モンについて語りたい
あの人と出会うまで、その存在を意識したこともなかった。
ケーキを選ぶとき、フルーツタルトのようにクリームの主張が少ないものを好んでいた。
ところが我が子を愛でるように、モンブランへの愛を語るあの人のnoteを4年も読んでいるうちにいつの間にか私も好きになっていた。
好きじゃなくても食べてみたくなる。これはもつにこみさんの文章から滲み出るモンブラン愛に他ならない。マガジンにはなんと69本のモンの記事が収められている。
いつかハスつかさんに続いて「マツコの知らない世界」に出てマツコさんを唸らせて欲しいと思っている。こちらをぜひ読んで欲しい。あなたもモンが食べたくなること間違いなし。
いつも平熱のエッセイを書くもつさん。モンの記事はスキの熱で体温だいぶ高め。その熱量に読んでるこちらもつい楽しくなる。
そんなもつさんから先日、連絡をいただいた。
「冷凍品なので、冷凍庫のスペースを拝借しますが、お楽しみいただけたら嬉しいです」
年始のサプライズギフト!
なんじゃい、この可愛い箱!果物?
奥さんもしっかり中身を確認にやってくる。
いやちょい待て。どこかで見たぞ、バーロ。真実はいつもたった一つ!
おいおい、これはやべぇーぞ。モンのプロから贈られてきたモン。5人の子ども達にバレないよう奥さんと目をあわせ歓喜しながら冷凍庫へイン。
「すぐ解凍した方がいいんじゃない?きっとこの大きさは朝まで時間かかるよ」
オマエの贈り物はオレの物。ジャイアン気質の奥さん、もう食う気モンモン(マンマン)。実は奥さんも無類のモン好き。
ホールごとやられるかもしれない。そんな焦燥感からすぐ解凍する気にならず、1日モンを寝かせることに。
日曜の朝に優雅にいただこう。と不満そうな奥さんを説得。寝る前に冷蔵庫に移そうと思っていたけど、私もいい加減なもので酔っ払い忘れてしまう。
深夜2時。尿意を催しスクっと目が覚める。私のモン!用を足し暗闇の中、冷凍⇨冷蔵庫へモンを移動させる。
よしよし。これで一安心。朝が楽しみだ。
寝ぼけ眼のまま寝室へ戻ろうとすると暗闇から物音。スマホの光に青白く照らされた風呂上がりの長女が口をポカーンと開けてこちらを見ていた。
ひっ、オバケ!!
「パパなにしてるの?」
「解凍だねぇ」
平静を装い、ご飯炊き忘れてん的な言い方をしてみたが、まったく伝わらず訝しむ長女。
寝ぼけたおっさんが冷蔵庫で用を足すかと思いきや、おもむろにケーキを取り出すのでこっそり1人で食べるのかと思ったそう。
食いしん坊の長女にモンの存在に気付かれてしまうとは。これは子どもたちにもシェアするしかない。
翌朝、早起きして奥さんと開封の儀。
いくよ、いくよ!
キャー!早起きしていた三女も加わり3人で悲鳴をあげる。見るからにうまそうやん。
「絶対ホールで食える」
モン好きの奥さんがホール食いアピールをしてくる。やめてくれ。
「お願い、これだけやらせて」
いつか必ずホールで食わせてやるさ。入刀するとなんと美しいグラデーション。ホールケーキを泣く泣く家族6人分に切り分ける。
一口目。マロンクリームをフォークで少しだけ口へ運ぶ。舌先で溶ける。なんとまろやかで上品な甘さ。
奥さんと三女も歓声をあげている。
二口目。ホイップクリーム部分も一緒に食べる。さらにふんわりとしたマロンクリームと細かくカットされた栗が鼻腔をくすぐる。
軽い。そして奥深い。
三口目。タルトも一緒にいただく。
ふんわり、しっとり、ざっくり。
こんな食感まで楽しいモンブランは初めてだ。芸術的なレイヤーだ。
「アンジェリーナを超えたね」
奥さん曰くモンの名店をも超えたそうだ。ケーキがあまり好きでない三女も溶けるマロンクリームに舌鼓を打っていた。
「タルトがアーモンド生地でマロンクリームと相性が良い!そして食べ応えもあるからこの量でも満足度が高い。まだ食べたいぃ」
モン好きの奥さんが唸っている。
感動したので、モンの構造を調べてみた。
手が込んでるモン。通りで旨いわけだ。寝ぼすけ長女もめちゃくちゃ喜んでいた。千疋屋の可愛い箱を折り畳んでいたら…、あっ!
思い出した!これは!
もつさんが年末のご褒美に食べられていたモン!やはり。先にご自身で食されて間違いないモンを贈ってくださったのだ。なんとありがたや。
そういえば、もつさんがモンを好きな理由にこんなことを書かれていた。
このこっくりという表現が、今までピンと来なかったけど、ちょっとわかったような気がする。
こっくり、これはきっと落ち着いた情緒の中にある奥深さだ。
もつさんのようなね。
来年も家族で食べたいモン。