8月の終わり、感傷に浸るビール
毎年8月の終わりが近づくと、切なくなる。
社会人生活の方が圧倒的に長くなった今でも、「夏休みが終わってしまう」という子ども時代の感傷から逃れられないのである。
大人になってから「夏が去っていく」という感傷(というか言い訳)で思い立つのは、「ビールを飲みに行こう」ということである。
大人の、特に酒飲みの夏と言えば、やはり「ビールに枝豆」である。それ自体は一年中楽しめるのだが、その組み合わせが似合うのは、断然「夏」なのである(個人の感想)。
「夏の終わりとビール」で思い出すのは、マンガ『クッキングパパ』の、「主人公 荒岩さんの部下の田中君が、夏の終わりの閑散としたビアガーデンで独り感傷に耽る」回だ。
田中君はその帰り、飛んでいるトンボを見ながら、こう思うのである。
田中君と同じような感傷を抱えた私は、8月最後の週末、ビアガーデンではなくビアホールへ出向き、「生ビールに枝豆」(見出し画像がそれ)で8月に別れを告げた。
「ビアホールライオン 銀座7丁目」は、全国にある「銀座ライオン」の本店であり、現存する日本最古のビアホールである。
ビアホールライオン 銀座7丁目
居酒屋探訪家の太田和彦氏に紹介していただく。
ビール造りの工程
ビールはどのように作られているのか?
2017年頃に工場見学に行ったサントリーでもらった「ザ・プレミアム・モルツ」のパンフレットを参照する(サッポロビールの資料が手元にないので)。
ビール製造の工程は、以下のとおり。
ビールの原料である二条大麦を発芽させた麦芽に水を加え適度な温度にし、麦芽中のでんぷんを糖に変えたあと、もろみをろ過して「一番麦汁」を取り出す。
通常は、もう一度ろ過して「二番麦汁」を取り出し、それを混ぜるのだが、二番麦汁を使わないビールがある。「キリンビール一番搾り」である。
その後ホップを加え煮沸するが、各社、ホップには拘りがある。
「ザ・プレミアム・モルツ」では、「煮沸開始直後にアロマホップを加え、仕上げにファインアロマホップを加える」「アロマリッチホッピング製法」で、上品で華やかな香りのビールに仕上げている。
キリンビールでは、仙台ビール工場で生産している「一番搾り とれたてホップ生ビール」に、「岩手県遠野産の凍結ホップ」を使用している。
ビールの「発酵」
次に「麦汁に、最適な状態の酵母を加え低温で発酵」させていく。
この発酵、小倉ヒラク著『発酵文化人類学』(角川文庫。2020年)によると…
化学式で表すとこうなるらしい(下付き文字の出し方がわからないので同じ大きさで書きます)。
発酵により、約7日ほどで麦汁はアルコール約5%の「若ビール」になる。
「若ビール」を1~2ヶ月ほど熟成させ、ろ過した後、缶や樽に詰められて出荷され、今私の喉を潤している。
一杯目のビールを飲み干してしまった。枝豆はまだ残っている。
次のビールを、こう注文してみたい。
チンカチンカの冷っこいルービー
なんと魅惑的な言葉だろう。これほど真夏のビールを的確に表現した言葉が他にあるだろうか?
だが、この伝統あるビアホールで、そんなことを言う勇気はない。
「エビスビールの中ジョッキ」と普通に注文し、それを美味しく飲み干しお店を出た。
時間は18時前。すでに陽は傾き、薄暗くなってきている。少し前まで、この時間はまだまだ明るかったし暑かったのに……
また感傷的な気分になってしまった……
しかし、まだ夕方だ。もう一軒行こう。
入った「夢酒みずき」というお店の女性店員さんに「夏の終わりを感じる時」を聞いてみた。
「24時間テレビを見ると、"夏休みが終わるんだなぁ"と切なくなります」
その気持ち、とてもよくわかる。