絶叫から始まった2021年、息子のスイッチを押したもの
2020年の大みそか。
小6息子が、没頭しているゲーム「フォートナイト」のカウントダウンイベントが始まりました。
10、9、8……
隣で一緒にゲーム画面を固唾を飲んで見守ります。
7、6……
switch画面内で鮮やかな花火の演出、キレイだぁ。
5、4……
奥さんと3人の娘たちは、恒例のジャニーズカウントダウン!
奥さんも私の期待も最高潮!
どうなる?どうなる?
3!
2!
1!
キターーーーーーーーー!!
うわぁぁーーーーーぁ!
新年を迎えると同時にSwitchの見守り設定が作動し、絶叫と共に幕を開けた2021年。
そこまで頭が回らず、可哀想なことをしてしまいましたが、おそらく彼は日本で一番最初に泣いた小学生となりました。
波乱の幕開けで迎えた2021年は彼にとってどんな1年になったのでしょうか?
最後の砦
中3、中1の姉がしっかりしている為、比較されてかわいそうなのですが、とにかく破天荒な行動で、憎まれっ子世にはばかるを地でいく、ちょっとした問題児でした。
私も悪がきだったので、息子のことをとやかく言えませんが、通信簿の右側だけは、6年間のうちになんとかしたいと思っていました。
通知簿の右側=行動の記録というやつ。
集団生活での基本行動や整理整頓など、今のうちに身につけておきたいことばかり。残念ながら1年生の時から「もうすこし」がない時がない。
決して頭が悪いわけでもなく本当に優しい男です。ただ要領が悪く空気が読めない、調子に乗ったら止まらないタイプの問題児で、先生にもたくさんご迷惑をおかけしました。
とにかく身の回りのことからちゃんとしよう!と奥さんが毎日、宿題や忘れ物がないかチェックしてくれていましたが、何かできたら必ず何かが抜ける。
その抜け感がハンパないのです。全て完璧に準備できたと思ったら、ランドセルを忘れて学校へ行ったことも……。
5年生から面倒を見てくれている先生いわく
「悪ガキ最後の砦」でした。
スイッチを押したもの
でも先生は諦めたりすることはなく
「彼はスモールステップなだけなんです。ゆっくり階段を登っていますから、お家でもぜひサポートをお願いします」
私たちにも根気強く声をかけ続けてくれました。
ある日、奥さんが息子のランドセルを開くと、こんなものが……
できないなんてことはない、絶対に諦めない。という先生からの強いメッセージ。
このあたりから、彼の行動に変化が現れました。
夜遅くに部屋を見に行くと、暗闇でなんと宿題をしているではありませんか。
「えっ!どうした?なんでこんな時間に?」
「ちょっと褒められて…嬉しくてね……」
私に背を向けたまま、手を一生懸命動かしながら答えてくれました。数日後、彼は満面の笑みでこれを見せてくれました。
家宝にします。
点数は99点。彼は何を褒めてもらったのか?
『がんばった過程』でした。
ずっと先生はプロセスを見てくれていたのです。
結果は後からついてくると……。
彼は立ち止まっていたのではなく、少しずつ小さな階段を先生に背中を押してもらいながら、登り続けていたのです。
私たちは、結果ばかりを求め、本当に大切なものに目を向けることができていなかったのかもしれません。
ホップ•ステップ•ジャンプ
授業参観の時に、ロッカーの中から立方体になったプリントの塊が出てきたりとサプライズは続きましたが、夏を過ぎると徐々に身の回りのこともできるようになってきました。
お腹の中にいた弟の存在も大きかったのかもしれません。誕生を一番楽しみにしてくれていたのは彼でした。兄さんになることへの喜びとともに自覚も芽生えたのでしょう。
2学期、しばらくすると先生からお手紙をもらってきました。
すべて先生のおかげ。
感動して私も便箋いっぱいに感謝の手紙を書きました。実際にお会いしたときも先生は、私たちと一緒になって息子の成長を喜んでくれました。
そして迎えたクリスマス。
彼は今までになく胸を張り、私の前にこれを置きました。
全部できた!
自分の事だけではなく周りのことも考えて行動ができるようになったり、クラスのまとめ役になったり、学力も飛躍的に伸びたそうです。
できないことではなくて、できたことやその過程に目を向ける。
子育てや仕事においても大切にしたい視点を私たちも先生から教えてもらうことができました。
大きな階段を登らせてくれた先生には本当に感謝しかありません。
大晦日。
「今年もフォートナイトのカウントダウンイベントあるの?今年は間違いなく見守り設定も解除するから好きなだけやりなよ」
「もういいよ……」
はにかんだ表情で笑った彼の横顔は、少し大人びて見えました。
来年は中学生。
スイッチの入った彼の成長がまた楽しみです。