〈J-POP お茶の間ヴューイング〉瀬木貴将インタヴュー:音楽で伝えたい。"地球は本来こんなに美しい" ということを。(北中正和)【2020.6 146】
■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された瀬木貴将インタビュー記事です。
intoxicate 146
音楽で伝えたい。" 地球は本来こんなに美しい " ということを。
interview&text:北中正和
ギリシャ神話では牧神が吹く葦笛のパンパイプは世界各地にあり、南米アンデス山地のボリヴィアやペルーではスペイン語でサンポーニャあるいは現地名でシクと呼ばれ、フォルクローレなど主に先住民の伝統音楽に使われている。そのサンポーニャや、同じくアンデスの縦笛ケーナを使って、現代的なポップスを作り続けているのが瀬木貴将だ。
プログレ好きなロック少年の彼は、家にあったフォルクローレのCDを聴いて興味を持ち、高校卒業後ボリヴィアに出かけて、現地最大のレコード会社から4枚のアルバムを発表。95年の日本デビュー後、世界各地を旅しながら「サンポーニャもギターもドラムも同じフィールドの楽器」という考えを実践してきた。最新作『360°』にはアルゼンチンのパタゴニアやアフリカのナミビアの“ 秘境” で生まれた曲が入っている。
「97年にアマゾンをカヌーで下りながらアルバムを作ったのをきっかけに、大自然の中で創作活動するようになりました。美しい景色を見ながら、自分がほんとにやりたい音楽は何だろうと考えていると、無我の境地になって、心の中から曲が湧いてくるんです。どちらを向いても見渡すかぎり地平線の広がるところで自分自身を見つめ直して生まれた音楽という意味で今回のアルバムのタイトルは『360°』にしました」
彼のメロディはいつも親しみやすくサウンドもポップだが、背後にこめられた思いは壮大だ。たとえばアルバムを象徴する曲のひとつ《ラスト・ジャーニー》は、サンポーニャの多重録音からはじまり、5拍子のプログレ/ フュージョン的なサウンドに移行していく。
「イントロはサンポーニャを7本重ねて録音しました。かつて中央アフリカのピグミーの音楽を学んだことがあるんですが、彼らの音楽はバッハの対位法に匹敵するような素晴らしいものです。そのポリフォニーの発想をサンポーニャに置き換えて、リズム、メロディ、ハーモニーからなるシンフォニー形式の音楽と融合してみようと思ったんです」
音楽に境界線を引かないための工夫は他にも、アフリカ風のギター・アルペジオが登場する《グラベル・ロード》にヒップホップの定番マシン808を隠し味的に使うなど、アルバムの随所に見られる。これは野生動物保護の気持ちをこめた曲だが、自然との調和はアルバム全体に通底する考え方でもある。
「生き物は国境や戦争に関係なく暮らしている。“ 人間がいないところは美しい” というのが大自然を旅しておぼえる率直な感想です。“ 地球は本来こんなに美しい。野生の動物はいまも秘境でこんなにのびのび暮らしている”ということも音楽を通して伝えられれば、と思いますね」
〈CD〉
『360°』
瀬木貴将
[ポニーキャニオン PCCY-01991]
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