〈J-POPお茶の間ヴューイング〉吉田兄弟インタヴュー【2020.2 144】
■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、津軽三味線奏者・吉田兄弟のインタビューです。
intoxicate 144
祝デビュー20 周年!
津軽三味線の革新者達たちの挑戦は続く!
interview&text:高野麻衣
津軽三味線の革新者・吉田兄弟。デビュー20周年を迎えたこの冬、過去10 年間のコラボレーションと新曲を集大成した2枚組のアルバムがリリースされた。目玉は、今夏スタートのアニメのメインテーマ「GIBIATE 吉田兄弟 feat.SUGIZO」である。
「『GIBIATE THE ANIMATION』は、“和”をテーマに日本のクリエイターが集結するプロジェクト。吉田兄弟は洋楽器など“外”とコラボしているイメージが強いと思いますが、ここ数年はオタ芸など“内”、つまり“ 日本発信のコンテンツ” とのコラボがどんどん増えているんです。今回ご一緒したLUNA SEAのギタリストSUGIZO さんは、和楽器への造詣が深い方。ドラマー真矢さんがお能の家系ということもあり楽曲の「和の間」を大切にしていると伺い、いい刺激を受けました。アニメのメインテーマでは、覚えてもらえるメロディも大切。津軽三味線はどうしてもフレーズ優先になるので、メロディメイカーであるSUGIZOさんとキャッチボールしながら“ 曲を育てていく”過程がおもしろかったですね」(健一)
「SUGIZO さんからの提案でおもしろかったのが、僕らなら2 台の音を揃えるところを『ひとりはジャジャジャーンと大げさにパフォーマンスしたほうが映える』と考える視覚ありきの作曲方法です」(良一郎)
「これだけデジタルが発達した時代のエンターテインメントは、もはや音だけじゃない。座って演奏する三味線でどうやって躍動感を表現するか――どこか二の次にしてきた課題を、あらためて気づかされた体験でした」(健一)
活動の幅広さを象徴するように、同じ伝統芸能であるクラシックとのコラボも収録された。2019年、大野和士指揮バルセロナ交響楽団との共演で世界初演された《2つの三味線のための協奏曲》は、“ 日本の森を旅する津軽三味線” がテーマ。蝉の声や風の音、カザルスの平和への祈りとも重なる鳥の歌が、三味線の音色と混ざり合う。
「2016年、文化庁文化交流使としてバルセロナに派遣されたとき、同じタイミングで大野さんがバルセロナ響の音楽監督に就任されたんです。『これまでなかったものをゼロから作ろう』と意気投合し、若いスペイン人作曲家ファビア・サントコフスキーを紹介されました。彼は僕が教えた三味線の譜面をマスターした上で、スコアを完成させたのですが……完成が3月、初演が5月。しかも半音の半音が存在する難解な譜面。受け取って呆然としました。まずはファビアに歌ってもらい、それを動画で撮影して兄貴に送りました」(健一)
「最近の兄弟喧嘩はそこでしたね(笑)。正直『できない』と思いました。僕らは、指揮を見て演奏することも初めて。普段は暗譜して、互いの呼吸で音を合わせて演奏するから、まったくスタイルが違います。結果的に貴重な体験になりましたが、ここ数年で一番スリリングな挑戦でした」(良一郎)
近年、健一がバルセロナを拠点にヨーロッパの三味線指導者の育成を続ける一方、良一郎は新・純邦楽ユニット〈WASABI〉で学校公演を中心とした活動も続けている。
「学校公演で出会う子どもたちは、もう和楽器が古いなんてイメージを持ってないんですよ。子どもたちはまっさら。握手会などでは、小さいとき学校に来てくれてから、ずっとファンですっていう若い人たちにもたくさん出会います」(良一郎)
「米津玄師さんなんて、ほとんど民謡ですよね。それが新しいと受け止められて、流行していることが重要です。だって僕らが伝統芸能として扱う音楽は、昔の人々を熱狂させ流行ったからこそ残ってきた――そう考えると、今はチャンスに満ちていると思います。昔は海外公演をやっても気づいたら終わっている状態で、これは違うんじゃないかって兄貴とよく話していました。短期じゃなく、長期で考えることが必要だと。点だったものを線で結んで、面にすること。それが球体になって、世界がひとつになることを目指したい。2016年からの三味線協奏曲が2019年、2018年からのGIBIATE が2020年に実現し、またその先へ。今後も挑み続けたいですね」(健一)
■吉田兄弟 (Yoshidakyoudai)プロフィール
北海道登別市出身。兄・良一郎、弟・健一ともに5歳より三味線を習い始め、1990年より津軽三味線奏者初代佐々木考に師事。2003年には全米デビューも果たし、国内外様々なアーティストと競演。2015年には「連載完結記念 NARUTO- ナルト- 展」とコラボした楽曲「PRANA」がリリースされ大きな話題に。伝統芸能の枠を超えて活躍している。
『THE YOSHIDA BROTHERS』
吉田兄弟
[WARNER MUSIC JAPAN WPCL-13160] 2CD
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