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息苦しさを感じている人は、救心でも、キャベジンでもなく、「クリキャベ」を読んでみるといい

「コレハワガヤノコトデスカ?」

小説を読んだ瞬間、それはもうカタコトになるくらいビックリした。読みすすめ、ちょっと怖くなり、どこかにカメラでもあるんじゃないかと我が家の四方を見渡した。

「クリームイエローの海と春キャベツのある家」 せやま南天さん

家事代行サービスを始めたばかりの津麦が、5人の子どもを育てるシングルファーザーの織野家と出会い、育児や家事、仕事や生活の本質に向きあい、成長を遂げていくストーリー。


我が家と同じ5人の子どもを育てる織野家の日常があまりにリアルで、身につまされる思いになった。洗濯物の山は本当にクリームイエロー。

着古され、洗濯物の重みでしわしわになったシャツやパンツたち。染められてイチゴミルク色になった下着。ダークイエロー、いやグレーのタオル。くすんだ物体がリビングに塊となって鎮座している。

奥さんがフリーズしている姿を何度見たことか

ふと、子のパンツをよく見ると2つぐらいパンクな感じで穴が開いていたり…下着のショルダーがとれてるものを子が結んでそのまま着ていたり……日々の暮らしに子どもの着衣一つもチェックする余裕がなかった。

奥さんが体調を崩して入院した時は、まさしく織野家と同じような状況に陥った。どれだけすくいあげても指の隙間から、するするとこぼれ落ちていって底の見えない海に溺れていく。そこは暗い家事の海。

でも、どれだけ家の中が荒れていても守りたいもの。

それが織野家と同じく食事だった。きっと織野パパも今は亡き奥さんの代わりとなって、子どもたちに最も愛情を伝える手段が料理だったのだろう。

リビングにおもちゃ、ゴミ、さらにその上に洗濯物が散らかってクリームイエローにくすんでいる。でも冷蔵庫の中は、瑞々しいキャベツや色とりどりの食材があって何とか生活に彩りをもたらしていた。

家事代行歴3か月の津麦にとっても唯一の救いであったに違いない。

子どもが小さかった頃の日常を思い出し、織野家に共感し、津麦と共に応援し続けた。そしてこの小説を読み終えた時、とても晴れやかな気持ちになった。

興奮冷めやらぬ間に送ったコメントがなんと帯に!仲間との共演も夢のよう。

特に心が軽くなった津麦の一言

「外の世界は、自分の力で変えていけないじゃないですか。けど、自分の家の中だけは、自分が生きやすいようにすることができるんですよ。住みやすく、過ごしやすく、眠りやすく、どんな風にもできる。その手段が、家事だよなって思うんですよ」

日常、どれだけ丁寧な暮らしをしようと心がけても、うまくいかない時もある。周りが見えなくなるくらい仕事が忙しいとか……、子どもが1週間おきに熱を出すとか……、計画的にいかないのが常だ。

それでも少しずつ時間をかけて、ゆっくりと、じっくりと立て直せばいい。変わらない現状に焦らず、自身が、そして家族が、ほっとできる場所を作っていけばいい。

これだけ共感できるのも生活に向きあっているからですよ……。

と、せやま南天さんに優しく背中をそっと押していただいたような気がした。明るい話題ではないけど、清涼感たっぷりに描けるのも、せやま南天さんだからこそ。

胸の内のどこかに息苦しさを感じている人は、救心でも、キャベジンでもなく「クリキャベ」を読んで欲しい。#言いたいだけだね

きっと生きやすさ暮らしやすさのヒントに繋がるはず。いつか子どもたちにも読ませてやりたい。

ブックカバーなしで電車に乗るとめっちゃ視線感じるぞ。美しい表紙はぷん(pun)さん作。


お気に入りの登場人物は、家事代行サービス歴3か月の津麦を支える相談員の安富さん。

いつも「f」の発音でフッフッフッと微笑みながら話を聞き、考えるきっかけをくれる理想的な上司である。

自分もこんな人に話を聞いて欲しい!という感覚になる。

ちょっと待て。そういえば次女も同じ笑い方をするぞ。本当にfの音でフフフフフフ。だからいつもみんな安心して話しかけてるんだな。fむfむ。

夕飯を食べながら、奥さんが話している時に安富さんと次女を意識し、微笑みながら「f、フフフフ……」と返してみた。

「なにふざけてるの?!目つくよっ!!」

こわっ!箸を持ちながら真顔で叱られた。

奥さんは大事にしなきゃいけない。
返事は「はい」か「yes」だ。

生き方や生活は人ぞれぞれ。
人と比べるものではなく自分が生きやすいものにすればいい。

「やっぱり春キャベだね」

なんて言いながら、みんなで囲む食卓が我が家の最高の幸せである。

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