猟師になると肉嫌いになる?
肉の解禁
夫が猟師として猪をゲットしてから、我が家の食卓には、猪肉料理が並ぶようになった。夫婦二人で、1頭あたり約2~3か月分の肉は、あの手この手でさまざまな料理になり、消費されていった。
そして、いよいよ猪肉から解放される時が来た。
猪肉に飽きが生じてきた頃だった。これまでは牛肉、豚肉、鶏肉を使う事が出来ていたので、3種類の肉を楽しめたのだが、猪肉が来てからは、他の肉を食べることに、後ろめたさを感じるので、猪しばりが続いていたのだ。
初めての解禁肉に選んだのは、「豚肉」だ。猪と豚は似ていると思っていたのだが、久しぶりに見た豚肉は、猪肉と比べると白っぽく、脂肪の多さが印象的だった。こんなに違うんだなーと改めて思いながら、生姜焼きにしていった。
豚と猪のニオイの違い
久しぶりの豚肉に心を躍らせていたのだが、実際に口にすると気分が落ち込んだ。これまでは、豚肉は食欲をそそる良い香りに感じていたが、猪肉に慣れてしまうと「豚臭い」と思った。猪肉は、野生的なワイルドな味のイメージが強いが、実際はクセがない事が多い。
私たちが捕まえた猪は、発情期の雄だったので、加熱するとムスクの香りがするため、ひたすら下処理に時間をかけて調理していた。だから、無臭に近い肉を食べていた事もあり、豚の強烈な香りが生姜を超えてやってきた。
そして、猪肉を食べた時に、生きていた頃を想像するクセが付いてしまったのか、スーパーの豚肉は口に入れるたび、養豚場が浮かんだ。
牛肉の強烈なニオイ
豚肉が微妙になってしまったので、牛肉をウキウキで買った。ウキウキで自分で購入する前、国産牛を実家で食べたのだが、実は微妙な味だと感じていた。しかし、これはよく実家で起きる現象で、調理法の問題だと思い込んでいた。
そのため、我々がいつも好きで買っていたアンガス牛の焼肉を食べた。これが、我々のご馳走メニューだったからだ。ところが口にして絶望した。
「う、ウシくせぇ!!」
牛臭いだなんて・・・。これまで牛肉を食べると感じていた芳醇な香りが、なんとも牛臭いったらありゃしないのである。ミルク臭さの中に、牧草のう〇こが浮かぶのだ。そのため、スパイスをしこたま振りかけて食べるしかなかった。
鶏肉最強伝説
豚と牛にクセを感じるようになってから、我が家では鶏肉の出番が増えた。鶏肉は、不思議とニオイを感じにくく、美味しく食べることが出来たからだ。それから、たまに売っている鴨肉も美味しかったので、見かけると欲するようになった。
しかしながら、鳥猟をしたいと考えていた我々は、網猟の免許取得を考えていたのだが、網猟で自分たちで鳥を捕まえた場合、また市販の鶏肉が食べられなくなのでは?という不安が浮かんだ。そのため、一旦網猟は見送ることにした。
完全自給自足を目指しているわけではないので、市販品に頼れなくなったら大変なのである。
猟師が旨いと思う肉
市販の肉は、鶏肉が一番旨い!という状況に陥った我が家だが、実は豚や牛でも食べられるケースがある事に気づいた。市販のスーパーで買う肉は、鮮度も問題があるせいかニオイを感じやすいのだが、地方の肉を特産としている地域の専門店の商品は平気だった。
だが、我が家から片道3時間である。簡単に手に入る距離ではない。
そのため、豚肉と牛肉は、とっておきの本当の意味でのご馳走になってしまった。
ちなみに加工肉に至っては、某低価格ウインナーを好んでいたはずだが、めちゃくちゃ添加物の味に感じ、もう二度と買わないと思った。
狩猟を通して、基本的には鶏肉しか口に出来なくなってしまった我々。早く次の猟期が来てほしい。そして、次は鹿肉をゲットしたい。アナグマってどんな味かな?キョン捕まえたい。そんな事ばかりを言っては、バリエーションを増やしたいと心底思うのであった。