23歳で手にした、心の安定と幸せ。ミスiDの写真家・カジツマリに聞く、生活や結婚の話
写真家のカジツマリ(@kinounoban5han)さん。ミスiD2021で写真家賞を受賞。現在23歳の彼女は、3年前に香川県から上京し、夫と2人で暮らしている。
マリさんと話すとそのギャップに驚く。一見すると浮世離れした雰囲気があるが、実際はとても生活を大事にしていることがわかる。その意外性に興味を惹かれた。
カジツマリさんの日々の暮らしや結婚生活、そして創作について話を聞いた。
結婚、早起き、朝のルーティン。いつの間にか「死にたい」と思わなくなった
──マリさんって一見、生活を感じさせない雰囲気があるように思えるんですが、実は誰よりも生活を大事にしてますよね。23歳で結婚されていて、すごく落ち着いていて。普段どんな生活を送っているのか気になります。
ここ1年くらいで、生活リズムを夜型から朝型に変えたんです。早寝早起きをして、すごく健康的な生活を送ってます。朝のルーティンも決めていて。朝は5時半から8時のあいだに起きてます。起きたら白湯を飲んで、10分くらい散歩します。
朝焼けを見ると、その日の調子が良いんです。太陽を身体に取り込むと全然違います。そのあと、朝ごはん食べて、洗濯をしたり、仕事に行ったりしています。
夜は日が落ちたら電気を消して、間接照明だけで暮らすようにしてて。そうすると、身体がちゃんと夜だと思ってくれるんですよ。これまで夜はなかなか眠れなかったんですけど、今ではぐっすり眠れるようになりました。そのおかげで、最近は自律神経がすごく整ってるんです。
──とても健康的ですね。朝型の生活に変えたのはなぜなんでしょう?
昨年の年始に立てた目標が「健康に生きる」だったんです。実は1年前まで、不規則な生活を送っていて、メンタルもぐちゃぐちゃでした。毎月、「死にたい」と思うことがあったくらい。
結婚する前はもっとひどくて。めちゃくちゃお酒も飲んでたし、寝れないから飲むし、飲んでも寝れない。酒を飲んでぶっ倒れたこともある。昔はめちゃくちゃでした。
結婚してからもうすぐ2年なんですが、その前の同棲期間含めて、夫と一緒になってから落ち着いた部分はかなりあります。でも、結婚後も明け方まで起きてたし、部屋も汚かったし、料理も全然しなかったりで。
そしたら夫から、YouTubeで最強の朝ルーティーンみたいな動画が送られてきて。それを見て早起きしてみようと思ってやってみたら、実際に調子が良くなりました。それがここ1年。つい最近、夫から「つらい感じがなくなったよね」と言われました。
──23歳でそこまで心の安定を手にしているのは、すごいことだと思います。
でも、もっと早くできていればいろいろ変わっていたのかもなあと思う。物事のやる気や意欲が全然違うんですよ。死にたいとか思っていると、何もやりたくなくなっちゃう。
おばあちゃんになっても、日常に愛を感じて生きていたい
──マリさんにとって、やはり結婚は大きかったんだなと思います。夫はどういう存在なんでしょうか?
自分の半分ですね。だいぶ言わなくてもわかる関係になってきてます。でも、今でも付き合いたてかのような感じなんです。もう出会ってから4年弱なんですけど。
毎日、「行ってきます」「愛してるよ」みたいなことを言い合っているくらい。常に愛を感じて生きています。それこそ、夫が浴びるように愛をくれるので。
──4年一緒にいて、その関係性は素敵ですね。結婚生活をうまく続けるコツってなんでしょうか?
相手をいたわることが大事だなと思います。疲れてて、お互いイライラしちゃうときってあるじゃないですか。向こうがそうなってるとき、こっちもイライラするんじゃなくて、疲れてるんだなと思って、いたわるようにしてます。マッサージをしてあげたり。難しいですけどね。
最初はいろんなことで揉めてました。たとえば、片付ける、片付けないとかで。
でも、人と暮らすって価値観のすり合わせじゃないですか。だから、譲るところは譲ったり、何時に片付けるとかの取り決めをしたり。そういうことを重ねることで、うまくいくようになりました。
──この先はどんな家族にしていきたいですか?
ほんとに、このままのふたりで、おばあちゃんおじいちゃんになれたらいいなと思います。神社とかで、おじいちゃんがおばちゃんの写真撮ってるみたいな光景を見かけることあるじゃないですか。あんな感じ。
おばあちゃんおじいちゃんになっても、ふたりで散歩したり、山登っていられたらいいなと思ってます。
「幸せなときに撮る写真が一番良い」と思えるようになった
──マリさんは写真家として活動しています。メンタルが不安定だった昔と、穏やかな今とでは撮る写真に変化がありましたか?
変わりましたね。昔はネガティブなときじゃないと、写真が撮れませんでした。幸せになると何も撮れなかったんです。でも今は、幸せなときに撮る写真が一番良くなればいい、と思うようになりました。
──どんな写真を撮るようになったんですか?
これまでは作品撮りで人を撮ることが多かったんですが、最近は日常の延長でスナップを撮ることが増えました。夫と一緒に山に登るようになったんですが、そこで草や植物の写真を撮ったり、家の周りを撮ったりしてます。
このあいだは朝焼けを撮りました。いままで朝焼けって寝ないで見るものだと思ってました(笑)。
今年はじめて落葉がきれいだなあと思ったんです。葉っぱが落ちるのきれいすぎて、感動しました。そんな視点、これまで持ってなかったです。
──すでに達観すら感じます……。
ほんとに心がおばあちゃんみたいになってるのかも。昔は「日常の風景なんかつまんねえ」と思ってたのに(笑)。日常を撮りたいなんて全然思わなかった。でも今は「そういうのじゃないよね」と思います。
写真が日常の一部になってきたと感じてます。写真を撮ることが生活に馴染んできたんです。
──そう思えるようになったのは、健康的な生活をするようになってから?
そうですね、心が穏やかになるにつれて、徐々に撮りたい写真も変わっていきました。それに、今の家に引っ越してから、自然と触れ合うことが多くなったんです。家から林が見えるようなところなので。
ある意味、丸くなってしまったってことなのかもしれません。昔だったら、丸くなることは良くないことだと思ってました。でもそうじゃないんじゃないか、と思えるようになって。この1年で、心身ともに健康になるにつれて、考えも変わってきました。
──幸せと創作を両立させようとしているんですね。
それができないなら、創作なんてやらなくていいと思ってます。「幸せだと撮れないなんて、甘えたこと言ってんじゃねえよ」って過去に自分に言いたい。それで撮れなくなるくらいならやめちまえと思う。幸せだからできる創作ってあるはずなんです。
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