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ゲームデザインの秘密 ──「目的」と「おもちゃ」が生む面白さ
はじめまして!
ゲーム制作サークル 「AtelierYo28」 のゲームデザイナー “じゅにあ”です。
現在、超協力型3DアクションRPG 『Kizunarist』 を開発しながら、面白いゲームを作るための試行錯誤を続けています。
本記事では、私が大きく影響を受けた Jesse Schell 著『ゲームデザインバイブル(The Art of Game Design)』 をベースに、「目的」と「おもちゃ」の関係を軸とするゲームデザイン論の一部を語らせていただきます。あくまで個人の見解ではありますが、皆さんのゲームづくりや企画のヒントになれば幸いです。
目次
はじめに
「面白さ」とは何か
「遊び」とは何か
「おもちゃ」とは何か
「良いおもちゃ」とは何か
「ゲーム」とは何か
「目的」と「おもちゃ」が噛み合うデザイン
「面白さ」を生む構造
例①:アクションゲームにおける「目的」と「おもちゃ」
例②:RPGにおける「目的」と「おもちゃ」
例③:パズルゲームにおける「目的」と「おもちゃ」
「おもちゃ」が新たな目的を生むデザイン
結論
おわりに
1.はじめに
ゲームは、昔から「遊び」の一つとして存在してきましたよね。ボードゲーム、スポーツ、そして現代のデジタルゲームまで、形は違えど根底にあるのは 「面白さ」 です。でも、この「面白さ」って、どうやって生まれるんでしょう?
私はゲームデザインをする中で、面白さの本質を探求し続けています。本稿では、以下の 5つの命題 をもとに話を進めていきます。
・面白さとは、驚きを伴う楽しさである。
・遊びとは、好奇心を満たしてくれる操作である。
・おもちゃとは、人が遊ぶものである。
・良いおもちゃとは、遊ぶと面白いものである。
・ゲームとは、遊び心をもって行う問題解決の活動である。
上記は Jesse Schell 著『ゲームデザインバイブル』 からの引用です。私はこの本を最高の一冊として位置付け、深く感謝しています。その上で、ここからは 自分なりの視点や解釈を交えつつ、ゲームデザインについて考えていきます!
2.「面白さ」とは何か
驚きの要素
面白いゲームには、必ず 「驚き」 がありますよね。例えば、アクションゲームで敵を攻撃したら、思わぬ吹っ飛び方をして思わず笑ってしまったことはありませんか? 予想外の展開や、意外な動きがあると、人は「面白い!」と感じるんです。
楽しさの要素
そして、「楽しさ」は 好奇心や探究心 と深く結びついています。RPGで新しいスキルを習得したときのワクワク感、探索型ゲームで隠し部屋を見つけたときの達成感。これらは 「未知のものを発見し、試す楽しさ」 ですよね。
面白さの本質は 「驚き」と「楽しさ」
プレイヤーが予想外の体験をしたり、好奇心を満たせる仕組みが重要。
3.「遊び」とは何か
「遊び」とは、単に何かをすることではなく 「好奇心を満たすための操作」 です。
子どもが砂場で遊ぶのも、「これをやったらどうなるんだろう?」という興味が原動力になっていますよね。同じように、ゲームにおける「遊び」も、プレイヤーが試行錯誤しながら新しい発見をすることに意味があります。
遊びと作業の違い
例えば、アクションゲームで 「木箱を壊す」 という行為があったとします。ただの作業として感じる場合もあれば、楽しく感じる場合もありますよね?
もし、木箱を壊したときに 豪快なエフェクト や 爽快な効果音 があれば、「壊すのが楽しい!」と感じるはず。つまり、同じ行為でも 「遊びとしての楽しさ」をデザインするかどうか で、大きく印象が変わるんです。
遊びとは、好奇心を満たすための行動。デザイナー次第で、「作業」も「遊び」に変えられる。
4.「おもちゃ」とは何か
本稿では、「おもちゃ」を 「人が遊ぶすべての対象」 と広義に捉えます。
アナログなおもちゃ(ボールや積み木)も、デジタルゲームのキャラクター操作やギミックも、すべて「おもちゃ」になり得ます。
おもちゃと道具の違い
道具: 目的達成のための手段(例:ハシゴ → 高いところへ登るための道具)
おもちゃ: 使うこと自体が楽しいもの(例:トランポリン → 跳ぶのが楽しい!)
例えば、ジャンプアクションが単なる移動手段ではなく、エフェクトや物理演算のおかげで「跳ぶのが楽しい!」と感じられるなら、それは 「良いおもちゃ」 になりますよね。
おもちゃは、使うこと自体が楽しいもの。ゲーム内の操作やギミックも、おもちゃとして考えるべき。
5.「良いおもちゃ」とは何か
では、どんなものが 「良いおもちゃ」 なのでしょうか?
良いおもちゃの条件
操作していて気持ちいい(レスポンスが良い、アニメーションが滑らか)
何度も試したくなる(ランダム性や物理演算で、毎回違う体験ができる)
自分の工夫が活かせる(プレイヤーの発想次第で、新たな遊び方が生まれる)
目的につながりやすい(ゲームのゴール達成をサポートしつつ、操作が楽しい)
例えば、『スーパーマリオ』のジャンプアクションは、目的(ステージをクリアする)に直結しつつ、単純に「跳ぶのが楽しい!」と感じられますよね。これこそが「良いおもちゃ」です。
良いおもちゃは 「気持ちよく、何度も遊びたくなる」 もの。これがゲームの面白さを支える。
6.「ゲーム」とは何か
ゲームを一言で表すなら、「遊び心をもって行う問題解決の活動」 です。
例えば、RPGなら「敵を倒してストーリーを進める」、パズルゲームなら「ピースを組み合わせてクリアする」。どれも何らかの課題を解決するプロセスですよね。
遊び心が重要
現実世界の問題解決はストレスになりがちですが、ゲームでは「もう一回試してみよう!」と思える仕組みが作られています。例えば、難しいボスに挑んで負けても、ゲームなら「次こそ勝ちたい!」と意欲が湧きますよね。
この「試行錯誤が楽しい」と思えるのが、ゲームならではの魅力なんです。
ゲームは、「遊びながら問題を解決する」 ことが本質。試行錯誤が楽しい仕組みが、ゲームの面白さを生む。
7.「目的」と「おもちゃ」が噛み合うデザイン
重要なのが、「目的」と「おもちゃ」のバランスです。
目的があるから、おもちゃに意味が生まれる
おもちゃが楽しいから、目的達成のプロセスも面白い
例えば、「敵を倒す」という目的があるゲームで、「攻撃が楽しい!」と感じられるなら、プレイヤーは目的を達成する過程を楽しめますよね。
逆に、目的が明確でも、おもちゃ(操作やギミック)がつまらなかったらどうでしょう? 単なる作業になってしまい、面白さが半減します。
つまり、ゲームの面白さは 「目的」と「おもちゃ」がうまく噛み合っているかどうか」 にかかっているんです。
「目的」と「おもちゃ」のバランスが重要。目的があることで遊びに意味が生まれ、おもちゃが楽しいと目的達成のプロセスが面白くなる。
8.「面白さ」を生む構造
「面白い!」と感じる瞬間には、 驚き があることが多いです。
例えば、アクションゲームで「ボタンを押したら敵が派手に吹っ飛んだ!」という演出があると、「えっ!?もう一回やってみよう」と思いませんか? そうやって、新しい遊び方を発見しながら、ゲームの面白さがどんどん広がっていきます。
つまり、プレイヤーの 「これを試してみたい!」 という次のプレイに繋がる好奇心を刺激できるゲームほど、長く楽しんでもらえるんです。
面白さの源泉は 驚きと好奇心。予想外の展開や発見があると、プレイヤーはもっと遊びたくなる。
9.例①:アクションゲームにおける「目的」と「おもちゃ」
目的
木箱を壊して先へ進む
アイテムを入手する
おもちゃ
木箱を破壊した時の爽快なエフェクトやサウンド
破片の飛散が物理演算で毎回ちょっと違う
ただ箱を壊すだけでも、「バキッ!」という気持ちのいい音や、破片の飛び散る動きがあれば、それだけで楽しいですよね。そうすると、「壊す」という行為自体が楽しくなり、作業感がなくなります。
単なる行動でも、演出や仕掛け次第で「おもちゃ」になる。これがゲームデザインの大切なポイント。
10.例②:RPGにおける「目的」と「おもちゃ」
目的
宝箱を開けてアイテムを手に入れる
ストーリーを進める
おもちゃ
宝箱を開ける瞬間のドキドキ感(演出・効果音)
レアアイテム獲得時のサプライズ感
例えば、ただ宝箱を開けるだけではなく、「ガシャン!」という重厚な開閉音や、「キラッ!」と輝くエフェクトがあれば、開ける瞬間がワクワクしますよね。こうした小さな演出が、プレイヤーの「もっと開けたい!」という気持ちにつながります。
演出やフィードバックの工夫で、何気ない操作も「楽しい体験」に変えられる。
11.例③:パズルゲームにおける「目的」と「おもちゃ」
目的
ハイスコアを狙う
ステージクリアを目指す
おもちゃ
ブロックを移動させるときの気持ちよさ
大連鎖時の派手なエフェクト
例えば、『ぷよぷよ』のようなパズルゲームでは、ブロックが消えるときの「ボン!」という音や、連鎖時の派手な演出が気持ちいいですよね。これがあるから、「もっと連鎖を作りたい!」という気持ちが湧いてくるわけです。
操作のフィードバックを気持ちよくすることで、プレイヤーの「もっとやりたい!」を引き出せる。
12.「おもちゃ」が新たな目的を生むデザイン
マインクラフトに見る創造の連鎖
『マインクラフト』をプレイしたことがある人なら、最初は「生き延びること」が目的だったのに、気づけば「自分だけの建築物を作る」に夢中になっていた…なんて経験がありますよね?
これは、「ブロックを壊して組み立てる」という単純な遊びが楽しいからこそ、プレイヤー自身が新たな目的を生み出した結果です。
プレイヤーが目的を作り出す例
『ソウルシリーズ』 → 「縛りプレイ」「ノーダメクリア」など、プレイヤーが独自の目標を設定
『シミュレーションゲーム』 → ただ発展させるだけでなく、街のデザイン自体を楽しむ
こうした 「遊びが遊びを生む」 デザインができれば、ゲームの寿命はどんどん伸びていきます。
優れたおもちゃは、プレイヤーが 「自分だけの目的」 を生み出せる。これがゲームの可能性を広げる。
13.結論
ここまでの話をまとめると、ゲームの面白さは 「目的」と「おもちゃ」のバランス によってデザインできるよ、ということです。
目的があるから、おもちゃに意味が生まれる
おもちゃが楽しいから、目的達成のプロセスも面白い
驚きと好奇心が、プレイヤーの「もっと遊びたい!」を引き出す
この関係性を意識することで、より魅力的なゲームデザインができるようになります。
14.おわりに
ここまで「ゲームデザインにおける目的とおもちゃ」について話してきましたが、いかがでしたか? 少しでも皆さんのゲーム作りのヒントになれば嬉しいです。
まだまだ自分自身も試行錯誤の毎日ですが、より面白いゲームを作るために、これからも挑戦を続けていきます!
【あとがき】
改めて自己紹介をさせてください。
ゲームデザイナーのじゅにあです!
ゲーム開発サークル 「AtelierYo28」 にて、超協力型3DアクションRPG『Kizunarist』を開発しています。遊びやすさや“わいわい感”、そして“アンチ孤独”をコンセプトに、プレイヤー同士のつながりを大切にしたゲーム体験を追求しています。
中学時代からゲーム制作を始め、高校ではLoLの高校生大会 STAGE:0 で全国優勝。現在はゲームデザインやグラフィック制作を中心に、より面白いゲームをつくるため、フルタイムで試行錯誤を重ねています。
もしこの記事を読んで「ゲームデザインについて相談したい!」と感じていただけたなら、ぜひお気軽にご連絡ください。長期・短期を問わずお仕事募集中です。
どんな形でも「もっと面白いゲームを作る」お手伝いができれば幸いです。
TwitterのDM(@zyunizyunia)かメール(zyuniagamedev☆gmail.com)で、いつでもお待ちしています!
※本記事は筆者の個人的な経験則や見解に基づくものであり、ゲームデザインの正解を示すものではありません。