディ:中村愛(hp)山田麿依(p)
[King Inernational KKC063]
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