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最初の上司が新入社員に与えるべきもの

※この放送は音声でも楽しめます。

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冬の雰囲気はエモい感情を擽るのか。

大阪に向かう新幹線で急に思い出してしまった。

1年目の冬、新幹線で号泣してしまったことを。

もう12年も前の話だ。
そろそろ言語化してもいいのかもしれない。

勝村くん程のハズレくじ引いたことないわ

満面の笑顔で僕にそう言い放つ。
それが彼女の口癖だった。

新卒で入社した会社の最初の上司。

30歳半ばの女性。
キャリアウーマンを絵に書いたような人。
天真爛漫でエネルギーに満ちあふれていて、誰からも愛されている人。
誰よりも早く颯爽と退社するのに売れている人。

思い返せば、近いようで遠い存在だった。
そんな素敵な彼女に、新卒の僕はそう言わせる素養は十分であった。

安定的に週半分は遅刻。
業務中にいびきをかいて寝る。
口笛吹きながらご機嫌に仕事。
大声で下ネタ連呼。

改めて言語化すると本当にヤバい新人だな。。。苦笑
ただ反面スタートダッシュは好調で、結果は出していた。

他チームの先輩からはチヤホヤされて、表彰されたりもして、いい気分で社会人生活をスタートしていた。

一度も褒められなかった

当時の自分は就職したことに満足して、この会社を選んだ本質を見失っていた。

そんな中訪れたリーマンショックにより仕事環境は劣悪になり、辛いことだらけの日々に働く意義が分からなくなっていた。

それでも日々頑張らないといけない。
自然と上司に褒められたくて働くようになっていた。

元が頭がいいタイプではないので、その程度の動機でも結構頑張れた。
1年目の結果なんて労働量に基本的には比例するので、アホほど働いたら結果も出た。

ただその上司は、結果を告げても決まってこんな感じだった。

新人ロープレ大会で全国1位になった時は、

「ロープレはロープレ以上でも以下でもないねん。喜ぶ暇あればテレアポしてお客さんとこ行って来い。」

3ヶ月新規開拓100件目標は全国で自分だけが達成したが、

「私が教えとるんやから当たり前やろ。逆に100件で満足したん?」

初成約は誰よりも早かったが

「そのサービスレベルで金貰ってよく喜べるんな、あんた。」

結局1回も褒めてくれなかった。

なんでだよ。
こんなに頑張ってんじゃん。
ちょっとは褒めてくれよ。

そう日々思いながらも、いつかは褒めてくれると思って頑張っていた。

毎日のように怒られていたが、きちんと自分に向き合って怒ってくれる人なんてこれまでの人生でいなかったので、少し嬉しかったのもある。

ただ理不尽な指導であれば心も折れたのだろうが、彼女は常にそれを満面の笑顔で言ってくる。
そのせいか、悪い気はしなかった。

私だけは絶対裏切らないから

彼女のもう一つの口癖だった。

だからこそ、彼女から退職を聞かれた時はショックだった。

けど前向きな転職理由だったし、彼女の未来を考えると適切な選択だと思ったので、その場は笑顔で「おめでとうございます」と伝えた。

1年目だったので、送別会の幹事をして、送別品を選んで、ムービーを作って、出し物を準備して、、、彼女の退職までは一瞬だった。

笑顔で見送った足で、自分は新幹線で実家に向かった。

新幹線で発泡酒を飲みながら一息ついた途端「私だけは絶対裏切らないから」という彼女の口癖をふと思い出した。

都度聞いている時は「はいはい」くらいでしか思っていなかったが、改めて振り返ってみると、彼女は常に味方でいてくれたことに気付いた。

ロープレ大会の時は、アンケートで、関西人がネタで勝っただけで実力は伴っていない、と心無いことを書かれた。

「小っさ。勝ちは勝ちや。こんな小さいこと言う大人になんなよ。」

100件開拓した際は自分の仕事の荒さで、数だけやっても意味ないと他チームの人から言われたこともあった。

「気にすんな。胸張れ。誰よりも結果を出したんやから。」

初成約は自分のミスでフィーを下げられた。

「関係ない。あんたの仕事が企業と候補者の為になった事実は変わらへん。」

彼女は全く褒めてくれなかった。
けど一度も否定はしなかった。

社会人として至らない点は、誰よりもきちんと向き合って怒ってくれた。
逆に仕事で正しいことをしていれば、強く正しいと言ってくれた。

キャバクラで金をぼったくられて、電気もガスも携帯も止まった時は、5万を急に渡されて「これで全部払ってこい」と言ってくれた。

毎日カップラーメンを食べていたら、弁当を2個作って来てくれたこともあった。

母のような存在だった。
褒めてはくれなかったけど、包んでくれていた。

「裏切らないんじゃなかったのかよ。」

そう思うと、新幹線で号泣してしまった。

自己肯定感を育むこと

最初の上司で社会人人生の9割は決まってしまうと聞いたことがる。

自分のビジネスパーソンとしての基礎を作ってくれたのは、実は2人目の上司だ。
彼のお陰で今の自分がいることは間違いない。

けどこうやって言語化してみると、あながち最初の上司で9割が決まる理論は間違ってないかもしれない。

どれたけ辛い環境に置かれても
どれだけ逆境に直面しても
どれだけ結果がでなくても

常に前向きにやってこれたのは、最初の上司が育んてくれた自己肯定感のおかげなのではないかと思う。

最初の上司が新入社員にやってあげるべきこと。

それは自己肯定感を育むことなのかもしれない。

そう思いながら、成長した僕は新幹線で今度はビールを飲むのだった。

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