innov. note #13 製作の「日々、」【コンテクストデザインの実践】
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innov.の耕平です!
今回のinnov. noteでは、現在クラウドファンディング実施中の「日々、」に込められた設計思想「コンテクストデザイン」について、お話しさせていただきます!めっちゃ「ネタバレ」です!笑
innov.初となるプロダクト【送れるカレンダー「日々、」】のクラウドファンディングは2020年3月31日までとなっております!ご支援ご協力いただけますと幸いです。
コンテクストデザインとは
「コンテクストデザイン」とは、僕を含めinnov.が尊敬するデザイン集団Takramの渡邊康太郎さんが提唱する、新しいデザイン思想のことです。
渡邊さんのノートから引用させていただくと、
コンテクストデザインは、完成したものの使用による意図通りの価値提供を目的としない。むしろ未完成のものの使用によって、意図した価値提供を超え、デザイナーが気づきもしない先にものがたりを波及させることを目的とする。
(~中略~)
コンテクストデザインとは、一人ひとりの小さな「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みを指す。換言するならば、読み手の主体的な関わりとそれによる多義的な解釈の表出を、書き手が意図した創作活動だ。
このように、コンテクストデザインは、従来の「特定のターゲットユーザに」「作り手が意図した使い方で」「意図した価値を提供する」という従来のデザインとは一線を画すデザイン思想であると、僕は解釈しています。
Takram渡邊さんのイベントに行きまくる
ひょんなことからコンテクストデザインという言葉を知り、僕が「日々、」でやりたいことと近いと思ったので、もっと勉強したいと思いました。
そこで、Takram渡邊さんがコンテクストデザインに関して語るイベントに行きまくりました。
・2019年10月27日「Takram 渡邉康太郎 at 森岡書店」
・2019年12月17日「Takramのプロトタイプ/デザインプロセス ─ FLORIOGRAPHY3年間の試作一挙公開」
・2020年2月7日「渡邉康太郎×嶋浩一郎「コンテクストデザインとは何か」
半分ストーカーのように渡邊さんの話を何度も聞きに行き、何度も質問をさせていただき、また、書籍「コンテクストデザイン」を何度も読み直し、自分の中でコンテクストデザインの解釈を醸成しました。
特に、2019年12月17日「Takramのプロトタイプ/デザインプロセス ─ FLORIOGRAPHY3年間の試作一挙公開」は、渡邊さんがコンテクストデザインを意識して設計したFLORIOGRAPHYの製作過程と秘められた工夫などを知ることが出来、すごくためになりました。(渡邊さんはじめ、Takramのみなさん本当にありがとうございます)
innov.が作っているプロダクト「日々、」の中にも、コンテクストデザインの思想を取り入れられるように、講演会や書籍での学びはinnov. にも共有されています。
コンテクストデザインの「解釈」
現在進行形で進化/変化するコンテクストデザイン。「デザイン」という言葉が多様な解釈を持つように、「コンテクストデザイン」も様々な解釈が可能であると思います。
現時点で僕は、コンテクストデザインとは、
「未完成」をデザインすること。
だと、解釈しています。
コンテクストデザインを象徴するキーワードとして、
「解釈」「誤読」「余白」「境界線」「補助線」の5つが挙げられると考えています。
コンテクストデザインの思想によるプロダクトは、
使い手が独自の「解釈」(時には「誤読」と呼べるほど、作り手側の意図から逸脱した「解釈」)を促し、かつ、許容する「余白」を持つ。
そして、使い手による自由な「解釈」と「誤読」を許容する「余白」を持つからこそ、作り手と使い手の間にある「境界線」を曖昧なものにすることが出来る。そして、それらを促進する「補助線」が巧みに散りばめられている。
コンテクストデザインとは、
使い手に「解釈」と「誤読」を促し、使い手が「境界線」を超えて作り手になる、「余白」と「補助線」を丁寧に設計すること。
つまり、本章冒頭で述べたコンテクストデザインの解釈を噛み砕くと、
使い手による十人十色の多様な完成を想定した未完成をデザインすること。
となります。
また、
コンテクストデザインにより開発されたプロダクトは、
通常のデザイン思想により作られたプロダクトと異なり、
使い手1人1人が「解釈」「誤読」という名の「想像力」と「創造力」を発揮することが許容・促進されるので、使い手が「私のプロダクト」と感じることが多いとも、僕は考えています。
「日々、」における「コンテクストデザインの実践」
innov.が開発している【送れるカレンダー「日々、」】にも、まだまだ未熟ですが、コンテクストデザインに基づく工夫を練り込んでみました。
※【送れるカレンダー「日々、」】って何?と気になった方は、こちらのページを是非見てみて下さい!2020年3月31日までクラウドファンディングを実施しています。
「日々、」のデザインは、使い方は強制せず、「日々、」を綴る人それぞれが、自分の思うがままに書けるように、自由度高く作っています。
カレンダーに文字を書きたい人、絵を描きたい人、シールを貼りたい人、色を塗りたい人・・・使い手一人一人の多様な使い方を許容するために、不要な線は出来るだけ消して、自由度高く書き込めるデザインにしました。
下の写真は、僕が一番最初のプロトタイプで作成したものですが、完成形(上)は、初期プロトタイプ(下)から、どれだけ「引き算」(≒「余白」の創出)されているか一目瞭然だと思います。(innov.での議論を通じて、罫線も色も、個人的に好きな旧暦の記載すら、引き算されてしまいました・・・)
「日々、」のロゴも、出来るだけシンプルにしてあります。
「大切な人とのあたたかい繋がりを感じられるように」という想いを込めて、「つなぐ」から糸を連想し、”日常を写すカレンダー”=12ヶ月を表すために「日」「々、」「HIBI」をそれぞれ12本の糸で描きました。
また、プロダクト名が「日々」ではなく「日々、」となっているのは、「使い手1人1人が、素直に自分の日々を語り始められますように」という願いも込めています。
付箋シールは、使い手1人1人が、特に思い入れのある日々について、しっかり綴れるスペースを取るため補助線となっています。
使い手1人1人が自分好みの付箋シールを見つけられるように、丸っこい吹き出し、角ばった吹き出し、大きい吹き出し、小さい吹き出しなど、様々な形を用意しました。
まだまだ未熟ですが、自分たちなりのコンテクストデザインの実践を通じて、【innov.の作った「日々、」】が、使い手みなさん1人1人にとって【私の「日々、」】になれることを願っています。
これからもinnov.は、人々の感性に着目した人間中心デザインで、社会の「なんか、いいな」「面白い!」「心地いい」の総量を増やすモノゴト作りを行っていきます。
ご支援ご協力、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。
innov.
小山耕平