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withコロナ時代の生活者心理 ~”ニューノーマル”の到来で「再評価」の流れに晒される商品・サービス~

はじめまして。
インテグレートにて生活者起点で事業戦略を考えるというテーマに取り組んでいる、戦略コンサルティング部の金子と申します。

新型コロナウイルスの広まりから4か月以上が経ち、当初起こっていた「いかに企業・事業を守ってゆくか」という議論から、「新型コロナウイルスによる社会・生活の変化を見据え、企業・事業を今後どのように変えてゆくのか」という議論に移りつつあります。
我々も「生活者起点」でwithコロナ時代に、企業・企業を取り巻く環境がどう変わるのか考えてみたいと思います。

新型コロナ環境下での企業・事業アジェンダ=価値の再定義

4月7日に関東・近畿・九州圏の7都府県を対象として発令された改正新型インフルエンザ等 特別措置法に基づく「緊急事態宣言」も、つい先日5月25日で残されていた1都3県についても解除が発令されました。経済活動の平常化に向けて社会のモードが変わりつつありますが、企業においてはwithコロナの時代(=コロナと共存してゆく時代)に、何をどう見直してゆくのかについて模索が続いている状況です。
弊社でも、5月のGW明けくらいからさまざまな業態のお客様から、今回の新型コロナ環境下を経た生活者のライフスタイル・価値観の変化をどうとらえるべきか、その上で今後の事業展開、商品・サービスについて、どのように舵取りしてゆくべきか、意見交換や議論の機会を多々頂いておりますが、我々は改めて短期的な視点での「新型コロナウイルスにどう対処(避ける/防ぐ/守る)するか」だけではなく、「企業・事業の価値をどう再定義すべきか」という本質についての議論をすすめてゆくことの重要性を感じています。

“選別”・“代替”から“再評価”へ向かうパンデミック下の購買活動の判断ステップ

ではなぜ、今般に至って自社や事業の価値の見直しや再定義に迫られているのでしょうか。その理由は、今回の新型コロナウイルスの広がりを受けた生活者の購買活動の流れは、図1に記載した以下のステップをもって整理できるかと思います。

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まず1つ目のステップ(選別)として、当座の生活に要るか要らないか、それが買えるか買えないかの判断で絞込みを行う、特に不要不急の考え方に基づいた選別が発生します。
5月8日付の東洋経済オンライン『コロナで「売れた」「売れなくなった」商品TOP30』(https://toyokeizai.net/articles/-/349029)の記事中でも触れられていましたが、売れなくなった商品の多くは、1位の酔い止め薬をはじめとして、2位:口紅、3位:日焼け止め、5位:強心剤、7位:ほほべに、8位:ファンデーション、9位:コールド&マッサージ、10位:おしろい、と、外出時に必要となる化粧品、医薬品関連が中心でした。(アメリカでは、衣料品ECで、トップスが予想以上に売れた一方、ボトムスは全く売れなくなったというレポートがありました。どうやらZoom等のオンライン会議が定着したため、トップスは「必要緊急」、ボトムスは「不要不急」となったようです。)

この選別のステップを経て、2つ目のステップ(代替)にて、他の物で代替できるか、場合によっては妥協・諦めといった判断を行います。これは、公共交通機関に乗らないように自転車を買うという「手段」の代替だけでなく、外出して遊ぶ・余暇を楽しむことができなくなったため、「Amazon Prime」や「Netflix」で映画・ドラマを見まくった、「Amazon」でここぞとばかりに本を買い込んだというようなことも、「機会」の代替ということができるでしょう。

そして、この一連のステップにおいての一番大きなインパクトは、最後に「再評価」のステップが発生したことです。
新型コロナウイルスによって物理的、心情的にも距離を置くことが半ば強制的に発生したため、「これは本当に必要なのだろうか」「これって本当に役に立ったっけ」と振り返る意義を再度考え直す時間=再評価のタイミングが、生活者に発生しました。皆様の中にもリモートワークの定着により、「満員電車に揺られてまで会社に行くことの意味ってなんだっけ」と思ったり、「Zoom等のWeb会議ってラフなブレストには合わないし、良し悪しがあるよな」と、今までの仕事の仕方を振り返りながら、「リモートとリアルを組み合わせるともっと効率化できるよな」とか「自立は求められるけど働きやすくなるな」といった新しい価値観に気付いた方も多いと思います。同様の形で、これまで当たり前のように購入・享受していたものに何らかの意義を見出す動きは今後も加速してゆくことと思われます。

商品・サービスは生活者の「再評価」に晒される

この「再評価」に直面するまでの流れは、業界分類ごとにスピードや程度の違いはあれど、多くの業界においてあてはまります。
図2では、各業種によるパンデミックの影響度合いを緊急度(不要不急/緊急・生活必需)と公私レベル(個人・家族完結/社会的・外部接触)の2軸4象限で整理しています。
このうち、エリア1の比較的生活必需かつパーソナルな消費領域では、購買量の減少は大きくありませんが、一方で3食を家で作る・食べるうえでの利便性や、新型コロナウイルス・感染症対策として食による予防意識が高まってくる等、モノを買う・摂る意義が変わってきています。エリア2の様な不要不急領域においても、おうち時間をいかに快適に楽しく過ごすかという観点で、今まで以上にその価値を見直されているのではないでしょうか。

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ここで重要なのは、特に今回生活者が「3密」「不要不急」で、距離を置かなくならざるを得なくなった業態(エリア3、4)ほど、この生活者の「再評価」に対応して、企業・事業のミッションを再定義し、提供する価値(商品・サービス)をそれに合ったものに再編してゆく必要があるということです。
例えば、音楽産業であれば、ライブ・フェス等のリアルな場での一期一会的な感動や一体感、スポーツ産業であれば、応援する事での帰属意識醸成、非日常空間であるスタジアムでのゲーム以外の要素も含めたテーマパーク的な楽しさ等、人が集まる場での体験というものがこれまでの意義でした。しかし少なくとも当面は、人が集まる事での熱狂、一体感を、その価値のベースとして売ってゆくことは難しくなるため、「人々にとってスポーツ・音楽が果たす役割は何か」、「スポーツ・音楽が社会に対し何ができるか」に立ち返りながら、新しい価値を創り提示してゆく必要があります。3月以降、ミュージシャンやスポーツ選手が、動画にてライブコンテンツを公開したり、社会啓発的なメッセージを発信をしながら、社会とのより良い関係性を模索しているのもそのような流れの一環と言えるでしょう。

図3では、選別から再評価に至る業種ごとの選別状況の差異を整理しています。

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このような根底にある価値を見直すのは、必ずしもエリア3、4の様な、「3密」「不要不急」により選別を余儀なくされたカテゴリだけではありません。
皆様も今回の巣ごもり生活を通じて、「家事って結構めんどくさいな」、「日頃からの健康管理や疾病予防って大事だよな」、「家の中をもっと快適にしたいな」「体を動かすって大事だな」、「スーツを着る意味って何だろう」、「友達や気の置けない仲間と食事に行くってやっぱり楽しいな」、「音楽、映画、本やマンガってやっぱり面白いな」、「ブランド品って欲しくなくなっちゃったな」等、日常生活のあらゆるモノ・コトの意義を「再定義」されているかと思います。この流れはある程度新型コロナの拡大が落ち着いたとしても変わることはありません。
企業は、その提供する商品・サービスの生活者にとっての意義を再設定し、具現化してゆく必要が出てきました。いちいち根底に還って考えざる得なくなったという点で、これまでの事業の延長として「惰性の商品・サービス開発」に甘んじることが出来なくなったといえます。

withコロナ時代は生活者による商品・サービスの「再評価」に企業が直面し、真摯に向き合うことが求められる時代なのです。


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金子 岳史(かねこ たかし)
「カスタマーセントリック視点」で事業の価値をどう作ってゆくかというテーマを日々模索しながら、マーケティング起点での事業戦略策定のお手伝いをしています。インテグレート戦略コンサルティング部マネージャー。

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