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熱、光、音で空間の中の「自然」を感じるインスタレーション「Ethereal Cycles」

INTERSECTの1F ガレージでスタートした空間インスタレーション「Ethereal Cycles」はもうご覧になりましたか?

これまでのガレージの雰囲気からガラリと変わり、熱、光、音による幻想的な空間が広がっています。手がけたのは、インタラクティブメディア研究者・アーティストとして活動する、筧康明さん、Mikhail Mansionさん、Kuan-Ju Wuさんによる、アーティスト・コレクティブ Natura Machina。第23回文化庁メディア芸術際アート部門優秀賞受賞作品「Soundform No.1」をはじめ、熱が空気を振動させ音を発生する熱音響現象を利用した作品に取り組まれており、本展示の新作でも、熱エネルギーが音響エネルギーに変換されるときに発生する神秘的で独特な音の世界を体験することができます。

Natura Machinaの3人

「Ethereal Cycles」を形づくっているのは、グリッド状に組まれたフレームに吊られたガラスの円筒群です。このガラスの筒のなかには、電熱線が組み込まれており、この電熱線が光とともに発熱すると、周囲の空気が下部から引き込まれ、圧力の変化が音となり、空間に鳴り響きます。

長さがそれぞれに違うガラス管の中で光る幻想的な電熱線の光

作品の醍醐味は、INTERSECTで起きている動きや、気流、気温の変化など取り巻く“環境”のすべてが作品の表情に影響するところです。それぞれの電熱線はプログラムされたリズムで順次駆動され、光と音の重なりがさまざまな経路で空間内を移動していきます。それだけで完結するのではなく、朝・昼・夜といった時間の変化、その場を構成するあらゆる要因から影響を受けて変化し続けるため、予測ができず飽きることがありません。

影響するのは人の動きも同様です。皆さんがこの空間に入り、鑑賞しながら歩く(動く)ことでも気流が変わり、音階やリズムに変化を与え、どの瞬間も同一とならず常に変化し続けます。また、空間をぐるりと動きながら体験していただくことで、聞く位置による響きあう音の違いもお楽しみいただけると思います。きっと、作品を端で鑑賞するのと空間の真ん中で鑑賞するのとでは違った印象を受けると思います。

体内に響く音を体験して、パイプオルガンや汽笛、子守唄のように聞こえるという人も

整然としたなか、さまざまな影響を受けて音が流動的に変わっていく様子は、まるで“都市”を表しているよう。ビルが規則正しく続き並ぶところに、自然が関わっていくようなイメージが浮かびます、鑑賞するなかで、私たちの周りに漂う空気の存在やその質感、エネルギーの循環といった、普段は目で捉えられないものをぜひ意識してみてください。

光と音の重なりが空間内をさまざまな経路で移動していく

この展示が、私たちの周りにあるものへの意識や、そこに与える影響や逆に影響されるものなど、皆さんのそれぞれの視点で考えるきっかけになれば嬉しいです。

展示は2023年1月25日(水)まで。ぜひ直接目と耳、肌、身体全体で体感してみてください。