〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉福田美樹子インタヴュー【2020.4 145】
■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、福田美樹子のインタビューです。
intoxicate 145
©OTTAVA
“生の声” で切り拓く新境地となるフランス歌曲集
interview&text:原典子
コロラトゥーラ・ソプラノとして活躍する福田美樹子が、新たな境地を切り拓くフランス歌曲集『Je ne t'aime pas あなたなんか愛していない』をリリースした。収録されたのは、ワイル、サティ、ラヴェル、ベイツ、アーン、陰影をたたえた歌曲たち。ときに演じるような話し声も交えながら歌われるそれらは、ほぼすべてがコロラトゥーラのレパートリーではないという点が“新境地”たる所以だ。
「フランスのマディ・メスプレ先生のもとでコロラトゥーラのメソッドを学び、鍛錬しながらキャリアを積むなかで、高音だけでなく低音も自由自在になってきた感覚がありました。そんな折、青柳いづみこさんの企画・監修によるアルバム『クロード・ドビュッシーの墓』に参加させていただき、フランス語でナレーションが入るような曲にも挑戦したことで、自分の“ 生の声” を残してみたいと思うように。同時に、ずっとあたためてきたドラマ性のある曲を歌うなら今だなと、一歩踏み出してみました」
タイトル曲からはじまるワイルの3曲、そして最後に収められたプーランクの《偽りの婚約》全曲がアルバムの核となっている。
「ワイルの歌曲は低音の魅力というか、メゾやアルトの人が歌うものという印象がありましたが、フランス語で書かれた《ユーカリ》の楽譜を見た瞬間に“私の歌だ” と直感しました。自分の魂と肉体から“表現したい! ” という思いが湧き上がり、それとともに遠くから包み込むような母性や精神性が生まれたのです。一方のプーランクはワイルと同時代の作曲家ですが、ワイルよりもずっとクラシックのテイストを残しており、肉声を愛した人でした。フランス語にはさまざまな母音がありますが、プーランクの音楽はその母音の響きや色に触発されて、あのような和声になったのではないかと思います。はじめに言葉ありき、そこからフランス独特の憂いや翳りのある和声が生まれたのではないかと」
ラヴェルの《3つの歌》から第2曲〈天国の美しい三羽の鳥〉はピアニストの本田聖嗣の選曲による。
「本田さんはフランスで研鑽を積まれて、フランス語を深く理解していらっしゃるので、なにも相談しなくても自然に合わせることができました。この曲はピアノの音が少ないのですが、それだけに響きがとても繊細で、ラヴェルらしい美しさがあります。今作には7人の作曲家の作品が入っていますが、それぞれの作曲家の色がもっとも出ている曲を選びました」
色彩豊かな声が織りなす“音と言葉” の世界にどっぷり浸りたい。
『あなたなんか愛していない』
福田美樹子(S)本田聖嗣(p)
[OTTAVA RECORDS OTTAVA10003] UHQCD 〈高音質〉
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