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医者が語るあの世のこと 矢作直樹『人は死なない』

矢作直樹氏は「東京大学大学院医学部系研究科救急医学分野教授および同医学部附属病院救急部・集中治療部部長」という、なんだかすごい経歴の持ち主。

東大病院の総合救急診療体制確立に貢献したことでも知られます。

彼が近代医学のテリトリー外にある霊性について語った衝撃作が『人は死なない』。

以前から興味はもっていましたが、今回ついに読んでみました。

著者の自伝的な内容にはじまり、超常的な現象の紹介、近代スピリチュアリズムの発展に寄与した大物科学者たちの列挙というふうに話は進んでいきます。

・医者になった理由
・患者たちの最期
・気功を体験
・科学主義という信仰
・宗教の変容
・超常現象
・霊を研究した人々の紹介
・著者の死生観まとめ

霊的な内容については、思っていたほどの威力はないです。

反証不能なレベルで霊的現象を分析・証明している本は他にいくらでもあるので、そういうのが読みたい人には本書はおすすめできなさそう。

ただ、「霊を研究した人々」の紹介がきわめて有益。

近代スピリチュリズムの大まかな流れをざっくり素描し、どのような科学者たちが研究を押し進めてきたかが解説されます。有名な本もいくつか紹介されていて、ここを起点にして探究を広げていける感じ。

なお、その後Youtubeで著者が出演しているのをたまたま見かけたのですが、そっちは内容がディープでぶっ飛びました。

あれを見ると、本書は一般向けにかなり手加減して書かれてるんだなと印象が変わります。


唯物主義とはなんだったのか?

それにしても思うのが、この世界が霊的な摂理のもとにあるというのが本当なら(たぶん本当だろうなと個人的には思ってます)、近代社会の唯物主義とはなんだったのかと。

迷信みたいに単に真実じゃないだけなら別にいいんですが、唯物論って人間にダメージを与えますよね?

たとえば「人生に意味なんてない」とか「死んだら終わり」みたいな考え方。こういうのは基本的に人を不安にし、不幸にする迷信ということになりますよね。

単に誤っているだけでなく、利益もないような思潮が、なんで力をもってしまったのでしょうか?

それを信じることで安らぎや連帯が生まれるような迷信なら、それを信じている民族がいてもなんら不自然ではないですよね。

でも唯物論の場合は自分たちにメリットがないわけです。そこが他の迷信とは異なっています。

じゃあそれがもたらした近代人の苦労や不安ってなんだったんでしょうか。単なるバグ?


そこにポジティブな意味があるとしたら、次の2つが考えられると思います

・地上に科学やテクノロジーを発展させるための触媒
・魂の筋トレのための高負荷発生装置

まず地上に科学的な文明を発展させることになんらかの意味があって、それを果たすために唯物主義が要請されたという観点。

近代的サイエンスを離陸させるためにはアクセル全開で猛スピードを出す必要があり、ちょっと行きすぎた物質主義も必要悪だったというものです。

もう一つの考え方は、魂に負荷を与えるための装置として唯物主義が機能しているというもの。

スピリチュアルな観点からすると、この世には魂の修練場としての役割があるようです。それが本当だとすると、この世が魂にとってノンストレスな楽園になってしまったら困るわけですよね。負荷がなければ筋トレできませんから。

人間の本質が霊的なものだとすると、唯物主義は人間の自然に反する不自然な思想ということになります。言いかえれば非常に負荷の高い思想。ということは、これに揉まれればそれだけ高度なトレーニングになるということでもありますよね(オーバーワークには気をつけなければいけませんが)。


唯物主義にポジティブな意味があるとすれば、それは以上の2点に集約されるんじゃないかと思います。

こう考えると、過剰なほどに唯物的な思想に偏重している人のイメージも変わってきます。

そういう人は、この地上が修練場としての機能を果たすように高負荷を維持するバランサーとしての役割を果たしている可能性があります(本人が意識しているかは別として)。この世がヌルゲーになりすぎないようにしているわけですね。

あるいは高負荷のトレーニングを自分自身に課しているのかもしれません。山に登ったり海に潜ったりするアスリートがいるように、霊的な空気の薄い環境に自らを追い込み、それに耐え抜くことで圧倒的なトレーニング経験値を得ようというような。

いずれにせよ、この世が霊的な摂理のもとにあるのなら、唯物主義にもなんらかのポジティブな役割があると思うし、そうじゃなかったら近代人の苦労は報われなさすぎで不自然だと感じるのです。


ちなみに医者があの世について考察した本では、エベン・アレグザンダーの『プルーフオブヘブン』も名著です。


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