読書感想文 新井英樹『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』 、およびくるり『THE WORLD IS MINE』全曲レビュー
目次を覚えたぞっ
はじめに
こんにちは。その名の通り、読書感想文です。先月ぐらいだったかに読んでえらく共鳴しまして、放っておくと断片をひたすらTwitterで再放送してしまいそうなので、ひとまずここに全部書いときます。アルビニ追悼記事後編とどっちが先に仕上がるかわかりませんが、多分こっちの方が先になるでしょう。基本的に読んだ人向けの内容で、ネタバレは全開も全開で行きますので、悪しからず。文体とかもどっちらけの書き殴りです。
あと、マンガ本編の画像をバンバン引用します。最小限の引用に留めるつもりですが、問題があれば修正・削除等対応する所存です。できれば単行本や電子書籍を買ってからお読みください。リンクを踏んだら私にゼニが入るとか、そういうことはもちろん一切ございません。
なお、死体がモロ写しになるなどショッキングなもの(イラストですが)も多いので、閲覧注意です(なるべく避けますが)。では、始めます。
誰に共感したか
まず、このマンガを語る際の論点として「どのキャラクターに共感したか」というのがあると思います。主人公であるテロリストコンビのトシモン(正直モンに共感しちゃう人は結構ヤバいと思いますが)から、阿倍野マリアや新聞記者の星野、警察関係のサブキャラに至るまで、あらゆるキャラクターに彼らなりの哲学があり、それぞれの価値観から出た名言がある。さて、僕は誰に肩入れして読んだかというと、最も安直でありきたりでつまらない回答だと思いますが、トシこと三隅俊也です。なぜ彼に共感したか?と聞くでしょうか。答えはもう言ってますよ。私が安直でありきたりでつまらない人間だからです。
「トシモン」として暴虐の限りを尽くした彼らが神話となるまでの総体を10億としましょう(もちろん、彼らの行いは本当だったらマイナスに何億積んでも足りないですが)。モンちゃんは「0から1を作り、9を10にし、やがて10億にする人」なんです。彼は本当にセンス100%で生きていた人です。人じゃなくて鬼神なんだったか。
まあとにかく、稀代のイノベイターであり、最大の殉教者でもある。だけど、だけどですよ。彼の1が10億になるには、2〜8の部分を埋め合わせる最初の信者、トシの存在が絶対に必要だったんです。トシモンはトシモンでない限り、世界の覇者にはなり得なかった。
トシは結局、モンちゃんの側近としては相応しくないと見做されてしまい、最期には信者たちの手にかかって無惨に殺されてしまいます。彼は今際の際のあの時になって、初めて心から「神さまっ!!」と叫んだんですよ、きっと。ずっと自分の置かれた状況を映画やドラマのように解釈し、リアルな質量のあるものとして受け取らなかった。信じようとしなかったバチが当たったんです。
ここまで書くと「やっぱりトシはダメだな」ってなるじゃないですか。ちょっと待ってくださいよ。モンちゃん、0を1にした後にサボるじゃないですか。「いだっ」とか言って。三隅母の悲劇的な死がトリガーとして最後の背中を押したとはいえ、あそこで奮起できる人間はなかなかいないと思いますよ。
あとやっぱり1番凄いのは青森県警立てこもりの際に見せた行動力ですよね。だって、自分のことを警察にチクってパクられて、急場で立てた最善の人質作戦までおじゃんにされたんですよ?普通あそこからなんとかしようとできないですって。戦意喪失からの即刻射殺or確保ですよ。
あと僕が彼に共感するのは、その多弁さですね。しかもおそらく映画仕込みでべらぼうにウイットに富んでる。バンドなんかやってると、モンちゃんみたいな圧倒的センス派の人間に気圧されて気を失いそうになる瞬間があるんですよ。仕方ないから無駄に回る頭を使って御託並べて、その場を凌ぐしかないんです。
モンちゃんは本当に鬼神だったのかもしれないけど、トシは「人間」なんですよね。彼は清濁合わせ呑んで見事に人間をやりきって見せた。よく頑張った、天晴れだ。痛かったろう、ゆっくり休めと言いたいですよ(本気じゃないですよ)。
ただ、モンちゃんに感化される瞬間ももちろん多々ありましたね。「俺は、俺を肯定する。」「抗うな。受け入れろ。全ては繋がっている。」彼がちゃんとした意味の通ったメッセージを発するのって、これぐらいですよね。そんな一言で全部言い切れちゃうセンスは僕には到底ないけど、素直に彼の信者として生きていけそうです。やっぱり僕はトシなんだな。
トシの名ゼリフは数多いですけど、一つ選ぶとしたら「背伸びしたってモンちゃんにもマリアにもなれへん。吐き気するほどボク…人間のスタンダードや。」ですね。本当に僕もそうなんですよ。誰も飛び込んだことのない大穴がポッカリ開いていて、もしかしたら極楽浄土に繋がっているかもしれない。そんな時、僕は逆立ちしたって「1人目」にはなれません。誰かが飛び込むのを待って、さらに覗き込んでいるところを悪友から突き飛ばされるぐらいじゃないと、とてもじゃないけど飛べない。それが「人間のスタンダード」だと思います。でも何度も言うようですけど、その「スタンダード」のトップに立つのがトシなんです。それぐらいのことを彼はやってのけたと思います。
サブキャラについて
せっかくなのでサブキャラについても語りましょうか。準主人公と言ってもいいマリアは僕はそんなに好きじゃないですね。可愛いけど。まあマリアが好きじゃないってよりは多分、マリアがメインになってる時のこの作品のトーンが好きじゃないです。やっぱり中弛みというか、停滞感はあるじゃないですか。それも後々になると必要だったってわかるんで、作品として失速してるという訳ではないんですけど。
サブキャラで特に好きなのは警察の面々で、その中で1人と言われればヨダレ機関車こと薬師寺補佐ですかね。「ゲラウ!!」とか言うの好きです。僕も言いたい。雑な言い方ですけど、やっぱり僕は「男」なんで、マスキュリンのヤバいオッサンにはなんとなく惹かれちゃうというか、なんか見ちゃうみたいなとこあるんですよね。電車でブツブツ言ってるオッサンとかも結構見ちゃいますね。それはあんま良くないか。
あと死んでるのに人質にされちゃった山崎も好きですね。「燃える出会い、燃える恋して燃える家庭築きてえっス ジブンは!!」。おれもー。
あと「マンガ夜話」でいしかわじゅんが指摘してること(ちなみに「スタンダード」のくだりは石井正則も語ってました)ですけど、ヒグマドンの全貌が結構早々に出ちゃうのは僕もうーんどうなんだって思っちゃいましたね。せめてもっと引っ張るべきだったとは思います。中間の中弛み感もそこのクリフ・ハンガーがあれば解決したと思うし。あの辺で僕はいったん読むの中断してるんですよ。なんかかったるくなったなと思って。単純に序盤の畳み掛けが凄すぎて息切れしちゃったっていうのもありますけど。
それと、さっきの薬師寺補佐の話とも通じますが、そしてこんなこと自分が言うの結構信じられないですけど、このマンガ読むと普通にセックスしてえなみたいな気持ちになりますね。新聞記者星野のベッドシーンとか、素直に気持ちよさそうで羨ましいなーみたいな。
また、特に音楽関係(自分が元ネタを多く知ってるだけかも知らんが)のサブキャラは類型的な印象が強いですね。ジャンボ伊丹は完全に矢沢と長渕をミックスさせた感じだし、曽根崎レオンは完全に曽我部恵一だし笑、サンプリングの集積って感じで、90年代サブカルあるあるではありますよね。岡崎京子『ヘルタースケルター』読んでる時も同じこと思いました。このスタイルのキャラ造形で1番売れてる作品を挙げるなら、冨樫義博『HUNTER×HUNTER』でしょうか。僕が知らないだけで、警察の面々も刑事ドラマインスパイアだったりするのかな?
くるり『THE WORLD IS MINE』ーその1
そろそろこの辺りでこの作品の「副読本」としての重要性について語ります。周知の通り、この作品は同時代のアーティストにも相当な影響を与えており、その筆頭として挙がるのがくるりのフロントマンである岸田繁です。そしてこの作品の名をそのまま冠したアルバム『THE WORLD IS MINE』の副読本としてこのマンガは非常に重要なのです。もちろん元々このアルバムは私も大好きで、くるりのフェイバリットを挙げろと言われたら『図鑑』と並んでまず名前が出るアルバムでした。しかしマンガを読んでからは、オールタイムベストくるりとして評価が固まった感じがあります。
作品名をそのまま冠してるだけあって、全体のサウンド作りや歌詞に通底してこのマンガからの影響が窺える『THE WORLD IS MINE』ではありますが、ここでは特に影響が強いであろう曲を抜粋して(追記 結局全曲レビューすることに…笑)語りたいと思います。なお、私はこういう形の語りは普段あまり好まないのですが、やはり文字情報というだけあって、どうしても伝わりやすい歌詞の方にフォーカスしたものとなることをご了承ください。
1.GUILTY
まずは一曲目の「GUILTY」から。
やはりオープニングトラックというのはアルバムのムードを決定させる強力な役割がありますね。ド頭の「ピヨーン」という音に関してはコロナ禍の中で企画されたリモート配信企画『くるりのツドイ』にて語られているので、ここでは省略します。
そのSEに被さる形で、非常に内省的でシンプルなコード進行に乗せた岸田繁の弾き語りからこの曲ははじまります。ここでの佐藤征史の抑制の効いたベースもいいんですよね。Radiohead「Airbag」風というか。本当にいいベーシストだと思います。
それでは歌詞を見ていきましょう。
これはもうどこからどう見たってトシの歌でしょう。「ボク チカラ欲しかった」ですよ。言い逃れできない(しなくていいんですが)レベルで岸田繁が自分とトシを重ね合わせて書いてると思います。最後に「どうにもならんし」と付け加える語り口までトシの完コピだと思います(褒めてますよ)。
その後、アルペジオを聴かせるゆったりとしたパートが少しあって、事態は急変します。ドラムが急速にこちらに迫ってくるとともに強烈なバンドアンサンブルになだれ込むのです。これはもうトシとモンの出会いのシーンに決まってるじゃないですか!!!!!モンちゃんがタンクローリーをぶっ壊すあのシーンですよ。絶対にそうです。
そしてそこからこれまた唐突に始まる美しいコーラスのリフレイン。これは間違いなくモンちゃんにすっかり惚れてしまったトシのこと(そしてこの一連のシーケンスはトシモンの一部始終のダイジェスト、走馬灯としても機能する)ですよね。あの観覧車での一幕が思い出されます。間違いない。
そして再び弾き語り(今度はバンドもインしてますが)中心のパートに戻り、こうです。
これですよ。もう何をか言わんやです。後半が切ないですね。トシにだって、多分こういう優しい気持ちはあったんだと思います。本当の「マリア」だった同僚の女の子・宍倉妙子と一緒になって、幸せに穏やかに暮らす未来もあったのかもしれない。だけど「チカラが欲しい」という欲望と、それを叶えんとするモンちゃんの魅惑には抗えなかった。どうでもいいですけど、トシのこの辺も僕と似てるなって思います。好きになりかけたけど諦めた人が性別問わずたくさんいますから…笑。
2.静かの海
続く2曲目「静かの海」。
これに関しても、トシモンが出会う一連のシーケンスに直結すると思います。
これはトシの爆弾を試しに爆発させるあの海のシーンだと思いますね。もう僕が細かく付け加える必要もないでしょう。
3.GO BACK TO CHINA
続く3曲目「GO BACK TO CHINA」。
これも名曲なんですが(後に『アンテナ』に参加するクリストファー・マグワイアが1晩で33回聴いたという逸話は有名ですね)、そんなに直接的な関連は見出せないのでここでは省きます。強いて言うなら「自転車泥棒」の節はトシの「檸檬」の件と結びつかなくもないかな?
4.WORLD'S END SUPERNOVA
それでは、このアルバムのハイライトとなる「WORLD'S END SUPERNOVA」に移ります。
この曲はマンガの最終盤で語られる「モンの過去〜そして世界滅亡」への言及とみるのが自然(というか曲名がまんまだし)かなと思います。特にモンの過去について言及してる部分が多いのかなーと。特にここという部分を抜粋します。
ここは母親がヤクザと心中し天涯孤独となった(父親は不明)ところを、実存主義にかまけた狂人・鈴木健吾に拾われそして育てられ(アレを教育と呼ぶのかは置いておき)た、幼きモンちゃんへの言及でしょうね。
絶望の果てにモンちゃんが見つけた希望は、母親から「死ね」の一言とともに渡されたクマのぬいぐるみ。
彼が(おそらく)初めて感情を露わにしたのは、そのぬいぐるみをいじめっ子たちに燃やされ、彼らを刺殺した時でした。やがてぬいぐるみはトシによって代わりが買い与えられるが、モンちゃんはマリアと本当の意味で「出会った」時、それを自ら捨てます。新聞記者の星野が自らの記事で推測している通り、モンちゃんはぬいぐるみにこもった「想い」(「望み」と言い換えることもできるでしょう)の依代としてマリアを見出したのだと思います。「僕はここにいる 心は消さない」。
5.BUTTERSAND/PIANORGAN
「WORLD'S END SUPERNOVA」と地続き(サブスクだと一瞬音が切れちゃうんですね)のインストナンバー、「BUTTERSAND/PIANORGAN」。
インスト曲なので当然漫画と関連付けて語るも何もないのですが、僕は単純にこのトラックが好きです。特に後半の「PIANORGAN」でのブレイクビートはたまりません。その辺まで語り出すといよいよキリがないので、次にいきましょうか。
6.アマデウス
クラシックの素養がある岸田繁が得意とする管弦楽アレンジが印象的な名曲、「アマデウス」。
ここでは勿論、ミロス・フォアマンによる映画化が有名な、モーツァルトとサリエリの確執を描いた名作『アマデウス』が寓話として挿入されてはいますが、結果として『ザ・ワールド・イズ・マイン』におけるマリアに関する言及にもダブルミーニングで接続されるかと思います。そもそもラテン語のAmadeusは「神(deus)に愛されし」という意味らしいですよ。Wikipediaによると。
この曲の歌詞はかなり重要だと感じましたので、全文引用します。
『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』全編にわたって、モン側の思いが直接モノローグで語られることなんかは一切ありません。ですが、マリアと出会った時のモンちゃんの心情はこれなんじゃないかなあとも思います。トシモンがマリアの元を訪れた時、モンちゃんは人の痛みを極端に取り込んでしまい、人が殺せなくなっていました(それでいいだろというツッコミはさておき、ストーリー上はそれが障壁となるのです)。
そんなモンちゃんに「私が愛します。愛せないことは最大の罪です」と、その名に恥じない母性を青臭さたっぷりに「高らかに」説くマリア。
そんな彼女から「なぜ私をトシに殺させなかったか?」と問われたモンちゃんはこう答えます。「もどれそうだから」。
マリアはモンの「愛してくれ」の言葉に応答し(半ば人質に取られる形ではあるものの)、トシモンと行動を共にします。「時速200km/h越えて」突き進む2人を見ながら、きっとマリアの「胸の中」には「スローバラッド」が流れていたことでしょう(そろそろくどいですかね?コレ)。
「トシモンを手懐ける」というマリアの決意は、すっかり悪漢となったトシの策略によって、彼女の精神もろとも打ち砕かれます。かつての友達(親友と書いても差し支えないでしょうが)であった潤子を約束を反故にする形で、その幼い息子(マリアの説得により産んだ子でしたね)と共にトシに惨殺され、完全に崩壊するマリア。それを見たモンちゃんは「腰を上げ」、ぬいぐるみを潤子の家に置いて出ていくのでした。アマデウスと言いつつも、最後の節は完全にマリアのことについて歌ってますね。
7.ARMY
続いては幽玄なアルペジオが特徴的な「ARMY」。
この手のハチロク(6/8拍子)ものはくるりの十八番ですね。佐藤征史のベースもいい仕事してます。これも短いので全文引用。口数が少ない曲が多い(むずい日本語)のもこのアルバムの魅力ですね。
これはどの辺りでしょうね。「ARMY」というだけあって自衛隊関連なのかと思いましたが、何度か出てくる「山に逃げる」シーケンスが一番しっくりきますね。
まずはトシが初めて自覚的に人を殺すことになる、ポポひょんとつとむくんのパート。このカップルの怯え方が本当にリアルで怖かったです。「今ですか?」にはこの場面やらこの場面を連想したり。
それに続く、ヒグマドンとトシモンのルートが初めて交わることになる「初顔合わせ」のシーンも連想しました。ヒグマドンが「暗がり」から実体となった瞬間ですね。
「おもちゃの兵隊さんは何故 笑わない?」は飛んでクライマックスの完全包囲シーンですかね。マリアは壊れてしまったその頭の中できっとそう思っていて、だからこそ、彼女の死相は笑顔だったのでしょう。
最後の一行「とりあえず夜が明けるのを待つ 恋しいかい?」はちょっと無理矢理ですけど、全てが終わった後、地球から遠く離れた星でモンちゃんの亡骸から生命が生まれるところとかですかね。全部こじつける必要もないんですけど。
トラックリストを見ながら書いててちょっとビックリしてるんですけど、まだアルバムの半分です笑。前後編に分けるのはくどすぎるんで、一旦CMです(広告収入とかもらってるわけではなく、単に友達の音源を紹介します。興味ないよって人は飛ばしてもいいですが、興味持ってください)
CM
中橋ネジキ『Jukugaeri Juvenile』
僕と以前papercuts;craftsmanship(以下、PCズ)というバンドをやっていた中橋くんの、1stミニアルバム。その大きなテーマの一つとして「郊外」がありますが、PCズの練習の時にもこのあたりのことはよくディスカッション、もとい口喧嘩(まだまだ未熟でした)してました。そのうちまた一緒にやりたいね。
内容としては中村一義やエリオット・スミスへのリスペクトを軸に、彼特有のモチャモチャとした(中橋へ 褒めてるよ、見ても怒らないでね)サウンドが展開されてます。僕のお気に入りは初期七尾旅人(僕はサブスク解禁の時に初めて知り、中橋からもいろいろ教えてもらいました)オマージュが印象的な「リコリス」。
The Bagpipes『サラブレッド』
僕が以前ドラマーとして在籍していたバンド、The Bagpipesのシングル。前作「385」までは僕が携わってたこともある時期の曲(音源の385のドラムは僕ではなく、同じサークルにいた坂本くんです。ちなみにサラブレッドのドラムは現メンバーたちと早稲田のナレオで一緒にバンドをやってた笹山くん)でしたが、今回のこの曲は全く知らなかったです。多分ギターの日髙くんが作った曲で、彼のひねくれロック的なセンスがよく出てる良い曲だと思います。
くるり『THE WORLD IS MINE』ーその2
CM明け。ちょっと牛乳飲んでました。これからのnoteでもちょいちょいCM挟んでいきたいので、載せてほしいバンドの人とかいれば(いるか?)DMしてください。気に入ったらタダで載せます。気に入らなくても1万円くれたら載せます(つまり、気に入ったやつだけ載せます)。それでは話を『THE WORLD IS MINE』に戻します。
8.MIND THE GAP
「ARMY」の次は、これまた彼ら特有のエキゾチックなバグパイプによるモチーフ(奇しくもバグパイプスを紹介した直後…笑)が印象的なダンスナンバー、「MIND THE GAP」。
最後部の歌詞を引用します。
佐藤征史の作詞で、これに関しては本当に深い意味なさそうな歌詞ですが、この部分だけは序盤の電車爆破に無理矢理こじつけることはできるかも?無理か。
9.水中モーター
続いては「水中モーター」。
この曲は本当にあんまり関係なさそう(一応ロードムービー的という点でこじつけることもできるか?とも少し思いましたが。冒頭シーンとか)。
まあそういう曲もありますわね。このバンドがこういう曲でブルージーなモチーフやコード進行を「使って」みせる手つきは結構好きですね。
10.男の子と女の子
お次は「男の子と女の子」。
多分人気曲だと思いますけど、正直僕はあんまり好きな曲じゃないですね。この手合いの曲は意地悪な言い方をすると「サブカル歌謡」だと思っていて、自分で作ったりはしてみたいけど(別に自分にもこれぐらい書けるとか思ってるわけではないです)、わざわざ聴かないというか。「奇跡」までいくと大好きなんですけど。あと、ドラムがすごい上手いですね。アルバム全体的にも森信行がハマってる瞬間が多いかも。くるりのドラマーというとこの後に参加するクリストファー・マグワイアがどうしても話題に挙がりがちですが、森信行もすごくいいドラマーなんですよね。
歌詞に関しては公園で遊ぶ子どもたちを見ながら書いたそうで、基本的には関係ないのかなとも思いますが、ひとつ気になる節が出てきます。
あの子どもたちの中にもまだ見ぬモンちゃんがいるかもしれないという期待ととっていいんじゃないでしょうか。
好きな曲じゃないとわかりやすくテンションが低いですね笑。いや、良い曲だとは思うんですよ。あんまり聴き返さないってだけで。
11.THANK YOU MY GIRL
さて、次です。「THANK YOU MY GIRL」。
ショートでシンプルなロックナンバーですね。「Bus To Finsbury」と似てません?毎回ごっちゃになります。「キョウトからやってきた」って言うのはどっちだっけか、みたいな。手癖なんでしょうね。
この曲は、まあ安直にモンちゃんからマリアへのラブレターってことでいいのでは?と思います。実際の2人の別れはこんなに爽やかではないですけれども。
「知らなきゃ」ってのがいいですね。普通にラブソングとしても良いですよね。
モンちゃんの行動は基本的に天邪鬼で、表面上マリアとのコミュニケーションはなべて上滑りしてました。だけど案外彼もこういうこと思ってたのかもしれませんね。自覚はないでしょうが。
12.砂の星
佳境に差し掛かってきました。最後から2番目の歌(ビョークの顔が浮かんだ人は握手)、「砂の星」。
中盤の歌詞を引用します。
これは最後の世界滅亡シーケンスかな。ヘイズ大統領の演説、そして突然の終わりを迎えることとなった世界各地の様子がモンタージュされるあのシーンが頭に浮かびました。「ザ・ワールド・イズ・ユアーズ」。「原始、人は神を創造した」。
13.PEARL RIVER
いよいよ最後の一曲、「PEARL RIVER」です。
まずは歌詞を全文引用します。
幻想的なサウンドスケープが特徴のこの曲で語られているのは、まさしく人類滅亡後、事前にロケットで打ち上げられていたモンちゃんの亡骸から生命が生まれ、新たな種が芽吹くまでのラストシーンでしょう。トシモンの「あてどなき旅」は、世界との無理心中という予期せぬ形で終わりを迎えました。あの瞬間、人類たちの「果たせない約束」が無数に消え、「涙の海」に流れていったのだと思います。あたたかかったかどうかはわかりませんけどね。
4分強あるこの曲ですが、メロディーが紡がれるのは前半の2分のみ。あとは「船を漕ぐ音」がひたすらリフレインされて終わります。もうこれは何をか言わんやですね。彼方に飛んで行ったモンちゃんの亡骸は、ノアの方舟になり得たのでしょうか。それはまさしくこれを読んで「神はあなただ」と名指しされてしまった我々が証明するべきことなのかもしれませんね。しかもこのアルバム、「13曲」で終わりますからね。
おわりにーラストの展開について
蓋を開けてみれば全曲レビューになってしまいましたが、最後に問題のラストなんかを語って総論的に締めましょうか。僕は「トシモンがやり切るためにはああ終わるしかなかった」派ですかね。「夜話」で大月隆弘も言ってましたけど、まずこの内容で一応畳んでみせたのが凄いと言うか。僕が知らないだけで、ロクに畳めなかったこの手の作品が無数にあるんでしょうし。岡田斗司夫は「最後にパーソナルな話としてまとめて見せた岩明均『寄生獣』の方が作品として上手」と言ってましたが、いやあ、それはどうでしょう。やっぱり最後は「どかん!!」といくべき作品だったんじゃないでしょうかね?トシモンが1週間で96人を殺害してる時点で、パーソナルな領域に収められる話では全くなくなっているわけで。だからこそトシの母親はあんな無惨な死に方をしてしまったわけだし。
え?あぁ、そう。もう放送時間が終わっちゃうみたいです。それでは、このへんで!まったね〜!