駆け出し百人一首(3)秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる(藤原敏行)

秋(あき)来(き)ぬと目(め)にはさやかに見(み)えねども風(かぜ)の音(おと)にぞ驚(おどろ)かれぬる

古今和歌集 巻四 秋歌上 169番

訳:秋が来たということは、目に見える景色からははっきりとは分からないが、風の音にはっとせずにはいられなかった。

I can't find any signs of autumn, but I was so surprised at the sound of the wind. Autumn has come in the air!


詞書は「秋立つ日詠める」。立秋の日の歌です。旧暦の七月一日、今の暦で言うならおおよそ八月八日頃です。確かにその頃は、「まだまだ夏!」という感じで、目に入るのは夏の風物詩ばかりですね。でも、不思議なことに、立秋の頃、夜風が涼しく感じられる日があるんです。ぜひ来年、意識して過ごしてみてください。

文法事項

来ぬ:カ変「来」は連用形で「き」と読む。「ぬ」は打消ではなく完了の助動詞。「風立ちぬ」の「ぬ」と同じ使い方です。
見えねども:「ね」は打消の助動詞の已然形。「ども」につながって逆接です。
驚かれぬる:「れ」は自発の助動詞。〜せずにはいられない、自然と〜。完了の「ぬ」が第四句の「ぞ」により、係り結び(強意、文末は連体形)になっている。


古文単語

さやかに:形容動詞ナリ活用「さやかなり」の連用形。はっきりと。
驚く:はっとする。はっと気付く。思わず目を瞠るようなイメージ。


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