2024年11月2日~11月5日 酒。読書。観劇。それだけ ~東京国際映画祭2024~
私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。
たとえば、2024年11月2日から11月5日にかけて……
2024年11月2日
朝から雨。その中を映画館に向かった。
道中、敷村良子著『がんばっていきまっしょい』(幻冬舎文庫。単行本はマガジンハウスより1996年刊)を数十年ぶりに読み返していた。
10:00 映画『港に灯がともる』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)@TOHOシネマズ日比谷
富田望生さんの演技に圧倒された。
かなり重い内容だったが、最後は希望で終わったので少しホッとして映画館を出た。
17:00 映画『Underground』(TIFF2024 Nippon Cinema Now)@丸の内ピカデリー
冒頭、身体に振動が来るほどの重低音に撃ち抜かれ、不思議な映像とともに音楽も堪能し、小田香監督と「影」を演じた吉開菜央さんが登壇してのティーチインも興味深く聞いて、映画館を出た。
雨の中を歩き、有楽町の駅の前から地下道に入り、東京国際フォーラムの地下にある「酒蔵レストラン宝」に入った。
20:15 酒蔵レストラン宝
普段は女性を含め多くのホールスタッフがいるこのお店も、土曜日は店長を含めて男性スタッフ3人での「男祭り」状態となる。
少人数のスタッフなのは、基本的にこの辺りがオフィス街だからだ。
とはいえ、この時間、主に女性客でテーブル席はほぼ埋まっていて、スタッフたちは大忙し。とりあえず、生ビールを飲みながら、ホッと一息。
注文を取りに来た店長に、「忙しそうだね。"鍋"難しい?」と聞いてみたら、軽く「大丈夫ですよ~」。ということで、いつものように"鍋"を注文。
”鍋"が出来るまで、"鰻の茶碗蒸し"をいただく。
その頃には既に日本酒に切り替えていた。
ようやく出来た"鍋"をつつきながら、次のお酒。
「そろそろラストオーダーですが……」と言う店長の言葉を機にお店を出て、そのまま帰宅。
2024年11月4日
10:00 山崎バニラの活弁小絵巻 2024(TIFF2024 ユース)@TOHOシネマズ シャンテ
「活弁」初体験。
山崎バニラさんも初めて拝見したのだが、最初、所謂「アニメ声」に驚いた。しかし、最近のテレビアニメなどは「アニメ声優」が担っていて私もそれに慣れているからか、いざ映画が始まってみると、その「アニメ声」がすんなり入って来た。
ドタバタのスラップスティック・コメディーに子どもも大人も大笑い。
TIFFで彼女の「活弁小絵巻」が上演されるのは7回目ということで、毎回の恒例演目のようだ。もし来年も上演されるのなら、是非参加したいと思った。
満足して映画館を出ると、ミッドタウン日比谷前の「日比谷ステップ広場」に設けられた大きなディスプレイで、映画『スタンド・バイ・ミー』(スティーブン・キング原作、ロブ・ライナー監督、1987年日本公開)が無料上映されていた。
映画はちょうど中盤に差し掛かったところで、ゴーディが「お前が死ねばよかった」と責められる悪夢から覚めるシーンだった。
恐らく21世紀になって初めて見返す映画だったが、それでも最後に泣いてしまうことはわかっていたし、だから、こんな休日の昼間に人が多い日比谷のど真ん中で50歳を超えたオヤジが一人泣いているというのはとても恥ずかしいので、通り過ぎようと思ったのだが、クリス役のリバー・フェニックスの顔に見とれているうちに、結局最後まで観てしまった。
何というか、真っ直ぐなクリスと対比されるエースの、生きることにも死ぬことにも苛立ちを覚えるという焦燥感にたまらない切なさを感じたのだった(こういう観方は変だろうか?)。
観終わった後、涙目なのを隠すために俯き、速足で駅に向かい、地下鉄に乗った。目指すは新宿三丁目。
12:55 劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』@新宿ピカデリー
拙稿にも書いたが、実写版(磯村一路監督、1998年)で、劇中の女性コーチのセリフが大好きで、それは『今日のあんたら好きよ』と言うときの、役を演じる中嶋朋子さんのセリフ回しが素晴らしいからだ。
で、これも拙稿に書いたが、実写版は『「"かつて"青春を過ごした自身の"今"を肯定している」と同時に、「その渦中にいる若者たちの(努力・苦悩を含めた)青春を肯定している」』のだが、それは原作も同じで、『読めばわかるが、かつてのOBたちがボート部のために尽力することで活気を取り戻す話でもあることからも明らか』なのである。
アニメ版は、「ザ・青春物語」だった。
満足した気分のまま、また日比谷に戻る。
20:20 映画『サンセット・サンライズ』(TIFF2024 ガラ・セレクション)@TOHOシネマズ日比谷
映画が終わると、22時半を超えていた。3連休も終わり、明日からまた仕事だ。ということで、真っ直ぐ帰宅。
2024年11月5日
終業のチャイムが鳴ると同時に会社を出て、急いで有楽町へ向かう。
18:00 映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(TIFF2024 コンペティション)@ヒューマントラストシネマ有楽町
来年4月公開のこの映画、展開に色々と仕掛けが施されている。
だから、上映後映画館を出たところで、スタッフの方が「ネタバレに配慮願います」といったビラを配っていた。
映画館から徒歩約10分。地下鉄有楽町線1駅分歩いて京橋駅に隣接したビルの地下にある「築地十干 京橋店」に入った。
20:30 築地十干 京橋店
「今日は誰も来ないですよ」
3連休が終わったばかりなのに店内は満卓状態。
なのに「今日は誰も来ない」というのは、毎週金曜日にたむろしている常連さんたちのこと。
いつものように生ビールを注文。
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』のシーンを思い出しながら飲むビールは、いつもより苦い気がした(なんて、安い文学崩れっぽい表現だろう……)。
11月になってようやく寒くなって来た気がする。ということで、今年も季節限定のおでんがメニューに登場。
おでんには日本酒が合う(といっても、私はいつでもどこでも日本酒だ)。
映画のシーンを思い出していて、ふと、店員さんに聞いてみたくなった。
「泣きたいときに合う日本酒は?」
「え、いきなり何ですか!?」
と驚かれつつ出されたお酒は……
「ちょっと甘めですが、しょっぱい涙と合わされば、いい味になりますよ」「何を言ってるんだ!?」と思ったが、呑めば確かにそんな感じ。
少ししょっぱかった映画は、後味しっとりの物語だった。
そしてその思い出を「信濃鶴」がまろやかなものにしてくれた(何を言ってるんだ!?」
TIFF 5作品+公開中の映画1作品、どれも素敵な映画で、満足した。そして、美味しいお酒によって、その満足感が倍増した。
いい気分で帰宅。