絵画と物語
「ジヴェルニーの食卓 / 原田マハ」読了
或る画家の隣で、白紙に筆を置いた瞬間から、作品が生み出されるまでの工程を見せてもらったことがある。
まるでそこに見えない下書きが描かれているかのように、何の迷いもなく、何の躊躇いもなく、筆を動かす彼は、まるで本当に魔法使いのようだった。
絶対に歪にならないよう、全てが計算された豪奢な絵。
そのときまであまり美術に興味のなかった私は、それを見た瞬間、幼いながらも「絵を描く」という行為に、非常に強く、引き寄せられた。
そこから今までに、幾つかの日本の美術館を訪ねた。
そう言えども小学生の話なので、あまり覚えてない。
しかしその中で、幼い私に強烈な印象を残した絵がある。
それが、この本にも出てくる「エトワール(踊りの花形)」。当時バレエを習っていたこともあって、幼いながらに強く惹かれた。
いつかオルセー美術館に行って本物を見たいな。
大好きな絵だったので、それに関するお話があることに気付いた時は本当に本当に嬉しかった。
この絵の時代背景や詳細は知っていたが、それを描くドガの心情、そしてドガの作品「14歳の小さな踊り子」はお恥ずかしながら全く知らなかったので、本当に読んで良かった…
この絵では、中心の少女以外、後ろのパトロンもバレリーナも、誰も「細かい顔」を持っていない。スポットライトを浴びた少女「ひとり」だけが、私達見る側に映し出されている。
そしてこの少女の表情、本当に強く惹かれる。
中心の少女の、その表情が、私には読めなかった。この子、どういう気持ちで踊っているんだろう、と思うのだが、全く表情が読めない。それで、見る度にとても不思議な気持ちになる。
ドガの作品全てに通ずる「孤独」「寂寥」を、この作品には一際強く感じるような気がする。
エトワールが好きすぎて読書感想文〜と言いながらこの話しかしてなくて申し訳ない…四篇とも、まるで絵画のように美しかった。
四章目「ジヴェルニーの食卓」で、
ブランシュの「私、太陽の光を浴びるのが、何よりも好きなんです」という言葉に、モネが「まるでダリアの花の独り言のようだね」と返したのが本当に本当に好きだった。
ところで、この本に触発されて祖父に美術館の話をねだったら、見たことないくらい凄い勢いで話し始めて驚いた。あんなに興奮して話す祖父は初めて見た。夕食のワインの加減もあったのかも。
1日じゃ見きれないほどのルーブル美術館、本当に憧れる。
いいなぁ、ヨーロッパ行きたい。