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48-2.好評「セルフ・コンパッション」講習オンデマンド配信スタート

特集:心理支援技能を磨く

下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
中野美奈(福山大学准教授)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.48-2

オンデマンド配信☆体験講習会

オンデマンド版『セルフ・コンパッションを体験し、習得する』
【構成】全4回各回90分【費用】各1回分1200円/全4回分4000円
 
【第1回】『マインドフルな気づき』(1200円)
 ☞第1回のみ:https://select-type.com/ev/?ev=kSEsspm2_lg
【第2回】『共通の人間性』(1200円)
 ☞第2回のみ:https://select-type.com/ev/?ev=DablP4OTsig
【第3回】『しんどい感情との付き合い方』(1200円)
 ☞第3回のみ:https://select-type.com/ev/?ev=k_wTUyUlnTU
【第4回】『他者へのコンパッション』(1200円)
 ☞第4回のみ:https://select-type.com/ev/?ev=OpwDPeg5JlU
【全4回総合版】(4000円)
 ☞全4回込み:https://select-type.com/ev/?ev=Tz-Q4rJo3nQ

【申込】2024年8月8日まで【視聴期間】2024年8月9日〜9月10日
【講師】中野美奈(福山大学准教授)
【講師書籍】「マインドフルネスのすべて」
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=295083

中野美奈 先生

事例検討による技能研修会

パニック症の事例検討によるケースフォーミュレーション技能研修
―認知行動療法とユング心理学との対話を通して―

◾️事例「慢性化したパニック発作で苦しむ30代後半の女性の心理支援」
◾️事例発表 下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
◾️指定討論1「認知行動療法の観点から」田中恒彦(新潟大学准教授)
◾️指定討論2「ユング心理学の観点から」大塚紳一郎(大塚プラクシス主宰)

【申込み】8月6日まで
[オンデマンド視聴のみ](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=P6SbOairOEk


1. いつでも、どこでも、誰でも「コンパッション」を学ぶことができる!

臨床心理iNEXTは、マインドフルネスやセルフ・コンパッションのエキスパートである中野美奈先生を講師にお迎えし、この5月〜6月に特別講習会として「セルフ・コンパッションを体験し、習得する」プログラムを開催しました。

これは、隔週土曜日の4回シリーズでしたが、毎回160人を超える多数の参加者があり、参加者の皆様にご協力いただいたアンケートにおいても「役立った」「楽しかった」との高評価をいただきました。5月〜6月の講習会は、ライブでご参加いただける方のみ受け付けました。そのため、土曜日勤務など日程の都合がつかずにご参加いただけなかった方も多かったと思います。そこで、5月〜6月の講習会には日程の都合でライブ参加できなかった皆様のために、各回90分の講習会をオンデマンド配信用に編集して提供することとしました。

プログラムは4回のシリーズになっていますが、冒頭にご案内しましたようにオンデマンド配信は、各回ごとに申し込んで視聴できますし、4回シリーズを通しての視聴もできます。全4回一括で申し込んでいただいた場合には割安となっておりますが、それぞれの回は独立していますので、関心のある回のみの視聴も可能です。今回は、心理職以外の一般の方も参加できます。オンデマンド配信ですので、いつでも、どこからでも、誰でも「セルフ・コンパッション」を学ぶことができます。


2.今年の夏は「セルフ・コンパッション」をマスターしよう!

「セルフ・コンパッション」とは、大切な他者に対するのと同じように,自分自身にも優しさと思いやりをもって接することを意味します。このような点でセルフ・コンパッションは、心理職だけでなく、会社などに勤めている一般の方にとっても、日常生活を安心して健康に過ごすための、とても役立つ考え方であり、行動の仕方です。ただし、自分が辛いときに自分の良き友になること、自分の敵ではなく味方になることは、意外と難しいものかもしれません※1)。
 
そこで、今回配信のプログラムでは、セルフ・コンパッションを学びやすいように要点にそって『マインドフルな気づき』、『共通の人間性』、 『しんどい感情との付き合い方』、  『他者へのコンパッション』の4つに分けて講習会を構成してあります。それぞれの回でセルフ・コンパッションについてわかりやすく説明し、長時間の瞑想はせず、セルフ・コンパッションを高める手軽な様々なワークをご紹介しています※2)。

このようにプログラムは、順を追って誰でもセルフ・コンパッションを体験し、習得しやすいようにプログラムの内容を工夫してあります。また、夏休みとも重なりますので、配信する期間は、通常よりも長く1ヶ月とさせていただきましたので、ゆっくりと、何回でもセルフ・コンパッションの学習を進めていただけます。
 
※1)セルフ・コンパッションを学び、体験する−自分とつながり、人とつながる
https://note.com/inext/n/n20610d1f3d33
※2)セルフ・コンパッションを体験し、習得する−体験プログラム
https://note.com/inext/n/n90712c735aea


3. 大好評だった「セルフ・コンパッション」講習会がオンデマンドに!

今回のオンデマンド配信は、心理職だけでなく、一般の方も閲覧できるようなっています。ぜひ、本マガジンの読者の皆様には今回のオンデマンド配信のプログラムをセルフ・コンパッションに関心のある方に広く周知いただき、ご活用いただければ幸いです。以下にセルフ・コンパッションを学ぶ意味について、講師の中野美奈先生にお伺いしたインタビューを掲載します。
 
【下山】この5月〜6月で実施していただいた全4回のセルフ・コンパッション講習会がとても好評でした。そこで、その時にご参加できなかった方のために、8月〜9月にその動画記録をオンデマンド配信し、より多くの皆様にセルフ・コンパッションを体験し、習得していただけるようにしました。今回は、改めてセルフ・コンパッションを学ぶ意味を中野先生に伺いたいと思っております。まず5月〜6月に4回実施されての感想を教えていただけばと思っております。

【中野】 5月から6月にかけて、土曜日の朝9時からという時間帯で皆様お休みの朝1番からのご参加をお願いすることになって、どれくらいの参加率になるか心配だったんですけれども、毎回平均すると160人を超える参加者の方が、朝から早起きして参加してくださって、とても嬉しく思っています。

アンケートの自由記述で感想とか書いてくださる方が多かったんですけれども、「お休みの朝に、いい休みの日のスタートになった」とか、「朝受けることでよかった」、「すっきりした」というような感想もいただいたりしたので安心いたしました。


4.自分のペースで「セルフ・コンパッション」を学ぶ

【下山】今回のオンデマンド配信では1回から4回までそれぞれの動画を選べますし、あるいは4回のパッケージになったものも選べる形式になっています。オンデマンド配信で受講する皆様へのメッセージをよろしくお願いします。

【中野】ライブだとその時々の空気感とか雰囲気とか実際に感じられて、それはそれでとてもいいとは思いますが、参加できる時間に限りがあります。それに対してオンデマンドになると、視聴する方がご自身のご都合の良い時間を選んでご自分のペースで見ていただけるのがとてもいいかなと思っております。

私自身ちょっとペース配分が下手なところがあって早口になっちゃったり、時間をかけすぎたり、逆に時間が足らなかったりとかもありました。ワークにもっと時間をかけたい時でも、ライブですと「時間になったので次に進みます」となってしまいます。それに対してオンデマンドで見ていただく際には、「このワークはもっとゆっくり時間をかけて体験してみよう」と、スピードを調整したり、繰り返し視聴したりということができますね。そのようにご自身のペースで学習できるのがオンデマンドの良い点ですね。

【下山】私も4回全てに司会として参加しました。いずれの回もそれぞれのテーマについての簡単な説明と、ワークが入っていますね。その点で、単に講義を聞くのではなくて、ワークをしながら、まさに体験としてセルフ・コンパッションを体得していく体験型講習会でした。オンデマンドですと、このワークは繰り返しやってみて何回も体験して習得できるメリットがありますね。

【中野】そうですね。ワークは時間をかけずにスラスラと進めましたが、実際にワークを通して習得するにはすごく時間がかかる。ゆっくり掘り下げて自分自身考えてみたいとか、好きな時間配分で体験したいということがオンデマンドではできます。それが、オンデマンドの利点ですね。


5.「マインドフルネスな気づき」と「共通の人間性」を学ぶ意味

【下山】今回の講習会は、それぞれの回でテーマが違って、最終的にセルフ・コンパッションを習得できるように工夫されていますね。まず1回目は「マインドフルな気づき」ですね。この回のポイントは、何だったのでしょうか?

【中野】「セルフ・コンパッション」と「マインドフルネス」は切り離せないものです。実際セルフ・コンパッションの3つの構成要素のうちの1つがマインドフルネスですね。第1回セッションでは、改めてそのマインドフルネスを通してセルフ・コンパッションに至る道筋を確認する意味で、最初にマインドフルネスの時間をゆっくりとるのが良いかと考えました。

【下山】第2回は「共通の人間性」ですね。これについてはどうでしょうか。

【中野】「共通の人間性」もセルフ・コンパッションの3つの構成要素のうちの1つです。共通の人間性という概念を認識できていないと、「自分はおかしい」、「自分はダメだ」、「自分ばっかり辛い思いしている」というように「自分が自分が」となってしまいがちです。そうではなくて、つらい思いをするときに一瞬でも「人間は誰でも欠点がありながら成長を続けていっている存在なんだ」、「人間なら誰でも、例外なく人生の歩みには困難が伴うんだ」ということを振り返ることが大切です。第2回セッションでは、そのような「共通の人間性」について重点的に扱います。


6.「しんどい感情との付き合い方」を学ぶ意味

【下山】そして第3回セッションは「しんどい感情との付き合い方」ですね。ここが1番のポイントにもなってくると思うんですが、どうでしょうか?

【中野】そうですね。ライブで参加した方は心理職の方がほとんどであったと思います。心理職の人は、どうしてもつらい感情を押し殺したりとか、我慢してクライアントさんに尽くし過ぎたりしてしまいがちです。怒りの感情が湧いたら、「こんな怒りは持ってはいけないのだ」と考えたり、さらには「怒りの感情をなかったことにする」といった回避反応をする方は結構いると思います。

このようなしんどい感情への対応については、心理職に限らず、日本人は誰でも苦手です。適応志向が強いのでネガティブな感情を意識したり表現したりすることを避けがちです。その点では、「しんどい感情との付き合い方」は、一般の方にとっても、とても重要なテーマです。ですので、第3回セッションでは、セルフ・コンパッションの観点から、「悲しみ」「怒り」「自己嫌悪」などのしんどい感情とどのように付き合ったら良いのかを、じっくり時間をとって学びます。


7. 「他者へのコンパッション」を学ぶ意味

【下山】そして第4回セッションは「他者へのコンパッション」ですね。今回の講習会のテーマは「セルフ・コンパッション」ですが、最後に「他者へのコンパッション」となっているのには、どのような意味があるのでしょうか。

【中野】研究で、セルフ・コンパッションが高まると他者へのコンパッションが高まることがわかっています。まずはセルフ・コンパッションが先で、他者へのコンパッションはそれに付いてくるものと思います。しかし、「他者へのコンパッション」とはどのようなものかがピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

「そもそも他者へ向けるコンパッションとはどのようなことだろう?」、「他者への感謝とは違うのかな?」、「他者へのコンパッションは、自分に向けるのとは違うのかな?」といった疑問をもたれる方もいるでしょう。第4回セッションでは、そのような疑問をポイントとして、「他者へのコンパッション」の向け方についてワークを通して扱います。


8. ハラスメント対応に活用できるセルフ・コンパッション

【下山】ライブの講習会では、心理職が対象でした。しかし、中野先生としては、今回はオンデマンド配信ということもあり、心理職だけでなく、一般の方にも幅広く活用していただきたいとのことです。特に中野先生のご専門が産業労働分野のメンタルヘルスということもあり、会社などで働く皆様に広くセルフ・コンパッションを活用していただきたいとのご要望があるとお聴きました。その点も含めて一般の方にもご利用いただきたいと思われる理由を教えてください。

【中野】産業労働分野では、現在ハラスメントの問題がすごく大きなテーマとなっています。私も、企業や行政などからハラスメント研修の依頼を受けることが多くなっています。パワーハラスメントだったり、セクシャルハラスメントだったりするのですが、そのような場合には、まずはセルフ・コンパッションで自分を癒すことが大切となります。被害者であれば、ただ単に我慢するのではなく、冷静に考える余裕も出てきます。自分を癒しつつどのように対処するのかを考えます。

働いていると、ハラスメントとまでは行かなくても、辛い経験をすることは多くあります。そういうときに心身の健康を崩さずに自分を大事にしながら働き続けるためにセルフ・コンパッションを身につけておくのはとても大切です。また、セルフ・コンパッションを学ぶことで他者へのコンパッションも習得できます。ですので、もし上司の方がしっかりとセルフ・コンパッションを学んだら、おそらくハラスメントという問題もそもそも生じなくなっていくと思っています。

【下山】なるほど、セルフ・コンパッションを学ぶことで、ハラスメントの予防にもなるということですね。その点も含めて、ぜひ多くの方にオンデマンド配信をご利用いただきたいですね。心理職の皆さんからも、クライアント様やお知り合いの会社員の方に、今回のセルフ・コンパッション講習会についてご紹介いただければ良いですね。


9. 心理支援技能の向上に役立つセルフ・コンパッション

【下山】セルフ・コンパッションは、もちろん心理職の方にとっても幅広く活用していただきたいということもありますね。心理職としてのセルフケアに加えて、心理技能の基盤にある共感能力を高めるためにもセルフ・コンパッションは重要ですね。
 
【中野】もちろん、心理職の方の心身の健康のためにも役立ちますね。それだけでなく、セルフ・コンパッションを高めていくと他者へのコンパッションも高まっていくので、良いタイミングでしっかりと適切な共感の言葉がけができるようになります。その点で共感的コミュニケーションという、心理職の基本技能のスキルアップにもつながります。

また、いわゆる逆転移に対処することも可能となります。心理支援をする際に心理職は、クライアント様の感情に巻き込まれることがあります。セルフ・コンパッションを身につけていると、そのような状況において、マインドフルに距離を置いて見ることができるようになります。面接場面で出てきた自分の感情にその場で気づけるようになります。自分の感情に気が付いたならば、脇に置いてすっと面接場面に戻れるようになります。

さらにケースマネジメントに関しても役立ちます。心理支援をする中で深く事例に関わっていくと、いろいろな感情の渦に巻き込まれていくものです。そのような時にセルフ・コンパッションで距離をとって問題を理解することで、ケースマネジメントを冷静に行うことができるようになります。このようにセルフ・コンパッションを習得することで、よりクライアント様の気持ちに寄り添って問題に向き合うことが可能となります。


10.トラウマ対応に役立つセルフ・コンパッション

【下山】最近、トラウマへの心理支援が心理職の重要なテーマになってきています。PTSDといった、死に直面するような非常に深刻なトラウマ体験をしていなくても、心理支援を必要するケースはいずれも、何らかの脅威を経験しています。実際、心理職の関わる問題というのは、何らかの脅威を受けて不安になったり、抑うつになったりするということがほとんどなわけですね。

そのため脅威に対処できるための心理支援が必要となっています。さらにトラウマ関連の心理支援に保険点数がつくということも発表されました。そのような脅威に対してコンパッションあるいはセルフ・コンパッションが重要となると思いますが、いかがでしょうか。

【中野】第3回セッションで扱う「しんどい感情との付き合い方」で、そのような辛い感情にどう付き合うかをしっかりと扱います。心理職がそういうことを知っていると、脅威を感じる体験をし、辛い感情を抱えた時にどのように感情を扱ったら良いかを、クライアント様にお伝えすることができます。

これと関連してトラウマセンシティブ・マインドフルネス等、トラウマに対してマインドフルネスを適用することがどんどん広がっていると思います。心理教育をしっかりとした上でトラウマに対して有効な支援をしていくことが必要となりますね。


11.  一般の方も含めて幅広く今回のオンデマンド配信をご活用ください

【下山】 セルフ・コンパッションを習得することは、心理職にとって心理支援の基本から応用まで幅広く技能を向上していくために役立ちますね。具体的には共感技能、コミュニケーション技能、ケースマネジメント技能を高めることに加えて、トラウマの理解と対応においても活用できることがわかりました。

さらに、心理職だけでなく、セルフ・コンパッションの学習は一般の多くの皆様に役立つこともわかりました。特に働く人にとっては、ハラスメントを受けるなど辛い経験も多く、そのような状況に適切に対処するためにもセルフ・コンパッションが役立つことは重要ですね。日常生活で感じる不安や恐怖、抑うつなどの感情に対処する上でも役立つことも忘れてはならないですね。そのために今回のオンデマンド配信については、一般の方に幅広く活用していただきたいと思っています。

その点で今回のセルフ・コンパッション講習会のオンデマンド配信が多くの皆様に役立つものになればと願っています。ぜひ、読者の皆様には本マガジンをセルフ・コンパッションに関心のある皆様に転送し、オンデマンド配信についてご周知いただければ幸いです。

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第48号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.48-2
◇編集長・発行人:下山晴彦

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