〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉ハニャ・ラニ(Hania Rani)インタヴュー
■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間ヴューイング〉に掲載されたハニャ・ラニ(Hania Rani)インタビュー記事です。
intoxicate 146
© Marta Kacprzak
自分を振り返り、心の中の“家(ホーム)”を見つけて!
interview&text:渡辺亨
ソロ・ピアノ集だったデビュー作『Esja』に対して、2作目『Home』は、ベーシスト&ドラマーや弦楽四重奏団との共演、エレクトロニクスの導入などによって、音世界が格段に拡張している。と同時にハニャ・ラニ自身が清楚な歌声で自ら歌っている曲が5曲も含まれていて、新たな音楽的地平が切り拓かれている。「小さい頃からピアノを練習している時に弾いている曲とは違うメロディを自然に歌っていましたし、“ 歌”は自分の中では常に重要な位置を占めていました。作曲の面でも影響受けてきた大好きなシンガーを一人挙げるとすれば、アグネス・オベルです。私の場合、曲を作っているときに自然に思い浮かんだ言葉をベースに歌詞を組み立てていくことが多く、表題曲の冒頭の歌詞“Home, I feel like home” も、そのひとつ。今回はこの《Home》を足掛かりにより大きなストーリーを作っていき、最終的に一枚のアルバムになりました」『Home』は、旅立ちを告げる「Leaving」で始まり、帰還を意味する「Come Back Home」で締め括られる。新作は、いわば精神的な旅のアルバムと言えるだろう。また、10曲目の曲名は、日本語の“ 天然” が付けられた《Tennen》。新作には、これまでのハニャ・ラニ自身のツアーの経験も反映されている。
「私は自分が訪れた先々では、その場所について何か新しいことを学び、心に留めておくようにしています。昨年12月に公演で初めて日本を訪れた際、私は友人に根津美術館に連れて行ってもらいました。その時に開催されていた展覧会は、江戸の茶の湯に関するもので、茶道には冥想的な側面があることに惹かれました。“Tennen” はそこに展示されていた古い文献で初めて知った言葉で、“ 物事が自然のままの状態であり、何の影響も受けていないこと” という英語の説明文が添えられていました。その時のことを思い出し、この曲によって喚起したかった雰囲気を表すのにぴったりの言葉だと思ったので、“Tennen”と名付けました」
『Home』は、もちろん新型コロナウィルス感染症が世界中に蔓延する前に完成していた。しかし、今や“Home” という言葉は、以前より複雑かつ重要な意味を帯びている。このことを踏まえた上で、アルバム・タイトルについて語ってもらった。
「自分をじっくり振り返りさえすれば、どこにいようとも、誰もが心の中に“家”を見つけることができる。そして心が平静であれば、その状態が最も安全な待避所(home)だと私は思います。私がこの不安な時期に音楽を通じて人々に伝えたいと思っているのは、希望と平和、そして自分を振り返るということです。必要以上に恐怖心を抱かないためにも」
【CD】
『ホーム』
ハニャ・ラニ(p)
[GONDWANA/コアポート RPOP-10031]
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