想像力を刺激するゲームデザイン──プレイヤーの脳を活かす遊びとは

こんにちは。ゲームデザイナーのじゅにあです。現在、超協力型3DアクションRPG『Kizunarist』を開発しながら、面白いゲームを作るための試行錯誤を続けています。

さて、私はゲームデザインにおいて大切なことの一つとして、「プレイヤーにどんな体験を提供するか」を設計することだと考えています。そして、その体験はプレイヤーの脳内で生まれるものです。つまり、ゲームデザインを考える上で、「人間の脳の働き」を理解することが非常に重要になります。

本記事では、数ある脳の働きの中から「想像力」にフォーカスを当てて考えていきます。


1. プレイヤーの脳を動かす4つの知的能力

一般的に、ゲームプレイに深く関わる知的能力として、以下の4つが挙げられます。

  1. モデリング
    世界観やルールを理解し、自分なりのメンタルモデルを構築する力。
    例えば、棒人間のキャラクターを見たとき、私たちは「これは人間だ」と認識します。よく考えれば、棒でできた体の人間なんて現実にはいません。でも、「人間はこういう形をしている」という脳のメンタルモデルに合致するからこそ、違和感なく受け入れられるのです。

  2. 集中
    興味のある対象に没入し、長時間遊び続けられる力。
    例えば、パーティ会場で騒がしい中でも、自分の名前が呼ばれるとすぐに気付きますよね。これが「カクテルパーティ効果」と呼ばれています。ゲームでは、プレイヤーの注意を適切にコントロールし、余計な情報をノイズとして処理しながら、フロー状態に導くことが求められます。

  3. 共感
    キャラクターや物語に感情移入し、世界の出来事を「自分のこと」として捉える力。
    例えば、映画を観ている時。映画のキャラクターが悲しそうなら、なんとなく自分まで悲しくなりませんか?ゲームでも同様に、キャラクターの表情や仕草、音楽によってプレイヤーの感情を誘導することが可能です。

  4. 想像力
    限られた情報から足りない部分を補い、より広い世界観を生み出す力。
    集中力については後述します。

これら4つがバランスよく働くことで、プレイヤーはゲームを理解し、没入し、楽しむことができます。中でも、私は 「想像力」 に特に注目しています。なぜなら、想像力はストーリーの理解(コミュニケーション)と問題解決(攻略やパズル)に深く関わり、ゲーム体験を大きく向上させると考えているからです。

とはいえ、「想像力」と言われても具体的にピンとこない人もいるでしょう。そこで次の章では、「想像力がゲームプレイにどう影響するのか」 を、コミュニケーション問題解決 の2つの視点から掘り下げていきます。


2. ゲームにおける想像力の役割

ストーリーテリングにおける想像力

例えば、「昨日、郵便配達員に車を盗まれたんだ」と言われたとします。この一文だけでは詳細は語られていませんが、あなたの脳内ではさまざまなイメージが浮かんでくるはずです。
上記の一文で、あなたはどんな光景をイメージしましたか?

  • どんな郵便配達員だったのか?

  • どこで、どのように盗まれたのか?

  • 盗まれたのはどんな車だったのか?

私は「郵便配達員が赤い制服を着ていた」や「盗まれたのがスポーツカーだった」とは言っていません。それでも、脳は自動的に足りない情報を補い、イメージを作り上げます。さらに、「実は盗まれたのは本物の車ではなく、おもちゃの車だった」と付け加えれば、すぐにあなたの脳内イメージが修正されるはずです。

このように、人間の脳には 「情報の不足を補い、つじつまを合わせようとする性質」 があります。これはストーリーテリングにおいて非常に重要な特性であり、ゲームデザインにも活かすことができます。

特に インディゲーム のようにリソースが限られている場合、「すべてを作り込む」のではなく、プレイヤーの想像力を活かすことで、より深い没入感を生み出せます。たとえば、背景ストーリーのすべてを説明せず、NPCの会話や環境デザインの一部として 断片的な情報 を散りばめることで、プレイヤーに「想像する余地」を与えることが可能です。


問題解決における想像力

想像力はストーリー理解だけでなく、問題解決 にも大きく影響します。例えば、「脚立を使わずに電球を付け替えてください」と言われたら、あなたはどうするでしょう?

  • 椅子を積み上げる

  • 長い棒にテープを貼って電球を回す

  • 誰かに肩車をしてもらう

  • 天井を低くする(!?)

このように、人間は与えられた要素や条件の中で解決策を想像します。この能力があるからこそ、ゲームにおける攻略やパズルが成立する のです。

ゲームデザインにおいて、プレイヤーの想像力を刺激すること で、単調な作業ではなく、創造的なプレイを促すことができます。例えば、「この扉を開けるには鍵が必要だ」 という単純な制約を提示するのではなく、「鍵以外の方法でも開けられる可能性がある」 という余地を持たせることで、プレイヤーが試行錯誤を楽しめるようになります。

  • 扉の隙間に細い道具を差し込んで開ける

  • 隣の部屋の窓から侵入する

  • 爆発物で無理やりこじ開ける

こうした 自由度のある設計 によって、プレイヤーは「こうすればどうなるんだろう?」と考えるようになり、ゲーム体験がより豊かなものになります。


3. 想像力を活かしたゲームデザインのポイント

では、実際にゲームデザインにおいて どの情報を見せ、どの情報をプレイヤーの想像に委ねるべきか? を整理してみましょう。

コミュニケーション面

  • 必ず見せるべき情報

    • 世界観の大枠や、物語の根幹に関わる情報(主人公の目的、ゲームの基本設定)

  • 想像に委ねるべき情報

    • キャラクターの過去や細かな背景設定(断片的なヒントだけを与え、プレイヤーに考えさせる)

問題解決面

  • 必ず見せるべき情報:

    • ゲームの基本ルールや、プレイヤーが解決策を考える上で必要な情報

  • 想像に委ねるべき情報:

    • 解決方法の選択肢(1つの正解に固定せず、プレイヤーの創造力を活かせる仕組みを作る)

このように整理すると実際のゲームデザインに適用しやすくなります。


4. まとめ

想像力を活かしたゲームデザインは、プレイヤーに「自分が世界を解釈している」という実感を与え、より深い没入感を生みます。ストーリーも、ゲームプレイも、「足りない部分をプレイヤーが補完できるか?」を意識することで、より魅力的なゲーム体験を提供できるようになります。
特にインディゲームのようにリソースが限られる環境では、細部をすべて作り込むよりも、プレイヤー自身の想像力を引き出すことで、よりリッチな体験を生み出せると考えています。

少しでも皆さんのゲーム制作のヒントになれば嬉しいです。


あとがき

改めて自己紹介をさせてください。
ゲームデザイナーのじゅにあです!インディゲーム制作サークル「AtelierYo28」にて、超協力型3DアクションRPG『Kizunarist』を開発しています。遊びやすさと“わいわい感”、そして“アンチ孤独”をコンセプトに、プレイヤー同士がつながるゲーム体験を追求しています。

もしこの記事を読んで「ゲームデザインについて相談したい!」と感じていただけたら、お気軽にご連絡ください。長期・短期問わず、お仕事募集中です!TwitterのDM(@zyunizyunia)かメール(zyuniagamedev☆gmail.com)で、いつでもお待ちしています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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